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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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134/154

正論(134)ヒーローだからな


「ちょっと待て、グリズマン! そんな奴の話を信じるな! ……くそっ、テメェは怪人だろうが! その化け物面は、VVEIでしか生きる場所はねえんだぞ!」

VVEIグループの物流企業『ルクレス・グローバル・ロジスティクス』の男は叫んだ。

 

「ブモォォオオオオオ!」

 VVEIから派遣された時には、下にも置かない扱いで迎えた男が放った屈辱的な言葉。グリズマンは完全にブチギレ、後先も考えず男に向かって突進を開始した。


「ちっ、クソが!」

 男は懐から怪人用テーザー銃を取り出す。警察や軍で使用されている拘束用高電圧銃より強力な代物だ。後ろに一回転して距離を取ると、グリズマンの胸元に狙いを定め、躊躇なく発射する。


 その距離、わずか1メートル。


 2本のワイヤーに繋がれた電極針がガスにより射出され、グリズマンの両胸を存分に抉った。音もなく流れる高電圧パルスにグリズマンの突進が止まる。

「オゴッアガアガアガァ!」

 変異により巨大化した筋肉が急速に収縮、強烈な痛みを伴い強制的に身体が硬直した。


「手間かけさせんじゃねぇ、これ以上痛い思いをしたくなけりゃ、さっさとナイトホークを倒して来い!」


 ナイトホークは、倒した敵に片足を置いてテリーと何やら話をしながら、こちらの様子を見ている。そして、まるで他人事のように言った。

「おい、その仲間割れ、長くかかるようならブツをもらって帰るぞ? 処分しなきゃならんからな」


 膝に手をつき、荒い呼吸のグリズマンは肉体の回復を待っていた。

「早く行って来い! ウスノロ……」

 男が言うのと、グリズマンが電極針を両手で抜くのが同時だった。

 

「テメェ!」

 両手を高々と上げるグリズマンに向かって、男は再び高電圧パルスを送る。グリズマンを強烈な痛みと筋肉の収縮が襲うが、

「ぬらぁあ!」

 大きく目を見開いて身体の容赦ない反応に抗ったグリズマンは、電極針を男の両こめかみに突き刺した。

「ガァッ」

 男は短い悲鳴を上げて後ろに倒れる。皮肉なことに男の筋肉が硬直し、テーザー銃を離すことなく、高電圧パルスを自らに向けて送り続けた。


 泡を噴いて斃れる死体を一瞥したグリズマンはやがてナイトホークに向き直った。

 

「ほう、なかなか根性あるな。よし、かかって来い。相手をしてやろう、グリ……グリズリー……」

 ナイトホークは相手の根性を認めて名前を呼んでやろうとしたが、忘れた。


「グリズマンだ!」

 ナイトホークに向かって突進を始めたグリズマン。だが、二度の高電圧パルスのダメージが蓄積し、足が思うように動かない。酔っ払いのように斜めに進んだ後、足がもつれて倒れてしまった。


「あらら……」

 グリズマンにゆっくりと近づいたナイトホークは、しゃがみ込み、その顔をペチペチと叩いて言った。

「もし行くところが無いようなら、NHOに俺を尋ねて来い。怪人だろうが何だろうが、やり直せることを教えてやる」


 ナイトホークとレイブンズは薬物120kgを回収し、その場を撤収した。


 高層ビルから滑空しながらテリーがナイトホークに聞いた。

「マスター、あの熊が尋ねてきたらウチで面倒見るんです?」


「まぁな。あのままいきゃ遅かれ早かれ戦地に送られて使い捨てにされるのがオチだ」


「相変わらず人がいいですね」


「ま、ヒーローだからな」


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