(2)「豚の家族と藁の家」
文字通り豚野郎として転生してしまった僕、タクローだが、問題がある。
いや、いろいろ問題だらけでは有るのだが、最も重大なこと。
同胞の顔の識別が出来ない。
衣服(?)と喋り方でアテはつけているのだが、着ているものが同じだとパパオークとママオークの外見の違いが全くわからない。
田久巳 琢郎としての意識が目覚めるまでは、識別していた記憶もあるが、人間としての感性が表に出てしまったためか、全員豚だ。僕も含めて。
ブタノール(パパ)、ピグミ(ママ)、トンル(長男)、ジブタル(次男)、ブチル(三男)、タクロー(四男・僕)の6トン家族。この家…ブタノールの占有する洞窟はこの家族で、もう窮屈だ。
幸いにトンルは早々に自分の家を建て、ハイオークに進化した。だから僕はトンル兄だけは見分けがつくのだ。作ったのは藁の家。
あれ?どこかで聞いたような…
トンル兄(長兄)によるとジブタル(次兄)も今森の近くで順当に建材を準備しているらしい。
曰く「ほとんど同じ時期に作り始めたのにあいつはスピード足らん。」だ、そうだ。
結局ブチル兄さんに世話になるんでしょ?と僕は思っていた。
そうすると僕の立場っていうか、何したら良いんだ?
やっぱり家建てないといけないのかな?ギルド行って冒険者登録とかじゃないの?え、え?
「タクローご飯にするわよ。今日はトンルの独立を祝って白いご飯炊いたから。」
白ご飯。この世界じゃ「ごちそう」らしい。藁の家作ってるんだから米はあるのか。しかし、ご飯だけって寂しいよね。
僕は、豚家族の顔をおかずに白ご飯をゆっくりと食べた。
「タクローは変わってるな。なんだその2本の棒は?」
ブチル兄はスプーンでご飯を食べている。
ジブタル兄の家の端材で作った僕専用の箸。僕はこのまま豚で一生を終わるつもりはない。その決意がこの2本だ。
食後、みんな寝てる。食ってすぐ寝ると牛になると言われるが実際、豚になる。そして僕らは既に豚だ。だから、寝ても良いよね。
そんなわけで、僕はまどろんでる。「3匹の子豚」ベースの世界なら…これは「乙女ゲー悪女転生系」の先回りして物語をぶち壊す型なのかな?
いや、それにしてもイケメンとか美少女とか出てくる要素が無いのが寂しいな。
翌朝、僕は情報収集の為、外出していた。
「タクロー、お前ももうすぐ家建てるんだよな、どんな家にするつもりなんだ?」
誰だかわからない豚の…多分おじさんが、声をかけてきた。
やっぱり家を建てないといけないのか。と思いつつ僕は「秘密だよ」と応えた。
敵を知り己を知れば百選危うからずだ。まずは狼を見てみないと。何処にいるのかな?
水田で田植えをしている他のオークに聞いてみたが、怯えて教えてくれない。困ったな。
歩いているうちに、一見の藁の家が見えてきた。トンル兄さんの家だ。
コンコン。「兄さんいる?」
「タクローか、危ないからすぐ入れ。」
藁の家に招き入れられた僕は、トンル兄さんの説教を受けてしまった。
この場所はウルフ種がたまに来るから、姿が見えたらすぐ家に入らなければならないと。
木組みの梁と柱ふかふかの藁の壁と屋根。敷き詰められた御座。快適だった。
童話的には危ないんだけど…
「おい豚、その扉を開けて中に入れろ」
その声に扉の方を見る。エクスクラメーションマークが扉越しに浮いて見える。
あ、そういう仕様なんだ。
ENEMY:ウルフ種レベル20 特殊能力:ウィンドブレス。
ヤバイ。これやられるパターンだ。
トンル兄は平然としていた。
「断る。扉は開けない。かえれ!」
しばらくはウルフの気配とエクスクラメーションマークは家の周りをうろうろしていたが、そのうち居なくなった。
ドウイウコトデスカ???




