復讐準備
次の日から彼女達はまず第一王子の現状を把握するために動き出した。
「アン、そろそろ今日の演奏会会場へ行くわよ。あの方の情報も集めようと思うわ。」
「畏まりました。エリーゼお嬢様。私は使用人の方を中心に情報を探ってみます。」
「えぇ、よろしく頼むわ。」
エリーゼは音楽の才能に恵まれており、国で一番の演奏家である。特にピアノの演奏はピカイチだ。
彼女の演奏を聴けば、誰もがその虜になり、心を奪われるという。
夜会で演奏を披露するとなれば、多くの貴族が参加したい押し寄せ、その夜会に箔が付く。
演奏会を開くとなれば、チケットは即日完売で、多くの人が少しでも音を聴きたいと会場の外まで人がやって来る。
それほどまでに彼女の演奏は魅力的であった。
また、彼女の元へはホールや夜会、お茶会など様々な場所での演奏依頼がやって来る。
それらの依頼は、お金を沢山持っている貴族が多いため、必然的にエリーゼは国内の高位貴族から他国の王族までも繋がりを持っている。
そして、彼女の美貌も相まって、エリーゼの社交界への影響は絶大なものとなっている。
そんな彼女は今日、王家に最も近いカブァブ公爵家の夜会で演奏を披露した。
「カブァブ公爵、夫人。この度は演奏を依頼していただきありがとうございました。演奏はいかがでしたか?」
「エリーゼ様、こちらこそ依頼を受けていただきありがとうございます。とても素敵な演奏でした。来ていただいた甲斐があったというものです。」
公爵は頭を下げながら、お礼を伝えた。
「えぇ、とても素晴らしい演奏でしたわ!以前の公演会で聴かせていただいた時の曲も良かったのですが、今日の曲は夜会の雰囲気とも合っており、心に残るより素晴らしい演奏でしたわ。前々からエリーゼ様のファンでしたので、こうやって来ていただけて嬉しい限りです。今後とも応援しておりますわ。」
公爵夫人は、うっとりとした表情を浮かべてエリーゼに感想を伝えた。
「そう言っていただけて、嬉しいですわ。ありがとうございます。是非、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。」
その後も次から次へと演奏についてのやり取りをしばらくしていると、ダンスの曲が始まりエリーゼへの挨拶ラッシュも過ぎていった。
(さぁ、ようやく解放されたことですし、情報収集を本格的に始めますか)
(まずは、あの方ですわよね)
エリーゼは、会場の端で休んでいるカブァブ公爵令嬢へ目標を定めて近づく。
「カンナ様、御機嫌よう。少しお時間よろしいでしょうか?」
「エリーゼ様、御機嫌よう。先ほどの演奏素敵でしたわ。」
公爵令嬢カンナは、その後も笑顔で多くの感想を述べる。
良いことを言ってくれてるにも関わらず、早口であまりにも勢いよく言葉を続けるものだから、エリーゼの顔が引きつってしまうのは、毎度のことである。
そして、カンナは一通り感想を伝え終えると、気を落としたように真顔になり、続けてエリーゼにたずねる。
「また何かに引っかかりましたの?もちろん、エリーゼ様の為なら時間を空けますけれども!」
二人はお互いに優雅な笑みを浮かべて微笑んでいる。
ただ、その瞳の奥は笑っておらず、何かを探る得体のしれない闇が潜んでいた。
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その頃、リアーナはある商会の力を使い、情報収集をしていた。
「リン、我が商会で王家と取引した記録を持ってきて頂戴。私、あの方のお金周りについて胸騒ぎがしますの。」
「畏まりました。持って参ります。」
リアーナには、商才があった。今では国内のトップ3には入る大手商会の代表である。
幼い頃から計算が以上に速く、発想力が豊かであった。
彼女は、その発想力と磨き上げた交渉術を用いて、多くのヒット商品を生み出した。
また、そのお金を元手に様々な分野へ範囲を広げていき、商会を大きくしたのである。
彼女は頭の回転が速く、女だから、子供だからと舐めてかかったら返り討ちにされると貴族の間では少々恐れられている存在であった。
だが実際は、人との繋がりを大切にしており、味方とみなした人達への信頼は厚い。
真摯に向き合っている人へは適正な取引、もしくは同価値を生み出すためのサポートをきちんと行うが、こちらへ喧嘩を売ってきた場合は木っ端微塵にやり返すのである。
貴族の間で恐れられているのは、やり返された人達が噂を風潮したためである。
そんなリアーナは、机に書類を並べて取引記録を眺めていた。
貴族に毎年配られる国家予算の内訳と共に。
「何かがおかしいわね…特にここ。数字が他のものと比べて綺麗すぎる…」
静かな執務室の中で、リアーナは独り言を呟いていた。




