015 ドマルド・タスメニア皇帝国
お久しぶりでございます。龍坊です。
まず、これほど投稿をストップするつもりはありませんでした。すみませんでした。
皆さん、B型インフルにはご注意を。予防接種しててもご注意を。予防接種してもB型インフルに罹った龍坊でしたorz
エルムは油断なく刀を納め、柄に手をかける。居合の構えだ。対するメフィストは不気味な嗤い声をあげつつも、こちらに両腕を向けて構える。
メフィストの魔力に耐え切れず、足元の地面に亀裂が走った。
ハルド達の方を見ると戦闘が止まっていて、敵味方関係なく嘔吐する者や失神している者、鼻や目から流血している者までいる。ハルドとアリスは何とか持ち堪えて、立て直しを図っているが時間の問題だろう。
高濃度の魔素は人間にとって毒だ。ここまでくると瘴気と言った方が良いのかも知れない。
これら全ては、相手が不完全故に体から多量の魔素が出ているのが原因だ。
さっさと片付けた方が良さそうだ。
うん?盗賊の頭、あいつだけ平然としているな。明らかに影響を受けていない。
頭は瘴気受けながらも、一人、爛々と目を輝かせて悪魔を見ていた。
あいつが付き添い人に暗殺を指示したり、悪魔を造ったのか?暗殺の強要は後ほど事情を聞くとして。
代行者、あいつが悪魔を造るなんて芸当をできると思うか? 盗賊だろ?
【スポンサーがいるのでしょう。悪魔を作るとなると、実験で街を複数犠牲にしていると推測します。】
は? それって国家規模じゃね? 悪魔の製造に国が関わってるとか洒落にならんな。どんどんまきこまれs…旗が立ちそうだからやめだ。この話やめ。そんな国と関わりたく無いし。
そんな事を考えていると、頭が大声で感極まった様に叫び始めた。
「せ、成功だ! 成功したぞ! 我らはまた一つ切り札を得た! 昇進も夢ではないぞ! 」
「か、頭ぁ。う、上の判断も無しに使ってよかったんで? 」
1人で興奮する男の言葉に、今にも吐きそうな部下が返す。血が出ていないのは、部下もそれなりの実力があるからだろう。
頭と呼ばれた男はギョロリと部下に目を向ける。
「何を言う! 上は"暗殺を遂行せよ。"という命令しか下しとらん! 人造悪魔のデータ採取と暗殺が同時に遂行できる絶好の機会ではないかっ!! 」
どうやら人造悪魔とやらに相当自信があり、優位に立っていると思っている様だ。饒舌になり、情報がただもれである。
昇進とか言ってる時点で、何かしらの組織が盗賊の上にあると白状しているも同然だ。
ついでにその組織の情報をばらしてくれると嬉しいな。
「メフィストよ! 我らに仇なす邪教の民を屠るがいい! 」
男の目には狂気が宿っており、男の言葉通りに悪魔は魔法を放とうとする。
……邪教の民ね。宗教関連か。レイナに後で国際情勢でも聞くかな。無用のトラブルを避けるためにも、そこんとこ重要だろう。ファンタジーの世界でも情報の重要性は変わらないのだ。
代行者、こいつはどう言う悪魔かわかるか?
【メフィストは本来、理性と知性を併せ持つA級悪魔です。完全体ならば小国などひとたまりもありません。しかし、これはC級ほどまで身体機能と精神構造が欠損しています。個体名レイナに行使した様な霊法のことや障気を放っていることを加味して、B-級でしょう。こちらの戦力で対応可能です。】
……そのランクの話は長くなりそうか?
【肯定します。】
そうか、では今は相手を排除することだけを考える。さっさと片付けて、ノルマをこなしつつ色々体験してみたい事があるからな。特にドワーフやドライアドが気になる。
エルムは動いた。
俺はエルムの感覚を捉えようと、意識を集中する。
「は? 」
俺は不思議な感覚にとらわれていた。エルムの達人の域にある動作が、音を置き去りにする様な動作が、はっきりとブレる事無くありありと見て取れる。
……そういやレイナを助けたからステータス変わってんだろうな。解析するとか全く考えてなかった。やれやれ、特権階級の前では解析をする気が起きないとかツッコミ所満載すぎる。それより、これならばエルムの援護を十全に行うことが出来るな。
〔土壁〕〔土針〕
敵の周りを土の壁が取り囲み、四方位から土の針が殺到する。鋼の錬○術師を彷彿とさせる……厨二が再発しそうだ。
針はメフィストの魔法をキャンセルさせるも、ダメージを与えるには至らない。
魔法では相手の体勢を少し崩すくらいの効果しかない。目に見える状態にはなったが物理攻撃は相変わらず効かない様だ。
だが、足止めとしては充分。
〔今だエルム! 〕
跳躍していたエルムは刀を振りかぶる。
──〈属性剣・樹木〉〈刀心一体〉──
属性剣・樹木により刀の刀身が無数に枝分かれしつつ、それらすべてが壁に囲まれている悪魔へ降り注ぐ。その全てに刀心一体の効果が付与されていて、針山の如く串刺しにする。
ズドドドドドドドッ!!
「ギャアアアアアアアア!! 」
メフィストから血液の様な物質が飛び散り、あたりを紅く染める。苦し紛れに相手は魔法を放つも、針の雨の勢いを止めることはできなかった。
悪魔の悲痛な叫び声を聞いて、盗賊は呆然としている。
更に、エルムは本能に従い、ある魔法を発動した。
──〈属性剣・聖〉──
メフィストの体を神々しい純白の光が蹂躙する。
悪魔の絶叫が途絶えた。土壁を退けると中から黒い砂の様な、悪魔の残骸が出てきた。
あー、代行者? 刀心一体の類のスキルしか効かないとか言ってなかった?
【…聖魔法は特例です。習得している事が稀なので、考慮していませんでした。】
へー少ないんだ?
【そうですね。聖魔法の総本山である神聖国から外に出るとあまり見かけません。】
あーなんて言ったかな? ムムム……?
【……正式国名、ムファルスホイム・レクイアヌス。通称、神聖国ムファルス。首都はロキです。】
なんか、そんくらい覚えろ、みたいな間があったような? 気のせいか? つーか正式国名長っ!! 絶対呼ぶ奴居ねーだろ。
【ちなみに神聖国は森の東側に。そして皇国、正式国名ドルマド・タスメニア皇帝国が西側にあり、両国は──
待て待て待て、今その話はストップだ。おそらく思考が速くなったことで支障は出てないが、今は戦闘中だぞ? わかってるか代行者?
兎に角、阿呆面晒してる盗賊をしょっ引くぞ。
「き、貴様! 貴様は一体何なのだ?!! 」
悪夢を見て青ざめた様な、とても気の毒そーな表情をしたお頭がそう言った。
何というか、ごめんね? あんなに世紀の発見した感じに喜んでたのにな。
努力を一瞬で打ち砕かれた事は同情しよう。しかし、殺人未遂を許す要素はこれっぽっちもない。
ここは大人しくなって貰おう。盗賊をロックオン。
〔土籠〕
40人以上の盗賊を一気に確保する。瘴気で身体がボロボロになり、切り札を失った事で抵抗する心が折れたのか、あっさり捕まった。動ける奴らも不意打ちで捕まえたから、本当にあっさりだった。
さて、戻るか!
ハルドとアリスに協力して、逃げない様に一つ一つ土籠を解き、盗賊を一人一人捕縛してからテトリアへ帰投した。
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俺達はレイナとユリーシャさんとアリスさんとハルドさん(雰囲気が鉛のように重たいので、あえてさん付けした。)と共に、どデカイ長机で会議の様な話し合いを始めた。──何故かエルムが、所謂社長席に座っていて、左手前からユリーシャ、レイナ、右手前からハルド、アリスがいるのはこの際無視しよう。いつの間にか中心人物扱いで、責任が回って来そうな予感がするが、無視ったら無視だ。
ユリーシャはいつもと変わらぬ表情で、しかし瞳の奥に、鋭い光を確かに宿し、レイナに問う。
「レイナ、盗賊の言ったことに間違い有りませんね?」
レイナはしっかりと頷き、答えた。
「はい、確かに人造悪魔だと。」
"人造悪魔"とは、ムファルスの神獣に対抗する為にドマルド・タスメニア皇帝国が開発していた魔導生物の一つである。
その名の通り、人が造りし悪魔であり、推定戦力は完全体で一騎当千。この世界のランクで言えば、大半がA級相当、前世でならば戦略級に当たる。
そもそも。太古から悪魔は召喚するものであり、上級悪魔はA級の戦力が見込めるため、戦争の要となるのが常であった。
だが、如何せん悪魔召喚には膨大な供物が必要である。
その規模は、悪魔の力に魅了された国が悪魔の攻撃を受けた国と共に滅ぶことから、"傾国の凶星"と言う異名がつけられるほどだ。
従って、悪魔召喚は軽々しく運用できない、切り札中の切り札で、出来れば使いたくない戦法。そう、使わなくて良いのならそれに越したことはない。
だが、皇国はそれを必要とした。それがなければ不利になる。何故なら、神聖国にはA-級の聖獣、所謂神獣の大群が存在するから。その数およそ一万。しかも、魔力以外、これと言った供物を必要とせずに使役できるという理不尽の塊である。
その様な事情から、先に述べた通り、新たな切り札を模索し、その一つとして人造悪魔の開発を進めた。
人造悪魔の利点は幾つかある。一つは理論が確立されれば大してコストがかからないこと。一つは自我が無いため御し易いこと。又、自我が無いことで供物の必要も無いし、実験の犠牲と悪魔召喚の供物とを比較すると前者の方が少ないと言えること等が挙げられる。
因みに、悪魔召喚の供物が少ないと現れないか、悪魔が好き勝手に暴れ出すらしい。
神獣とか何のこっちゃ? と疑問に思っていたら、レイナが説明してくれた──代行者の詳しすぎる補足も加わって。
この世界には二つの大国が存在する。
一つは、聖魔法の最上位「セイズ」を擁するムファルス・レクイアヌス。
ムファルスはイザナミ神を信仰する宗教国家である。
セイズの詳細は不明であるが、神獣と呼ばれる生物を使役する力がその一端と思われる。
一つはドマルド・タスメニア皇帝国。
俺は次の説明を聞いて、盛大に咳込む様な感覚にとらわれ、頭痛の様な幻痛が走る事になる。何故なら──
「金属の鳥、金属の鯨、金属の象。そして金属の筒を用いた特殊な攻撃。どれを取っても脅威です。」
皇国は、発展の過程はどうであれ、結果が地球に似ていたからだ。それはもう、魔法があるか無いかの違いだけ。
何故、皇国はファンタジーな世界で異質な発展を遂げたのか?
それはその国の成り立ちに由来する。
皇国の始まりは、数万年前に別の神を信仰する異教徒として、後に神聖国となる国から迫害された民族が寄り集まってできた小国だった。
皆が寄り添い支え合い、必死に生きようとした。
だが、それでも迫害は留まるところを知らなかった。
各々の民族は自分達の神に縋り付き、助けを請い続けた。
それでも、神はの助けは遂になく。
生存本能が雄叫びをあげる。
彼等は思う。神は居るのか否か?
聖魔法は神から与えられたものだと、奴等は声高に主張する。それは誠か?
自身の神、他人が信じる神、全てに疑問を持つ。心の拠り所を、理性ではなく本能が疑う。
しかし、それを判断するには余りに無知で無力である。
従って──魔法とは何か? スキルとは何か? 林檎は何故地面に落ちる? 火とはどの様な現象か? 木や土や水、それらは何でできている? 魔法やスキルはどの様な原理で現象を引き起こしている?
知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい──全知全能と呼ばれる神を認識したいが為に。奴らの神の正体を白日の下にさらす為に。そして何より、生きたいが為に。
その小国は、本来なら自分達の神を盲信し、最後まで自分の崇める神と共にいる事を望むのが大半だっただろう。しかし、後に"悪魔の落とし子"と呼ばれる人間が現れた事で一変した。
彼等は民の生存本能と知識欲を巧みに駆り立て、国の大きな原動力へとなるにまで高めたのだ。いつしか神への信仰心は薄れ、力を求める方へと進んでいった。
そして、皇国は実力主義の無神主義。例え、「神」というものがあったとしても、それは意思の存在しない「システム」であり、無数の要因が作用し合った結果であると。
はあ、癖の強そうな国だなぁ。"悪魔の落とし子"とか嫌な予感しかしない。
というか、ムファルスに今まで対抗出来たのは何故だ? 人造悪魔はついさっきのがぶっつけ本番みたいなことを言ってたよな?
…待てよ? 切り札の一つとして人造悪魔が開発されたということは、他の開発が間に合ったのか?
【その推測を肯定します。】
どうも、聞きたく無い言葉をありがとう。
魔導生物…もうここまできたら兵器だよなぁ。なんだよ、傾国がどうとか、街が消滅だとか、戦争、民族、迫害、暗殺………何このファンタジー要素より殺伐とした単語が目立つ感じ。
調子に乗って泥沼に片足突っ込むのは避けたいが……思い直すと、ノルマが"救済"とかふざけてる時点でトラブルにタックルかます運命な気がしてきたぞ。
「できれば皇国とは事を構えたくは無いのですが…」
レイナがそんなことを言った。
トルラドはそんなに大きい国では無いらしい。神聖国や皇国に比べると、前世で言う発展途上国のような立場にあるそうで、戦争が起こるのは避けたいらしい。
うん、俺だって避けたい。では、ここは一先ず。
〔と、取り敢えず。その話はムファルスの人達とも話し合いの場を設けて協議したら良いんじゃないか? ほら、レイナのお父さんや王様に詳しく話して、トルラドが国家としてどう対処するかとかも決めなきゃいけないだろうし、早く首都のトルラに帰ったほうが良いよ。うん。〕
全力離脱。皇国の事はムファルスやトルラドに丸投げ離脱。
ごめん、騎士団救ったので許してくれ。ぶっちゃけ、何が悲しくて異世界来てまで戦争しなくちゃいけないんだよ。
俺の意見を、エルムはオブラートに包んで発言した。
「……そうですね。すみませんでした。エルム様にはお礼として何か差し上げたいのですが、如何でしょう? 」
ユリーシャさんがそんな事を言った。
お礼……そうだなお金、観光、あとは帰りの馬。あ、トルラドってドワトランと仲が良かったりするのか?
「そうですか、ドワトランを訪れたいと。……それならば、紹介状を認めましょう。」
おお、ユリーシャさんありがとう。どうやら信用してくれたようだ。迷惑を掛けないように心掛けよう。……い、今のはフラグじゃないよな? 立ってないよな?
兎にも角にも、白金貨50枚と馬を一頭。そしてレイナがこの街を案内してくれる様になった。
ちなみに貨幣の相場は円換算で言うと、鉄貨(屑鉄)一枚で一円、銅貨一枚で十円、銀貨一枚で百円、金貨で千円、白金貨で一万円。よって貰ったお金は50万円なり。
価値がわかりやすい。特に銅貨と銀貨は、色が前世のと似ていてわかりやすい。ただし、苦労しそうなのは物価の方だろうな。
これにて解散となり、街に出た。
そしてこの街のメインストリートに来ていた。
〔うおー、防壁高いっ! 人多い!! 〕
何コレ、メッチャテンション上がるんですが?
「ええ、ここは前線の街ですから、冒険者の人達が沢山おられます。」
レイナからそんな情報を得た。
通りの向こうに顔を出す、煉瓦造りの外壁。高さが約二十五メートル、厚さ十メートル。それがぐるりと街を取り囲む。
上から見た時は大したことないと思ってたけど、間近で見ると半端ないな。これは普通に入れませんわ。
〔ヘリス、あなた達が門を通っていない記録は誤魔化してあるので心配しなくても良いですよ。〕
レイナが意思伝達でそんな事を言ってきた。
〔おお、ありがとうレイナ! 実はバレないかヒヤヒヤしてたんだ。〕
そう俺たちは、前世で言う不法侵入をいたしました。
幾ら人命がかかっていたとはいえ、何を言われて拘束されるのかビクビクしてました。
そんな心情はレイナにバレバレだったようだ。恥ずかしい。
レイナは俺が礼を言うと、満足そうにニコニコしていた。若干スキップしてるのは気のせい、では無いな。
色々な屋台がでていたので、舌鼓を打ちながら観光。最高だね。感覚共有で多少違和感があるが、味がわかるのは素晴らしい。
※
街を粗方観光し終わって、門の所に来た。
良く見ると、ユリーシャさん達も変装して見送りに来ている。
何故か、みんながパーティ用の変装道具を使っているのはスルーしておこう。
「では、またお会いしましょう。」
レイナは微笑んだ。
〔ああ、またな!! 〕
エルムは馬を貰って、帰途に着いた。みんな、門の上から手を振っていたのは嬉しかったな。
さて、一度エルムが戻ったら今度はドワトランだ。
紹介状も馬と一緒に受け取ったし、問題無いな。
疎らに草が生えた平原を馬は力強く駆けて行った。
トラルドはまた後で出てきます。
今は長居すると面倒になりそうなので、逃げました。主人公がちょっとヘタレになり過ぎてるような気が(^^;;
お読みいただきありがとうございました。
追伸 : 近々、新しく小説を投稿したいと思います。
ほぼ気分転換の様な、モヤモヤがエクスプロージョンする様な、爆裂教に入信する様な、ツッコミどころ満載の小説ですが、宜しくお願い致します。




