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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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151/155

正論(151)鬼島は夢の中


 セイロンガー、ブラックオウガ、水沢雪菜を乗せて黒い大型SUVが高速を走っている。統合AIエミリーによる自動運転でナビゲートされており、運転席に座る雪菜はハンドルを持っているだけだ。


 ライトベージュの本革シートは身体を包み込むようで心地がよい。3列シートの2列目にセイロンガーとブラックオウガが座っている。


 車内は小林旭ヒットメドレーの3曲目が流れ始めた。

 パーパーパーララッパ、パラッパパ〜……♬

 パパパラッパパパラッパララッチャララッ♬

 あの娘をペットに したくって♬


 ブラックオウガこと鬼島は、ヒーロースーツをリラクゼーションモードにして全身を揉みほぐされている。リクライニングを倒し、上機嫌だ。本革の良い香りも相まってだんだんと眠気が襲ってきた。

「ここらで止めても いいコロナァ〜……zzz」

 黒いヒーローマスクから、くかぁくかぁと寝息が聞こえ始めた。


「雪菜さん、すまない。鬼島が……寝た」

 セイロンガーは運転席の雪菜を気遣い、謝った。同乗者は寝ない、というのがセイロンガーの信条だ。


「プッ、呑気なものねぇ……ま、朝早かったから仕方ないか」



 鬼島は夢の中にいた。

 

 薄暗いキャパシティ2000人ほどの格闘技会場。リングアナウンサーが声を張り上げる。

『当代ステゴロ最強伝説……裏格闘界デビューから24戦無敗の男。無差別級チャンピオン"野生の人間"……オウガ選手の入場ですっ!』


 ウォォォーーッ!

 会場の観客から物凄い歓声が上がる。


 パーパーパーララッパ、パラッパパ〜……♬

 パパパラッパパパラッパララッチャララッ♬

 小林旭の曲が流れると同時に、入場ゲートにスポットライトが当たる。


 襟を立てた黒いレザーのロングコート。羽織っているのは、オウガだ。はだけた内側に見えるのは黒いレスリングシューズに黒のショートパンツのストロングスタイル。


 そして、オウガを囲むように数人の毛皮のコートを着たホステス風の美女たち。いや、風ではなく、オウガが連れてきた銀座のクラブのホステスだ。


 1人の女性がチャンピオンベルトを掲げながらリングへと先導する。ゆっくりと歩き出したオウガは半分ほど進んだところで立ち止まる。煙草を取り出し、口に咥えた。火をつけようとする横の女性を制して、自分で火をつけた。咥え煙草で手を大きく広げながらまた歩き出した。


 いつもの入場ルーティンだ。


 会場から湧き上がるオウガコール。

 オ・ウ・ガッ!

 オ・ウ・ガッ!

 オ・ウ・ガッ!


(自動車ショー歌のふざけた入場曲……そうか、これは最後の試合。元締めのヤー公から、賭けが成り立たねぇからいい加減負けろと言われていた試合。銀座のお姉ちゃんたち、結局あの日、店に同伴する約束を反故にしちまって悪いことしたなぁ。20年か……もう待ってねぇだろうな)


 鬼・島!

 鬼・島!

 鬼・島!


(ん、鬼島コール……そんなもん、あったか?)



「鬼島、鬼島! おい」

 セイロンガーが鬼島の身体を揺さぶり起こしていた。


「ん、んん? なんだセイロンちゃんか」


「なんだ、じゃない。寝ながら煙草を取り出して吸おうとするな。危ないやつだな……」

 セイロンガーは鬼島が持っている煙草を取り上げて言った。


「あぁ、わりぃ、夢見てたわ。そろそろ着くか?」


「まだ首都高だわっ」

 雪菜が短く突っ込んだ。


 車はまだ首都高に入って10分だった。

 

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