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目を閉じてキスをしたら、ば。  作者: さくらスミレ


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2/16

2.あくまで企画


数時間、時を遡ってみよう。

俺が通っている私立新星国際学園の学園祭が、昨日と今日の2日に渡り行われた。


俺たちのクラスは和風喫茶という無難な催しに決定。

これが劇だったり、メイドや執事やらの喫茶だと、クオリティーの高さを求められる事もあるけれど和風喫茶はその点セーフ。


男も女も、普段とは違い甚平や浴衣を着るだけで済むからだ。馬子にも衣裳とはよく言うもので、何だか全員イケてる雰囲気になった。

女子は項の色っぽさも好印象だったのか、やたら声を掛けられて、一緒に学園祭を巡るカップルが多く成立した。


クラス内でもカップル成立は相次いで、打ち上げ参加者は独り身ばかり。

それはそれで盛り上がろう、と実行委員が頑張り過ぎたのか。


ちょっと趣旨考えようよ、と言いたくなるような企画が通ってしまった。アルコールも摂取してないのに、異様な雰囲気が場を包む。


企画は『目を閉じてキスをして、相手を当てたら即カップル成立!(自由参加)』という、ノリだけで提案された企画だった。おい、誰だよ許可したの。


学園祭でカップル成立を取り逃がした女子は目の色を替え、不純な動機を持つ男子は我先にと参加を決める。

ま、それはほんの一部だったけど。

もちろん、好きな人がいたり、こんなイチ企画で大事なキスをあげてなるものか、という至極真っ当な精神の持ち主は参加を辞退した。


俺、植田直行うえだなおゆきもその一人。誰とも付き合った事などないが、ファーストキスはやっぱり好きな人と、なんて純情な気持ちを胸に秘め、『辞退』にマルを付けようとしたその時、運悪く実行委員に捕まった。


「あれ?植田は不参加?いやいや、お前こういう企画にでも参加しないと一生キスなんて出来ないと思うぜ。なぁ、悪い事は言わないからさぁ、参加してみようよ。」


「え、嫌だよ…。」


「何で?」


「何でって、おかしいじゃん、キスがゲームみたいで。」


「何だよ、ノリ悪いなぁ。これはね、結構考えられた企画なんだぜ。恋人が出来ない人間にその機会を提供する。お前みたいなキスに一生縁のなさそうな人間にもキスが出来るかもしれない機会を与えてやれるっていう。願いが叶うかもしれない救済企画なわけ。」


俺の肩に腕を乗せて、馴れ馴れしく話している実行委員は割と強引な所がある。俺の苦手なタイプだ。


「それに参加しても絶対キスしなきゃならないって訳じゃない。最終的な判断は本人にゆだねるし、キスの場所だってクジで決めるから、頬だったり額だったりするんだぜ。」


「唇はないって事?」


「ん~どうかな?そうかも?」


ニヤニヤ笑う実行委員の腕を外して、


「でもやっぱり…。」


と再度逃げようとしたら、またしても肩に腕を回される。


「な、俺の顔立てると思ってさ。ぶっちゃけ、女子はみーんな浅間せんげん狙いなの。」


「浅間?来てんだ。」


「顔良いやつは今回ほとんど彼女が出来ちゃって、参加してねーじゃん。浅間もそうかと思ったら、随分誘い断ったらしいぜ。」


浅間というのはクラスでも1軍男子に属している男で、顔は割と軟派っぽくて柔らかめ。いっつもニコニコしてるイメージ。

俺は全く話した事もないから知らないけど。見た目の感じ性格は良さそう。いや、知らんけど。


「な、他の男子は浅間が参加してるってなると勝ち目ないとか言って辞退しそうだし。」


「え~。俺サクラ?囮?」


「何でもいいから。な、今度何か奢ってやるから。」


必死に頼み込む実行委員にちょっと同情したのが分かったのか、俺の軟化した態度を見て、そいつは目を輝かせた。


「やった。恩にきる、植田。本当嫌だったら最後の最後、断っていいからな。」


そんな風に言い捨てて、今度は壁に立ってる数人の男子をターゲットにしたのか、颯爽と去って行った。


ぶっちゃけ参加する位ならいいかな、と少し思っていた。

実行委員が言うように、唇じゃないならそれは役得というものだし。


俺だって他人の唇に興味ある。キスってどんなの?と妄想だってしたりする。

それがあからさまじゃないだけで、多かれ少なかれ高校生男子の興味関心なんて言わずもがなだ。


自分が参加するとなると、途端に緊張感が高まって、ソワソワとした気持ちに変わる。さっきまで直ぐにでも帰りたかったのに。手持ち無沙汰に壁際に立って周囲を見渡す。


女の実行委員が女子の参加希望者の勧誘をしているのが見えた。

勧誘しないと参加者いないならやらなきゃいいのにって思ってぼんやり見ていたら、クラスで人気な女子数名が参加するような話が聞こえた。


「だって浅間くん参加するって聞いた。」


「えっ、本当?私、前に告って断られたんだよね。でもその後も態度変わらず優しいしさ、未だに好きだったりする。」


「じゃ、参加しなよ。キス出来るのもラッキーだし、もし誰がキスしたか当ててもらったらカップル成立になって期間限定だけど付き合えるらしいよ。」


何じゃそりゃ初耳。

そんなアコギな事してんの。これは実行委員、誰かから賄賂でも受け取ってんじゃん。参加者集めで浅間本人には話が付いてそうだけど。

何だ、結局ヤラセって事か。


この企画も誰かと誰かをくっつけたい輩が考えたに過ぎないんだろう。

そのカモフラージュに俺なんかは担ぎだされただけって事だ。


真相が判明すると、途端に緊張感が抜ける。

ま、そうだよな。周りに同級生がいてキスするって、かなり恥ずいしやっぱりちょっと普通じゃない。

まともな奴は参加しないか、俺みたいに義理で強制参加させられる奴は直前で「すみません」って謝るんじゃん。

そっか、そっか。

ならいっか。


俺はさっきまでの面倒臭さが多少ぶり返してきた事を感じたけれど、実行委員に恩を売るべくその場に留まった。




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