14.知りたいと、頷く
それからまたしても2週間。
別れた直後よりは話すようになった俺と浅間はもうどこからどう見ても、一介のクラスメートに過ぎない。
周りも俺たちが付き合っていたなんて覚えてないだろう。
俺の中では未だに浅間への気持ちは無くならず、隣を歩く機会があれば、無駄にドキドキが止まらない乙女の気分を味わったりしていた。
ただ、本人に気付かれてはならない、と以前よりも表情が硬くなっている自覚はあったが。
休み時間も移動教室も。
結局俺は1人で行動している。
俺がハブられてるわけじゃなく、何となく1人の方が気楽に思えての結果だ。
浅間じゃないと、何となく収まりが悪く感じる。
驚いた事に、浅間は以前の1軍メンバーとは別行動をとるようになった。
腕を組んで話していたあの可愛い女子とも最近は一緒にいる様子はない。
それを嬉しいと感じてしまうのはしょうがないだろ、だって浅間が好きなんだから。
なんて誰ともなく言い訳をする。
今日は掃除当番が被って、焼却炉までゴミ箱を2人で運んでいる最中だ。
大きなゴミ箱を一つずつ持って歩く。
これが結構重労働で、浅間と2人きりになりたい女子はいても、流石に重いゴミ箱に躊躇するらしく一緒に行こうとする女子はいなかった。
「うわ、めっちゃゴミ入ってるんだけど。」
「誰だよ、答案用紙…ああ、佐伯だ。いいのか、このまま燃やして。」
「いいんじゃねぇ。40点だぞ、持って帰りたくなかったんだろうよ。」
文句を言いながら焼却炉でゴミを開ける。
無駄口を叩きながらの作業が凄く楽しくて笑顔になった。
「ほら、そっち持たないと風で飛んでいくって。」
「無理、無理。焼却口ちっさすぎ。」
無理矢理ゴミを突っ込んでいたら、浅間の言った通り風が巻き上がって数枚の紙グズを飛ばしていった。
「やっべぇ。」
慌ててゴミ箱を置いて追いかける。
近づいた途端またフーっと先に進んで中々捕まらない。
「うわっ、生きてるっ。」
「んな訳あるかって。」
ワーワー言いながらゴミを集めてやっと全部を焼却口に押し込んだ。
「やっと終わった。」
「だな~。」
ふっと顔を見合わせて笑う。
あ、いいな、と思う。
でもそう思った途端、浅間はふい、と顔を背けた。
その仕草にズキっと胸が痛む。
「そ、そう言えば最近一緒にいないんだな。」
「何が?」
空のゴミ箱を持って校舎へ戻る。
沈黙が何だか怖くて、何か話さないとと思って振った話題はまたしても失敗。
それでも止める訳にも行かなくて話し続ける。
「いや、浅間が最近前の奴らと一緒にいないなって。仲良かったじゃん、女子とも。」
そう言った俺の顔に浅間がチラッと視線を向けたのが分かった。
それでも横を向けなくて俺は前だけを見ていた。
「てっきり付き合うのかと思った。」
ドキドキしながら真実をまぶす。
最大にして最高の関心。
あれだけ俺に対しても豪語してたんだ。あの子はきっと浅間に告白したんだろうと思った。
「ああ、告白された。」
やっぱり…。
その事実に落ち込む。
ちょっと頭を下げただけなのに、視線も下がって気分も下がる。
そんな俺を見ていたのか、浅間が淡々と言う。
「でも、断った。」
「あ、ああ、そう。断ったんだ……。」
声の調子が上向いて、戸惑いよりも嬉しさが透けて見えた。
俺はよいしょ、とゴミ箱を抱え直して校舎を目指す。
2人の間にそれ以上会話はなくて。俺も何も言わずに歩いた。
今話し掛けたら、きっとどうして断ったのか、聞いてしまうと思ったから。
そう思っていたのに、下駄箱まで着いて、上履きに履き替えている最中に浅間が俺に身体を寄せてきた。
「知りたい? どうして断ったのか?」
覗き込むようにやや頭を下げて浅間の顔が近づく。
その眼差しの強さに一瞬息を飲んだ。
視線を逸らす事など出来なかった。
ゴクリ、と唾を飲み込んで掠れた声で答える。
「し、知りたい……。」
そう言ったら、浅間がフッと笑って頷いた。
「じゃ、一緒に帰ろう。」
その笑顔は恋人だった時の懐かしい笑顔と同じに見えた。




