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番外編 ヤンデレロリコン先生のお料理対決

久々に書きたくなったので足しました。

本編終盤の展開をなんとかしたい……。

私の家のキッチンが、カボチャ畑と化した。


事の顛末は、言わずもがなハロウィン野郎のキマグレ。私のスマホをハロウィンカラーにしたときのノリで、なんかもう……その、アメリカの菓子みたいな色したカボチャがキッチンに蔓延ってる。

「で、八重さん。これどうするんですか」

「先生の頭にぶつけて殺す」

先生、神有月霜月に撤去処分もとい収穫を手伝わせ、少しずつキッチンは元の姿に戻りつつあった。

どうやって手伝わせたかって? そりゃ糾子の半日貸し出し権と引き換えだ。簡単に食い付きやがってマジうーけーるー。

その条件を提示したの糾子だけどね。私も私でちくわきゅうりにつられたけどね!


+++


蔓の処理は杜山くんに丸投げして、私は積まれたカラフルなカボチャたちを見上げる。これでしばらく食費が浮きそうだ。ある意味ラッキー!

「でも八重さん、胃袋にも冷蔵庫の容量にも限界がありますよ」

「そう、問題そこ。先生にしてはやるじゃん」

「何なら、今ここで中身だけくりぬいておきましょうか。ついでに八重さんも中身をくりぬき処分」

「いい加減にしろよ変態教師。私の手にかかれば先生のくりぬき処分なんて片手でカボチャをドリブルしたままでも出来ますからね」

「カボチャそんな跳ねない」

「それはどうかな!」

互いに、戦闘体制。

先生の今日の武器は大鉈。カボチャ切るのによさそうだね!

一瞬の間合いの後、斬りかかる。


「って、2人とも!! なにやってんの!」


先生の降り下ろした刃と私の包帯を巻いた両手がぶつかるかぶつからないかのところで、愛しの妹の声に一時停止。

「糾子ぉ聞いてよ、この変態教師が民家で大鉈振り回して暴れてんの。おかしくね? 通報していいよね?」

「糾子ちゃん、この鬼の末裔(笑)が民家で馬鹿力振るおうとしてきたんですけど、これって正当防衛に入りますよね?」

「おねーちゃん、そろそろ身長の記録以外に柱の傷増やすのやめて! おにーさんもおにーさんだよ! まだちゃんとおねーちゃんの傷キレイになってないのに、変なことしちゃだめ!」

「「……」」

私も奴も、糾子の可愛さには敵わない。

「おねーちゃん、このカボチャどうするの?」

「そうだね、全部は保存できないし」

すると、先生が一言。

「お料理対決なんてどうです」

いつものことだけど、こやつ訳の分からぬことを言いおるわ。

「僕と八重さんのどちらが料理上手か、カボチャ料理で競うのです。そして勝ったほうが糾子ちゃんの保護者となる」

「は、ぶっ殺」

「わぁー、きゅーこそれいいと思う!」

うわっ、眩しい! 何事だ、って糾子だ! 糾子の天使さが眩しすぎる!!

「……決まりですね」

「糾子が言ったならしゃーないですね」


+++


ってさ、言った後で先生がパティシエ目指してたこと思い出したのさ。ぶっちゃけ勝てる気がしないんだよね。

だから当然のごとく、妨害工作をしなきゃならないの。何がいいかねぇ。

「八重さん何考えてるんですか」

「カボチャ爆弾の作り方」

物騒な、とだけ言って先生はまな板の上のカボチャを慣れた手つきでとんとん切り刻む。先生が正しい刃物の使用法してるの見たの、初めてかもしれない。

ていうか、カボチャが中までピンクやらライトブルーやらパープルの色とかマジないわ。まずそう。

……待てよ、スイーツ系で攻めるのもアリか? いや先生の得意分野じゃん。無理じゃん。

「そうですね、スイーツ系が無難でしょう」

「なんですか先生、私が迷ってるの見てわざと自分の得意分野を吹き込もうとしたんですね死ね」

「少しは僕を信用しようとかそういう気持ちを持ったらどうですか」

先生は切り刻んだカボチャを鍋に入れ、加熱し始めた。茹でてるよ。どうしよう私まだ何もやってないのに!

いよいよ危機感を感じ始めたその時、私の脳裏に数分前の奴の一言が思い浮かんだ。

……何なら、今ここで中身だけくりぬいておきましょうか。

「よしきた!」

「なんですか八重さん急に大きな声を出して」

私は積まれていたカボチャいくつかに包丁を立て、一つだけ椀状にくりぬいてから残りを豪快に切り刻み、先生がカボチャを茹で終わるのと同時にカボチャを色々な色のを混ぜてから茹で始めた。

カボチャサラダ。前にも作ったことあるし、これならいける!

先生はというと砂糖水を煮ながら、卵やら牛乳やら調味料とカボチャを混ぜている。カボチャプリンか、でも先生は知らない。糾子の好みは甘さ控えめだということに! ざまあ見やがれ、私の勝ちは確実だ。

茹で終わったカボチャに顆粒のコンソメとマヨネーズを足し、色が混ざりきらない程度に混ぜ混ぜ。うん、悪くない。

「よっしゃ完成!」

私はくりぬいたカボチャの椀にサラダを盛り付け、パセリを振ってから糾子の元へ駆けつけようと走り出した。

「させませんよ」

「!」

ぐるん、と視界が大回転する。顔を床にしこたまぶつけた。カボチャサラダは握力測定用のときに計器をぶっ壊した超握力で落とさずに済んだけど、鼻の奥でつんと鉄臭い臭いがする。鼻血だ。

「つつ……てめぇ何しやがる!」

「予想より早く終わったようでしたので、妨害を」

「……やっぱり、先生と殺し合い以外で戦うとか無理だわ。臓物出せ」

「望むところです、が先にカボチャプリン冷蔵庫で冷やしてからでもいいですか」

「えー?」

私の答えを聞かないまま、先生は6つの型が乗ったプレートを冷蔵庫にそっと入れた。私もしょうがないからカボチャサラダにラップを掛けておく。


「じゃあ、始めましょうか」

「オッケー」


次の瞬間、チェーンソーの回る音がデスマッチのゴングを鳴らした。


目の前で銀の歯と拳がぶつかって爆ぜる。散った火花は生暖かい生き血。間合いを取って先生の腹部へ潜り込み、殴る。殴る。合計2発。先生の体が戸棚に叩きつけられ、落下したマグカップが白く砕けた。

「……八重さん、また強くなったんじゃないですか」

「言ったでしょーが。先生のくりぬき処分なんてカボチャドリブルしながらでも簡単だって」

「何度でも、いいましょうか。カボチャそんな跳ねな――嘘だろ」

だん、だん、だん、と重量感たっぷりのいい音。なんだ、カボチャドリブルなんて簡単じゃん。

「どんな力の使い方したらそうなるんですか」

「鬼の末裔なめんな」

「鬼の末裔、で済むんですかねこれ。もう言っときゃいいって思ってませんか」

「ぶっちゃけ私も作者も思ってるよ! それじゃあ、死ねぇ!」

左手でカボチャをドリブルしたまま、私は先生の頸動脈あたりへと、右手を伸ばした。


+++


ちなみに。

「わー! カボチャサラダおいしい!」

「だよね、私のが美味しいよね」

「んーでも、カボチャプリンもおいしーい」

「ですって、八重さん」

先生の勝ち誇ったその面を茹でカボチャみたいにぐちゃぐちゃにできたらどんなに幸せか。

「私のが絶対勝ちだ! ねー糾子?」

「僕の方がいいですよね? 料理も人間性も」

糾子は「んー、」と私らの顔を交互に見た後、言った。


「どっちも毎日食べたいくらいおいしーい」

「「は?」」


ききき糾子。何言ってんのかな?

まさか先生が妙な薬混ぜたに違いないそうだ絶対そうだ! って思って先生の顔を見たらおんなじこと考えてる顔だった。

「糾子! なんで!?」

「だって、2人ともどっちがどっち作ったかバレバレだもん」

「「……え?」」

「ふふーん♪」

「どこでバレたんですか」「ねえ糾子ウソでしょ!? ねえ、ねえ!?」

先生と私の必死の説得空しく、糾子は鼻唄を歌いながらダイニングを去っていった。

「結局、今日も決着が付きませんでしたね」

「……次は私が勝つ」


「あ、初霜」

「げっ、糾子ちゃんではないか。機嫌がいいみたいだがどうかしたのか」

「げっ、てなあに?」

「あっいやその」

「……おねーちゃんの料理味うすいし、お兄さんのは甘すぎなの。それだけ」

「そ、そうなのか……」


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