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城の世璃  作者: 秦江湖


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エピローグ 都市伝説『カニバリズム・タワー』

【閲覧注意】港区のタワマンにまつわる怖い話【凸禁止】



135 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:13:45 お前ら、「赤坂のKタワー」の最上階の話知ってるか? あそこのペントハウス、入居者が決まってから変な噂が絶えないらしい。



136 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:15:20 知ってる。 「空を食べる悪魔」が住んでるってやつだろ? 深夜になると、ベランダから骨が降ってくるっていうw



137 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:18:33 ネタじゃなくてマジな話。 俺の知り合いがウー●ーの配達員やってるんだけど、あそこに配達行ったきり戻ってこなかった。 垢BANされただけかと思ったら、警察から実家に連絡あったらしい。 「本人の持ち物と思われる靴が、マンションのゴミ捨て場で見つかりました」って。



138 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:22:10 kwsk(詳しく)



140 : 元デリバリー配達員 :202X/08/15(金) 02:40:05 流れぶった切ってごめん。 俺、あそこに配達行ったことあるわ。 注文内容は「ロックアイス10kg」と「高級ワイン5本」。 深夜3時だった。

オートロック開けてエレベーター乗るんだけど、最上階のボタン押した瞬間、耳鳴りがすごいの。 気圧のせいじゃない。もっとこう、動物園の猛獣コーナーに入った時みたいな、本能的な恐怖感。

ドアの前に置き配指定だったから、荷物置いて帰ろうとしたんだけど。 中から声が聞こえたんだよ。

『ねえ、お兄様。今日のこのお肉、少し硬いね』 『運動不足の個体だったかな。……次は、もっと元気のいい配達員を選ぼうか』

その瞬間、ガリッ、バキッって音がした。 絶対に、人間が食事で出す音じゃなかった。硬いものを無理やり砕く音。

俺、怖くなってダッシュで逃げたんだけど、エレベーター待ってる間、ずっと背中見られてる気がした。 あの部屋のドア、防犯カメラついてるんだけどさ。 レンズの奥が、金色に光ってた気がするんだよ。



141 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:42:12 ヒエッ……。 それ、「次は元気のいい配達員を」って、お前のことじゃね?



142 : 元デリバリー配達員 :202X/08/15(金) 02:43:00 やめてくれよ。 てか、今さっきからスマホに通知が止まらないんだ。 『注文が入りました』って。 俺、もうアプリ消したはずなのに。 お届け先、あのタワーなんだよ。



143 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:43:55 逃げろ



144 : 名無しさん@オカルト板 :202X/08/15(金) 02:44:10 後ろ見ろ


(以降、書き込みは途絶えている)






※※※※





 東京の夜景を一望する、ペントハウスのリビング。 窓の外には、煌びやかな東京タワーと、光の川のような首都高が見える。



「……ふふ。また、面白い書き込みが増えているよ、世璃」



お兄様は、タブレット端末を指で弾きながら、楽しそうに笑った。 その手には、最高級のワイングラス。 中身はワインではなく、とろりとした濃厚な赤色――さっき届いたばかりの「新鮮な配達員」から絞ったヴィンテージだ。


「えー? 見せて見せて」


 キッチンから、世璃が顔を出す。 白いエプロン姿だが、そのエプロンは赤黒く汚れていた。 彼女は今、メインディッシュの解体作業中だ。



「『空を食べる悪魔』だって。  失礼ね。あたしたち、ちゃんと選んで食べてるのに」



 世璃は頬を膨らませ、お兄様の膝に乗った。 お兄様は、その髪を優しく撫でる。 その左足――かつて義足だった場所には、今はしなやかで強靭な、美しい肉体がある。 ただ、その皮膚の下で、時折何かが脈打ち、鱗のような紋様が浮き出ては消えるのが見えた。



「でも、悪くない響きだ。  この街の人間は、みんな孤独で、誰かに食べられるのを待っている」


 お兄様は立ち上がり、巨大な窓ガラスに手を当てた。 眼下に広がる1000万人の群衆。 その一人一人が、彼らにとってはただの「食材」であり、「おもちゃ」だ。



「さあ、世璃。  次は誰を招待しようか。  パパ活女子? 迷い込んだユーチューバー? それとも、この掲示板を見ている『彼』かな?」




 お兄様の金色の瞳が、夜景の向こう側――画面を見ている読者の方を、じっと見据えた。



「いただききます」



二人の声が重なり、東京の夜に溶けていく。


 タワーマンションの最上階の灯りが、ふっと消えた。 そこは、現代の闇に浮かぶ、美しき食人鬼たちの城。 物語は終わらない。 彼らが満腹になる日は、永遠に来ないのだから。


 


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