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第十四話 ルーク

ルイとの衝突や、始原ノ青:トレヴィ=アクアリスとの接触などなど、とても濃い一日が終わり、平穏な異世界生活が始まった──ということはなかった。


その日からと言うもの、二ヶ月後に来たる『入団試験』に向けて、サーラさんによる地獄の特訓が始まってしまった。


現在、サーラさんとの1on1中だ。


この二ヶ月間の特訓の最終目標は、この1on1でサーラさんに一撃を与えること。

皆は思うだろう、「え、それだけ?」と。

俺も最初同じ気持ちだった、が今は違う。


当たる気がしなかった。


「カっケル君、そんなんじゃ私に当たらないよっ?」


「……何かノリノリなの腹が立ちます、ね!」


俺は『物質操作』でサーラさんの背後へ仕込んでおいた岩を弾丸のごとく放つ。

もちろん、息をするように撃ち落とされるが、一瞬だけ俺から目を逸らした。


「もらった!!」


──『物理攻撃力上昇II』

──『物理攻撃速度上昇I』

──『視認速度上昇I』


新たに習得した『能力上昇バフ』をモリモリ盛って、木刀で真横に一閃。

しかし…


「あっ」


俺の渾身の一撃は、サーラさんの軽い上払いで弾かれ


「わん!とぅ!すりー!」


軽快なリズムとともに、俺の脳天、脇腹、膝に衝撃が走る。


「ぐはっ……!」


結局、俺は無様にも地面へと叩きつけられた。


「はい、今日も残念でした。なんで負けたのか明日までに考えといてね〜。私は仕事があるので、宮殿に戻ります!」


投げ捨てるように言い放ち、颯爽と都へと帰っていった。


今俺がいるのは、都の外にあるサーラさん直伝稽古場(ただの森を切り拓いた空地)にいる。


「…こっぴどくやられてるじゃん。かわいそー」


「全く可哀想に思ってないよね、ソレ」


逆さまの視界に、冷ややかな、けれど整った美少女の顔が入り込んできた、サーラさんの妹、アイリスだ。


見た目こそ美少女だが、性格はツンツンデレデレの困った女の子である。


「おそらく思ってるわよ」


「思ってるのなら教えてくれ。『能力上昇バフ』ってIとかIIとかランクがあるけど、どのぐらいのランクなら及第点?」


「どうなんだろう、私はIVとかVは平均で出せるけど。そのぐらいあれば良いんじゃない?」


「それはあなたが天才だから出せるのでは…」


今の俺では、平均IとIIの間だろう。多分、全集中してIII。


「ふふ、だって私が一番強いんでしょ?」


「前のでからかわないでください…、ってそれは置いといて!アイリスとかって、『神素流燿法』を無意識でしてるって聞いたけど?」


俺は話を逸らそうと流れるように話題転換する。

それは、サーラさんから聞いた無意識下での『神素流燿法』の使用だ。


「そうね、無意識中でも、基礎的な『能力上昇バフ』は継続して発動できる。後は、より効果を得たいときに意識して発動するって感じかな」


「無意識下で、IV出せるのか…。俺、全力でもIIIなのに」


おそらく、サーラさんとか、あのルイって野郎も無意識に使えるんだろうな。


「そんな悲しそうな顔しなくても、できる人の方が少ないんだし大丈夫よ」


「そう、かな…」


俺は立ち上がり、背中についた砂を払って、都に帰る支度をする。

まだ昼だが、昼からサーラさんは仕事があるので今日の午後はフリー。

ただ、少し俺には用があった。


「あ、カケルって今日、ルークに会いに行くんだっけ?」


「そうそう、ただ、どこにいるのか分からないんだよな…」


今日、俺が会おうとする人物、ルーク。

なぜ、会いに行こうと思い至ったのかは、先日のトレヴィ様と話し合いが終わった時に戻る。







俺たちは話し合いを終えて、部屋から退出しようとしていた。


「ちょっと、カケル君いいかな?」


すると、トレヴィ様が小声で俺を引き止める。


「あ、はい、?」


俺は何かやらかしたかと焦り、ぎこちなく頷く。

トレヴィさんは俺の焦りに気づいて苦笑し、他の人に聞かれたくないためか、俺の耳元に囁いてきた。


「都に、ルークという青年がいるのだけど、時間があれば会ってみるといい。君と馬が合うはずだよ」


「え、それはどういう──」


突然の提案に疑問を呈そうとしたが、俺の口をトレヴィ様の人差し指で塞がれ阻まれた。


「加えて、あまり君が『異世界人』ってことは言いふらさないこと、いいね?」


「は、はい…」


美男子の笑みに押され、それ以上真意を聞き出すことは出来なかった。








と、いう経緯が会って、ルークという青年に会いに行くことになった。


「ん〜ルークはね、昼時なら彼がいつも通ってるカフェにいるかも」


「え、まじ?案内してくれるの?ありがとう」


「なんで、私がまた案内することになってるの…?」


「だって、そのいつものカフェなんて知らないし…ね?」


なぜか呆れ気味のアイリスに、俺は救いを求めるような目で見つめる。

最近分かったことがあり、アイリスは良心に訴えれば、愚痴を漏らしながらも何だかんだ引き受けてくれるので、それを利用する作戦だ。


「…あぁもう分かったわよ!案内するからその酷いズラをやめて」


「ちょっとひどくない?」


これがアイリスのツンとデレである。ただ、ツンの方がでかい気がするが。


こうして、アイリスに案内してもらい、ルークがいるというカフェとやらに到着した。そこは、大通りから少し外れた所にある老舗であった。


俺たちは早速入店して、ルークという青年を探すが、小じんまりとした店なので人探しにそう時間は掛からなかった。


「やっぱりいた。好きだね〜この店のコーヒー」


「ん?誰かと思ったら、今話題沸騰中のアイリスさんじゃないですかい、偶然ですな」


「私、いつの間に話題になってるのね…」


「まぁ、そら、宮殿前であんな大騒ぎしてたら…って、その横の人はもしかして?」


「…!」


The好青年という顔立ちから発せられる独特な口調に呆気に取られる俺。

その青年が不思議そうに俺に視線を向ける。


「あ、どうも、初めまして。カケルって申します」


すると、俺の名前を聞いた途端、ルークが慌てて立ち上がり、強引に俺の手を握りしめる。


「君がアイリスのお義兄さんちゅうカケル君!?あの騒動の事、噂で聞いとるで!なんか凄い魔法打ち返したとか」


「え、あ、はい、そうです」


「カケルって、初対面の人に弱々しいよね…。ってルークもグイグイ行かないの」


「いやぁ、すまんすまん。盛り上がってしもうて、二人も座って座って」


ルークに促され、椅子に座る俺たち。


「…思ったよりも特徴的な人でびっくりなんですけど…」


「ははは…私も初めはそうだったよ?」


俺たちの前に座る、関西弁の青年。

俺はその口調にも驚かされたが、一番衝撃的だったのはその容姿だった。


……見間違いか?

センター分けの黒髪、見慣れたアジア系の肌、そして深い黒の双眸。この世界では希少なはずのその特徴は、あまりに「俺の知る姿」に似ていた。


(まさか、日本人??)


これがただの偶然と言えるものなのか。


「二人とも揃ってひどいな…、まぁみんなから言われるけど」


「まぁ、第一印象は…この通り変人だけど、案外良い人だから」


「アイリスはもう少し褒め方っちゅうもんを習ってほしいわ…」


俺は二人の漫才のような会話を他所目に思案に耽る。


(偶然…いや、トレヴィ様の意味深な発言からすると…)


俺の脳にある可能性が浮かび上がる。


彼も『異世界人』ではないのかと───。

次回第十五話『神世代』です!

お楽しみに~

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