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魔導の終焉、鉄の現実

「【極大爆裂(エクスプロージョン)】! 塵に還れぇえええ!」


ゼノンの狂気に満ちた叫びと共に、彼の持つ最上級の魔導杖から、ダンジョン全体を揺るがすほどの圧倒的な熱量が解き放たれ――るはずだった。


フッ。


ロウソクの火が吹き消されるかのように、ゼノンの杖から溢れ出ていた膨大な魔力が、唐突に消失した。


「……は?」


ゼノンが呆然と声を漏らす。

目の前でゴーレムと刃を交えていたトールも、驚愕のあまり動きを止めた。


激しい爆風も、眩い閃光もない。ダンジョンに満ちていた濃密なマナの気配そのものが、まるで最初から存在しなかったかのように、完全に無へ帰していた。


「な、なんだ!? 魔法が……発動しない? 魔力が、消えた……!?」

「ゼノン! 何をもたついている、早くしろ!」

「やってるわ! なのに、スキルが……術式が全部バラバラに砕け散るんだよ!」


ゼノンが狂ったように杖を振り回す。だが、火花一つすら飛ばない。

当然だ。彼の背後わずか50センチメートルの距離に、すでに黒い影が立っているのだから。


「言っただろ、ゼノン。その次の一撃が人生最後だと」


耳元で囁かれた冷徹な声に、ゼノンの総毛が逆立った。


「レ、レン……!? お前、なぜここに――」

「お前の自慢の広範囲爆裂魔法、ここ(3メートル以内)じゃ不発弾にもなれないな」


「ひっ、離れろ! 【瞬間移動(テレポート)】! 【火炎嵐(ファイア・ストーム)】!」


ゼノンは恐怖に顔を歪め、必死に距離を取ろうと魔法を連呼する。しかし、レンの【絶対不可侵領域(アンチ・エリア)】の中では、いかなる世界の法則も、神の理も強制シャットダウンされる。


世界最高峰の魔導王と謳われた男が、ただの「魔力を持たない無力な人間」へと引きずり降ろされた瞬間だった。


「ト、トール! 助けろ! この虫ケラを殺せぇ!」


ゼノンが悲鳴を上げながらトールへ手を伸ばす。

だが、前衛のトールもまた、目の前のアイアンゴーレムの一撃を剣で受け止めるだけで必死だった。


「助けは来ないよ」


レンは冷酷に言い放つと、迷いなく鋼鉄のナイフを突き出した。


「いや、嫌だ! 俺は魔導の頂点に立つ男だぞ! こんな、魔法も付与されてないただの鉄くずにぃいいい!」


ザクッ。


肉を切り裂き、骨に達する鈍い音。

魔力防御のコーティングを失ったゼノンの高級なローブは、ただの薄い布切れにすぎなかった。ナイフの刃は容易く彼の心臓を貫く。


「が、はっ……あ、魔法が……俺の、魔導、が……」


ゼノンは血を吐きながら、信じられないものを見る目で胸元のナイフを見つめ、そのまま床へ崩れ落ちた。魔法に溺れ、物理的な鍛錬を完全に怠っていた魔術師の肉体は、あまりにも脆かった。


「ゼ、ゼノンーーーッ!?」


トールの絶叫が響き渡る。

ゴーレムの猛攻をなんとか弾き飛ばしたトールが振り返ったときには、すでにゼノンは物言わぬ肉塊と化していた。


そして、血塗られたナイフを手にしたレンが、冷たい瞳でトールを見据えていた。


「これで二人目だ、トール。お前たちの『無傷の常勝軍団』が、どれだけ砂の城の上にあったか……少しは理解できたか?」


「レン……お前、お前がやったのか! リリアも、ゼノンも!」

トールが怒りと恐怖で剣を震わせる。


「さあな。だが、次はお前の番だ」


レンはそう言い残すと、激昂して踏み込んでくるトールの剣線を見切ってバックステップを刻み、再びダンジョンの深い闇の中へと音もなく消え去った。

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