(3)「世界のルールと進化とレンガ」
3匹の子豚っぽい世界に4男オークとして転生した僕は長兄トンル兄さんの家に来ていた。
トンル兄の藁の家は快適だった。ウルフ種の脅威に対して、意外にも有効っぽい。
「入れと許可しなければ家の中は安全だって。」
トンル兄はそういって笑った。ブヒッ。
なるほど。RPGで街の中にモンスターが出現しないのと同じかな。
僕は妙に納得した。
ありゃ、そうすると物語が進まないんだけど?
「ステータスオープン!」
名前 タクロー
種族 オーク種タイプ 「ブタノ」 レベル1
特殊能力 ステータスウィンドウ
田久巳 琢郎
気配察知
???
「レベル1」の文字とスキル「気配察知」が追加されている。
色々調べたから成長したのかな?
タイプ「ブタノ」?豚脳?なんだろう。
能力値の詳細が分からないけど、レベルだけ見たらあのウルフ種には勝てそうにない。
安全だし、快適すぎたので僕は数日、トンル兄の家で世話になっていた。
藁がふかふかで気持ち良いんだよ。
そんな中ある夜、気配察知が反応する。
家の外にエクスクラメーションマークが浮いているのが見える。
ENEMY:ウルフ種レベル20 特殊能力:ウィンドブレス、???。
「おい豚、その扉を開けて中に入れろ、でないと家を吹き飛ばすぞ!」
「断る!」
トンル兄は誇らしげに宣言する。
正にイケメン、じゃなくてブタメン。
が、状況は悪化した。
ウォーン。緊急車両のサイレンの様な音。
ウルフ種の遠吠えだ。
ガタガタと骨組みが揺れる。台風のような風。
これは、童話と同じ流れだ。ウィンドブレスで家が吹き飛ぶんだ。
屋根が飛んでいった。
僕は震えが止まらなかった。
もう、ここは「家」ではない。
「クソ、間に合わなかったか」
「トンル、タクローを連れてジブタルの家に行け!」
オーク種の戦士がウルフ種の前に立ってる。
強引にトンル兄に引っ張られていった僕の目にはなぜか涙が浮かんでいた。
オーク種の戦士の顔が涙で滲んで…父さん。
人の顔、琢郎の父親、亥太郎が見えたような気がした。
きっとあのオーク戦士は父オーク、ブタノールだったのだろう。
涙でよく見えないが、腕を食いちぎられてるようにも見える。
胸が張り裂けそうだ。
「ここまでくればもう大丈夫だ。タクロー、一人で立てるな」
トンル兄は僕の両肩に手をおいて、僕の顔を見つめていた。
トンル兄の後ろには見事なログハウスが見える。きっとジブタル兄(次兄)の家だ。
「ジブタル、トンルとタクローだ。入れてくれ」
扉が開き、進化したジブタル兄が招き入れてくれた。
トンル(長兄):ハイオーク タイプ スピードスター
ジブタル(次兄):ハイオーク タイプ フォレストレンジャー
顔の見分けはつかないが、体格が明らかに違う。トンル兄は短パンを履いたランナーのような体つき。ジブタル兄はマッチョな感じだ。
「兄ちゃん達、父さんが…」
僕はそれ以上何も言えない。言葉が喉に詰まって。苦しい。
だが、兄たちは冷静だった。
「そうだな。悲しいが、異常なことじゃないだろ。現に俺達は生き延びた。血は受け継がれている。大丈夫だ。」
僕は、この豚の兄たちがモンスターであることを初めて強く意識した。
一度洞窟に戻るよ。ブチル兄さん(三兄)と母さんに父さんのこと報告しないと。
僕はそう言って、亡き父の家へと歩みを進めた。歳の近いブチル兄さんとママオークならこのぽっかり空いた心の穴を埋めてくれるかもしれない。そんな期待をしていたのかもしれない。
「そう。彼、死んだのね。ちょっと一人にして。」
ピグミママは洞窟の奥の方へと消えた。嗚咽のような絞り出す鳴き声。ブヒブヒという嫌悪感を覚えても良さそうな声なのに、今の僕にはただ夫の死を悲しむ一人の女の声にしか聞こえなかった。
洞窟の中。消去法的に識別できてしまった三兄ブチル。
「俺も家、早く作らないと。ここも近く安全じゃなくなる。もっとじっくり考えたかったんだけど。」
それなら、レンガの家にしたら良いよ。と僕は提案した。早く安全な家が必要だ。もし3匹の子豚の世界ならレンガの家が一番安全だし。遅れると多分次の犠牲は母さんだ。なんとしてもそれは防ぎたい。
「レンガ?なんだそりゃ?」
え…?
「石の家を作ろうかなって、少しづつ同じような大きさの石を集めて振り分けしてたんだけど。」
兄ちゃん。童話と同じ熟考型だ。でもなんでレンガを知らないんだろう。
僕はレンガについてブチル兄に説明した。
「そりゃ凄いな。同じ石みたいなのをたくさん作れるなら思ったより早く家が立つぞ。お前、天才か?」
実際に作ったことが有るわけじゃないけどネットで調べたことが有るのを僕は覚えている。
童話的に最も安全な家。ひとまずそれを作る。父さんがいなくなった悲しみをブチル兄との計画が少し埋めてくれたような気がしていた。




