(1)「同胞たち」
田久巳 琢郎(15)
ヲタクのブタヤロウと呼ばれてから、僕は学校には行かなくなった。誰も僕の偉大さを分かっていないからだ。
「タクちゃん、夕食は何にする?」
スキノヤの豚丼大盛り。
豚丼だ。間違えるなよババア。
どれほどの時が流れたのだろう。
時は来た!
「タクちゃん、遅くなってごめんね。温かい内に食べなさい。」
「あと、明日は発泡の日だから、食べ終わったら部屋の前に出しといて。お部屋にゴミを溜めちゃダメよ。」
待っていたぞ。だが煩いぞ。
僕はババアの気配が消えるのを確認し、要塞の門を開け、温かな容器を城に招き入れた。
この鉄壁門が開かれるのは、僕の欲望の品を招き入れる時のみだ。あと、お風呂とトイレ。
僕は、勢いよく、発泡スチロール製の容器の中身をかきこんた。
この豚どもを喰らい尽くしてやる。頂点に立つべき僕の圧倒的スピードだ。
(色々お見苦しいと思うので…中略)
助けろババア…ダメだ。内側から鍵をかけてる。声も出ない。
ケータイを持つ。Wireは…ダメだババアとは繋がってない。
喉に詰まる同胞達の無思慮な抵抗を前に、僕はただ滅びを待つしかなかったのである。
~架空世紀前…年代推定不明。これは、世界にヒトが産声をあげる前の伝承である~
「タクちゃん、うなされてたけど大丈夫?」
ば、いつの間に僕の部屋に…
違う。ババアじゃあない。それどころか人ですらないぞ。
横たわる僕の目の前の存在は豚の顔をしていた。
薄暗い洞窟。青白い光。ヒカリゴケというやつだろうか。それが視覚をかろうじて機能させていた。
「おふくろ、タクを甘やかすのもそろそろ止めて子離れしねぇとだぞ。」
若い男の声だ。
僕は彼らが何者か知っていた。ここでの僕の家族。母親と4人兄弟の一番上の兄トンルだ。
僕は 田久巳 琢郎で在ると同時に、この豚人間…オーク家族の末弟タクローなのだ。
いわゆる異世界転移か転生というやつだ。チュートリアルとか有るパターンが良かったよ。
「ステータスオープン!」
名前 タクロー
種族 オーク種タイプノーマル
特殊能力 ステータスウィンドウ
田久巳 琢郎
???
ブヒヒッ
思った通りだ。異世界転生といえば、これでしょ。原理不明のステータスウィンドウ。
しかし、モンスター職スタートか。無い設定じゃないが、よりによって豚人かよ。
僕はこの絶望的な「コレジャナイ」感と、幾ばくかの「ア、ソレナ」感と共に、異世界生活を受け入れ始めていた。




