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目を閉じてキスをしたら、ば。  作者: さくらスミレ


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8.それは青春?



本日最後の授業。理科実験の為に特別教室に移動する。


ここ最近は俺の隣に浅間がいるのが当たり前になって、クラスの連中も俺と浅間をニコイチに数える。

その余りの変わり身の早さに驚く。


「1軍男子のお友達は?」


なんて聞いたら


「なにそれ、1軍男子って呼ばれてるの俺?」


って爆笑された。

それから、


「今は植田と一緒がいいから。」


って爽やかな笑顔とセットで言われて、


(そこが1軍男子なんだよ)


なんて心の中で悪態を吐いた。



理科実験室は西棟の3階。一番端にある。

そこまでダルそうに肩を並べて歩く。


実際そこまで移動するのは億劫で、階段を昇る足音もペタペタと何処か覇気がない。

これが最後の授業。今日も一緒に帰るんだろうか。


「なぁ、今日も一緒に帰るのか?」


「え?植田、何か用事あった?」


浅間にそう返され、俺との下校は決定事項だったのか、と判明。


「いや、聞いただけ。」

「そっか、良かった。一緒に帰れる。」


ぽそっとそう言うから、何だか照れる。

お互い何となく顔を逸らして視線を合わせないまま教室に入る。


「おっそいっ。」


白衣を着た化学教師が仁王立ちで待っていて、ツッコミが直ぐに入った。

俺たちはヤバッて顔をしながら慌てて席に着いた。

因みにニコイチな俺たちは同じ班の隣の席だ。


「よし、全員揃ったね?ほら、授業始めるよ。」


小柄な女性教師はリケジョってヤツで化学の魅力を伝えたいとかでよく実験をさせる。

まぁ教室でただ講義を聴くだけよりは楽しいけど。


「今日の実験は、”砂が混じった食塩から砂を取り除く”だ。やった事ある子もいると思うけど。」


教師の話をうわの空で聞く。だって日差しがポカポカ暖かい。

早く授業終わんないかな。そう思っていた俺に、


「あ、俺中学で同じような実験やったわ。」


と、隣に座っていた浅間がそう呟いた。


「マジで?」


「マジ、マジ。簡単、簡単。」


そんな風に言うから途端に大舟に乗った気になった。


「じゃ、浅間がいれば何て事ないか。ラッキー。」


ししし、って笑って浅間を見れば、任せろって親指を立てて応えていた。

それ、ちょっとダサい。


「じゃ、2人一組で話し進めて~。実験のやり方もそうだけど、それによって何が分かるか、ちゃんとレポートとして提出してもらうからね。」


「え~~~。」


クラス中のブーイングが起こって教師の顔がドヤ顔に変わる。


うえっ、面倒臭い。


「俺レポート嫌い。まとめろって言われてもそのまま書くしかねぇじゃん。」


「実験の手順とかそのまま書けばいいんだよ。それで大体埋まるし。」


浅間に言われて、そんなもんか、と思う。

俺一人なら適当になるけど、浅間がいれば百人力。さぞ立派なレポートが出来上がりそうだ、と内心ワクワクする。


「一緒にやる?レポート。」


そう聞かれてキョトンとした。


あれ?俺最初から一緒にやる選択肢しかなかったわ。


そう気付いたら、ボボッと顔が赤くなったのが分かる。


「植田?」


「こっち見んな。」


それが恥ずかしくて堪らなくて、俺は机に突っ伏して顔を隠した。


「え~何々、何で顔隠す訳?見せてくれよ~。」


悪ノリした浅間が俺の顔を隙間から覗き込もうとする。

顔が近づく気配がして、俺は頑なに顔を見せまいと腕をギュッと狭めた。


「植田~。植田く~ん。なぁ、うえっち~。」


「え~浅間くん、植田くんの事そんな風に呼んでるの?」


浅間の声を拾った女子がすかさず指摘する。あ、これ浅間を狙ってた女子だ。

声で分かった。同じ班になるなんて最悪。


目の前でいちゃいちゃされたら嫌だなぁ、なんて思いながら顔を上げる。


「植田?」


目の前にイケメンのアップ。結構破壊力ある。


「うおっ。」


「何でそんな驚くんだよ。傷つくだろうが。」


そう言ってコツンと俺の額を小突いた。


「2人って本当に仲良いんだね。意外。」


さっき話し掛けてきた女子がそう言って会話に加わろうとする。

ほらね、モテる男は向こうから寄ってくる。


「当たり前じゃん。俺と植田付き合ってるわけだし。仲良しに決まってるって。」


そう言って、俺の頭に手を乗せた浅間は割と彼氏風吹かせていて、中々カッコいい。


「あ、ああ、そっか。彼氏だもんね。」


俺たちのお付き合いはクラス公認だったから、女子は納得、という顔で頷いた。

余興の延長で、冗談の類だと分かるからこその対応だ。


「じゃ、俺たち2人でやるからさ。女子は女子で進めてよ。2人一組で出来る実験だったし。俺、植田と一緒がいいから。」


アッサリそう言って女子を追い払う。浅間と一緒に実験したかった女子たちはめっちゃ俺を睨んでくるし、そんな言い方したら怒るに決まってる。

なんて頭では思うのに、浅間が俺を選んでくれた事に顔がニヤつく。

やっぱりこんな顔を見せたくなくて再度撃沈。机に臥せる。


「おいっ、植田。いい加減にして早くやろうぜ。」


ぐしゃぐしゃと俺の髪の毛を乱してくる浅間に


「分かった、分かったから、もう止めろって。」


なんてわざと怒ってるように装って顔を上げた。


「もうっ、髪がぐっしゃぐしゃじゃんか。」


「わりぃ、わりぃ。」


そう言って今度は一転、髪を撫でつけてくる。

彼氏さまのコミュ力は高い。


「おい、そこ。いちゃついてないで早くやるように。」


教師の言葉にクラス中の注目を浴びた。

途端にやいやいと騒がしくなって、実験は余計進まない。


最終的に教師の一喝が入ってやっと沈静化。

俺と浅間は無駄に注目の的になり、無駄に教師の反感を買った。


「2人はバツとして実験の片づけ。最後までやってから帰る事。」


なんて言われて顔を見合わせる。

面倒だけど2人ならまぁいいか、と思って笑ったら、浅間も同じように笑い返してくれた。


胸の鼓動が高鳴る。

あれ?これって青春の1ページみたいじゃね、なんて思ったらお互い笑いが止まらなくなって、更に教師に怒られた。


ああ、これは青春。



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