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012 事情聴取

意気込んで言ったのは良いが、どうしようか。


とりあえず、エルラが重傷を負った経緯をエルムと本人から詳しく聞いた。

助けるだけでいいと決めつけて、どんな攻撃でそうなったかを聞いていなかった。

まさか後々重要になってくるとは……


2人の話では黒い靄ような攻撃らしい。

不意を突かれ、相手の姿は見ていないそうだ。

その情報を頼りに、代行者が関連情報を引き出してきた。

代行者マジ有能。やっぱり性格って環境次第なのかな?

あの女神とは正直ノルマが終わったら関わりたくないが、代行者の印象は良くなってきたぞ。


【闇の精霊が変異した霊法の一種ですね。】


闇の精霊か。精霊って精神体みたいなイメージがあるけど、なんで契約の実が有効なんだ?


【この場合、身体に取り憑き外部から継続的に心身を攻撃してきます。そしてそれは代行者の信仰強化による加護で弾くことができます。】


加護か…霊法は霊法でも精霊っていうより呪いに近いのかな?

となると、やはりレイナさんには契約の実しかないのか。

そう言えば、エルラと違って意識ははっきりしているようだ。

治癒の実で、全快とまで行かなくてもかなり回復している。


意識をそのままにしているのは、病死に見せかけるためか?理由がよくわからない。

でも、隠蔽しようにも魔力で個人が特定できるなら偽装しても意味がないんじゃ?……うん?霊法なのに|魔(•)力?


代行者、何故霊法なのに魔力が出てきた?そこは流れからして霊力じゃないか?


【精霊は霊素の塊であり、一般的に背後には行使者が精霊に働きかける魔力が存在します。この時、霊素に直接働きかけない理由は、人間にとって霊素より魔素の方が身近であり、行使が容易だからです。又、人間が霊力を会得するには特別な訓練を行う必要があります。最後に誤解を訂正すると、魔力の精細な判別は代行者だからこそできることです。】


へー、そういう仕組みか。最後になんとなく、代行者のプライドを感じたな。あれか、ファンタジー版DNA鑑定か。

もうツッコむ気も失せるな。色々反則だな。


それにしても、闇の精霊か。使って来た時どう対抗したもんか。

魔法で吹き飛ばせばいいのか?


〔ヘリス様。精霊が相手とわかったならば、対処できます。〕

おお、自信満々だな。よし、エルムがそう言うんだし任せるか。エルムの力もっと見たいし。

〔では任せる。〕

〔はっ。〕


よし、相手の能力は一応わかった。


あとは……突然現れた俺達が犯人を示したところで胡散臭い事この上ないってとこか。

でも、このまま何もしないわけにもいかない。

見殺しになんて絶対したくないし、レイナさんや人間と仲良くなりたいからな。


それにしてもレイナさんを狙ってくる者か…

組織的な暗殺かどうかはわからないが、一応複数人で動いていると思った方が良さそうだな。

人の命が危険に曝されているのだから杞憂に終わるぐらいが丁度良いだろう。

騎士の中に暗殺者がいるのはわかったが、これだけ大きな家ならばいるであろう使用人も注意すべきだろうな。


信用出来そうなのは、レイナさんとレイナさんと…レイナ……さんと?

まずいな、前世の人生経験が足りなさすぎて人を見る目に自信がない。でもレイナさんの両親ぐらいなら信用できるかな?ハルドは……入れても良いかもしれないが、難しいな。


〔まあいいや。ハルド達が帰ってくるのは何日か後だろうし、まずは決定事項から進めていこうか。〕


レイナさんに契約の実の説明をした。

こちらからあれこれ押し付けたくない。レイナさんの自由にして良いが、彼女は一体どんな内容にするのだろうか?


「……貴方達゛ど御友達゛に゛な゛り゛だい゛。」

……えーっと?ちょっと予想外。

〔代行者、こんなことでもいいのか?〕

【個体名ヘリスが承諾し、両者の意思確認ができれば問題ありません。】

てっきり、情報提供や街の案内の提案とか限定的な内容がくると思ってたんだけどな。

でも…なるほど友達か。少しでもいいから交流を持てば良いなと考えていたので、願っても無い話だな。


早速、契約の実を行使した。

うん、正に聡明な女性というイメージを体現しているな。

艶やかな紺色の髪の毛が美しい。

契約の実を使うのは2回目だが、相変わらず変わり様が半端無いのはなんでだろうな?

エルフの男性は雄々しく、女性は種族問わず女としての特徴に磨きがかかるのは俺の願ぼゲフンゲフン。

いや本当に心当たりがないな。


「助けて頂きありがとうございます、エルム様。そしてヘリス様は聴いておられるのですね?」


〔ああ、聴いている。〕


「改めて、助けて頂きありがとうございます。」


〔どう致しまして。〕

あ、ナチュラルに意思伝達を使ってた。レイナさんも使える様になったのか。

気になるからレイナさんのステータスも確認しとくか。


【戦いに参加しない女性のを覗くんですか?】

………待て、それは語弊がある。言い方が駄目だ。

【覗くんですか?】

止めなさい。

【覗きですか?】

止めろぉぉぉぉぉおおお!!

【で、どうしますか?】

はい、もうする気はありません。

なんでだろう、なんか悔しい。

別に卑しい事は考えてなかったんだ。本当だよ?


それはさて置き、レイナさんに暗殺者の話をした。

味方に紛れ込んでいるという話も。

うん、切り替えって大事だよな。


「そうですか…では、母やマリアに伝える必要がありますね。」

〔そこなんだよな。〕

「そこ、とは?」

〔どこまで信用できる人がいるのかということだ。必ず信用できる、と思える人に協力を仰がないと暗殺者を取り逃がしてしまうかと。〕

「ああ、そういうことですか。それはハルドとマリアと母ならば安心です。」


うーむ、不安だが……前世でサスペンスを見過ぎたかな?

まあ、ここはその人達と親交があるレイナさんの言う通り、ハルドとマリアさんとお母さんに……あれ?

〔レイナさん〕

「レイナと呼んで下さい。」

〔わかった。レイナのお父さんはこちらにいらっしゃらない?〕

すると、レイナは俯き暗い顔になった。

〔す、すまん。思い出したくない事だったか?〕

レイナははっと顔を上げ、凄い勢いで首を振った。

「い、いえ。そんなことはありません。ただ…」

レイナは再び俯き、視線を左下に向けた。

〔ただ?〕

逡巡しつつも口を開く。

「…実は私の家は首都のトラルにあって、父は立場上、私事で離れることが出来ないのです。」

………地方領主とかだと思ってたら中枢のお偉いさんかよ。あと、トラルドの首都がトラルって……

「で、でも気軽に話して下さい。」

〔わかった。〕

どうやら身分の高さからか、なかなか気軽に話せる人がいない様だ。

距離を置かれるのが怖かった、と言ったところか?

心配性だな、友達になろうって言ってくれた人を遠ざけたりする訳無いのにな。

【心配性というならば個体名ヘリスの方が数段上ですね。】

あー耳が痛いな。


〔じゃあ普通に話そう。この家は借家?〕

「いいえ、ここは父の所有する別荘です。」

ひぇー、別荘とか初めて見た。別荘でも迷いそうな豪邸なのに、首都の家は一体どうなってるのやら。


急いでたからスルーしてたけど、廊下が赤いカーペットだったよな。あれの上でエルムが散々暴れたけど、いくらするんだろうか?


話が逸れた。

〔レイナはこの別荘に来てから具合が悪くなったのか?〕

「いいえ。来る前から体調がすぐれなくて、休養としてこの別荘に来た次第です。」

ふーん、来る前ね。

〔いつから滞在してるんだ?〕

「数週間前からです。体調が本格的に悪くなったのもその頃で…」

随分長いな。


〔色々手を尽くしてみたけど駄目だったらしいな?〕

「はいそうです。実は首都にいる間は名医がいて、その方のお世話になっていたのです。

でもなかなか治らないので、精神的なものではないかと叔父に言われ、ここに。」


ほー、なるほど。

首都から別荘に来て悪化したということは、その医者の治療は効いてたって事か。

それでも治らなかったのはおそらく、


【治る度に、霊法が弱まる度に霊法をかけ直されていたということですね。霊法の攻撃にそれとは知らず対抗できるとは、凄腕ですね。】


……いい所持っていくな。


切り替えていこう。

〔その医者はここに来たのか?〕

「はい。来られましたが、その時にはもう手に負えないぐらい酷くなっていたらしいのです。でも、急変した時の治療や呼吸補助魔法道具を用意して下さって、延命できたのはあの方のおかげです。」


なるほど、その医者が居なかったらハルドと話す前に全て終わっていたかもな。


今の話で、叔父がここに来るよう言った事が気になるのはドラマの見過ぎか。

凄腕の医者にも会ってみたいが、まずはマリアとレイナのお母さんに話をしよう。


〔マリアさんはいつ来ると思う?〕


「マリアは寝る前にもう一度様子を見に来ると思います。」


〔そうか。〕


なら、その時に打ち明けて、詳しい話は明日だな。

レイナに椅子をすすめられたので、座りながらマリアさんを待った。



お読みいただきありがとうございました。

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