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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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149/150

正論(149)出発


 ボボボボ……ボボボボ……ヴォン……ボボボボ……ボボボボ……ヴォンヴォン……


 ホークパレス。

 腹に響く重低音と共に1台の車が地下駐車場から現れた。セイロンガーの赤いスーパーカーである。しかし、運転席にセイロンガーの姿はない。代わりにキャップを被りサングラスに白いマスクで顔を隠した女性。

 

 その様子を監視する目があった。ホークパレスを一望可能なビルの屋上に人影。高倍率の軍用双眼鏡で監視するVVEIの赤いタイツの戦闘員。ちなみに赤タイツは正社員で、黒タイツは非正規雇用だ。


 無線で周辺待機の追跡班に知らせる。

「セイロンガーの赤いスーパーカーが駐車場を出た。運転しているのは水沢雪菜と思われる。イーッ」


『イーッ、A班追跡する。イーッ。』

 追跡班は黒タイツの戦闘員4名に怪人1名のセットである。お馴染みの黒いバンに乗っている。


 VVEIは裏切り者である大曲博士の行方を追っていた。改造技術のすべてを知る最重要ターゲットだが、昨日から部下の江口麻里と共に姿を消している。どこかの施設に匿われており、いずれセイロンガーか五百旗頭壽翁と合流するだろうという予測のもと、こうして戦闘員が監視しているのだ。


「あの車は速い、撒かれるな。イ……ちょっと待て、もう1台出てきた。白いEV車、あれもセイロンガーの車だ。イーッ」

 普段、真由美を送迎する時に主に使用しているEV車である。この車の運転席にもセイロンガーの姿はない。やはりキャップにサングラス、白いマスクの女性が乗っている。

「運転しているのは……水沢雪菜と思われる。イーッ」

 一体、水沢雪菜は何人いると思っているのだろうか。


『また水沢雪菜……イーッ、B班追跡する。イーッ。』

 念の為に用意した追跡班が答える。A班同様の4+1名体制だ。


 こうして、赤いスーパーカーはA班、白いEV車はB班が追跡していった。だが、実はセイロンガー、ブラックオウガ、水沢雪菜はまだ出発していなかった。


 1時間ほど前、ホークパレス屋上に設置されたカメラは、ビルの屋上で不自然に動く人影を捉えていた。エミリーからの報告によりそれを知ったセイロンガーは壽翁に連絡し、シャドウズの女性メンバーを2人増員を要請、存在を知られている2台の車に搭乗してもらい、まったく関係ない場所へと出発してもらった。目眩しのためである。


 ちなみに行き先は、スーパーカーが栃木県宇都宮市に餃子を、EV車は静岡県富士宮市に富士宮やきそばを食べに行く予定だ。どちらも高速は使わず、下道で向かうので追跡する方はたまったものではないだろう。


 そうとは知らない戦闘員は、屋上を後にしようと振り返った。屋上への出入り口を見て立ち竦む。そこにはシャドウズが2人、待ち構えていた。


『監視役の戦闘員の排除が完了しました。マスター、出発OKです。』


「了解だ、エミリー。では鬼島、雪菜さん出発しよう」

 黒い大型のSUV、セイロンガーが敢えて使用していなかった車両だ。セイロンガーとブラックオウガは後部座席に乗り込む。


 キャップにサングラス、白いマスクの本物の雪菜は一度深呼吸をして運転席へ。

(私、こんな大きな車、運転したことないんですけどぉ……)


『雪菜さん、大丈夫です。自動運転でナビゲートしますから、ハンドルだけ持っていてください。』


「良かったぁ! ありがとうエミリー!」


「エミリーちゃん、小林旭ヒットメドレーを頼むぜ!」


「まだ駐車場だ、焦るな鬼島」


 ブァンッ ブロロロ……


 黒いSUVはゆっくりと地下駐車場を出ていった。


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