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魔女っ子ルナちゃん、大失敗!

 私、ルナ! 魔法の国から留学中の魔女見習い!


 人間界の常識を学ぶために、今は小学四年生として人間の子たちと同じ学校に通っているんだ。


 ちなみに魔女見習いの留学は正式なものなので、皆は私が魔法を使えると知っている。


 私たち魔女見習いは魔法で悲劇を生まないために人の反応を見ながら、いい使い方と悪い使い方を学んでいくんだ。


 と言っても周りに迷惑をかけないように、基本的な常識は魔法の国でたくさん勉強してきた。


 世間にはわざと人を苦しめる悪い魔女もいるけど、私は断然人を喜ばせるほうが好き!


 だって自分の魔法で人が笑顔になってくれると嬉しいし、私もたくさん褒めてもらえるもん!


 だから今度の授業参観でも、保護者の人たちを喜ばせてあげようと、クラスの皆とサプライズを計画していた。


 それは皆のお父さんやお母さんを、魔法で十歳若返らせること!


 子どもは親の若い頃の姿に興味があるし、若返って嫌がる大人はいない。


 皆に話したら「それいい! 絶対やって!」と大賛成だった。


 授業参観当日。


 算数の授業を半分くらい終えた頃。学級委員の子がビシッと手を挙げる。


「先生! 実は僕たちとルナちゃんから、お父さんとお母さんにサプライズがあります!」

「サ、サプライズ?」


 黒板の前で目を丸くする先生が我に返って反対する前に、今度は別の女の子が私に声をかける。


「ルナちゃん、やっちゃって!」


『後で怒られてもいいから、やっちゃおう』と皆で事前に決めていた。


 私はその指示に従って、


「この教室内の大人たちの時よ、十年戻れ!」


 と時戻しの魔法をかけた。


 先端に星がついた可愛いステッキからキラキラした光が出て、教室の後ろに並んでいた大人たちと、ついでに先生にも魔法がかかる。


 十歳若返った大人たちの姿に、皆は「わぁ~っ」と歓声を上げた。


「ママ、綺麗!」

「お父さん、カッコいい!」


 喜んでいるのは子どもたちだけじゃない。


「何これ、魔法で十歳若返ったってこと?」

「スタイルも当時に戻っている!」

「やだ、嬉しい~」


 特にお母さんたちが嬉しそうに言い合っていたけど、お父さんたちも喜んでいた。


 やっぱり子どもがいるような年齢で、若返って喜ばない人なんていないよね!


 大人にも子どもにも喜んでもらえて良かったと嬉しくなったのも束の間。


「嫌ァァ! お願い! 元に戻して!」


 あるお母さんがいきなり叫び出して、教室中がギョッとした。


「マ、ママ? どうしたの?」


 戸惑い顔で尋ねたのは、私といちばん仲良しのトモちゃんだ。


 しかしトモちゃんは若返ったお母さんの姿を見て、すぐにハッとすると、


「ルナちゃん! 早くママを元に戻して!」


 と私に頼んだ。


 私は意味が分からないまでも、すぐにトモちゃんのママに『時進め』の魔法をかけた。


 友ちゃんのママは二十代の姿から三十代のおばちゃんに戻った。


 それなのにトモちゃんは声を荒げて私に問う。


「ルナちゃん! お腹は!? どうして元通りじゃないの!?」


 トモちゃんのママは確かに魔法をかける前は、お腹だけちょっと出ていた。


 でも時戻しの魔法によって一度十年前の状態にリセット。


 そこから『時進め』の魔法をかけても、変わるのは年齢だけ。


 時を戻される前にあった怪我や脂肪など、成長したからって必ずしもつくとは限らないものは消えてしまう。


 でも記憶がなくなったら困るけど、怪我やぜい肉なら無いほうがよくない?


「お腹を戻したいの? スッキリしていたほうがよくない?」

「よくない! 早く戻して!」


 トモちゃんが必死なので、素直にお母さんのお腹を戻してあげる。


 元の体型に戻ったトモちゃんのお母さんは、涙目で微笑みながら膨らんだお腹を大事そうに抱えた。


「ああ、よかった! お腹が戻った!」

「ありがとう! ルナちゃん!」


 お腹に脂肪がついて喜ぶなんて変なの。


 魔法の国と人間界の価値観って、そんなに変わらないと思っていたけど、やっぱり細かい違いがあるんだな。


 立派な魔女になるために留学が必要なわけだなぁと、私はこの制度に納得した。




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■ 解説■

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 ルナの時戻しの魔法によって、トモちゃんママのお腹の膨らみは消えてしまった。


 しかし作中でもルナが不思議がっていたように、お腹に脂肪をつけたがる女性は珍しい。


 ましてや本人だけでなく子どもまでもが「ママのお腹(の脂肪)を戻して!」と必死に頼むとは考えにくい。


 そして最後に膨らみが戻ったお腹を「ああ、よかった!」と大事そうに抱えるトモちゃんママの仕草。


 大人ならまず気付くだろう。トモちゃんママは妊娠していたのだ。


 しかしルナは直後の独白で、こう言っている。


 ――お腹に脂肪がついて喜ぶなんて変なの。


 自分が胎児を消してしまったと気付いていないルナは、ただ脂肪でお腹を膨らませただけ。


 その後、自分の失敗に気付いても、時戻しによって消えてしまったものは戻らない。


 母子にとっても悲劇だが、ルナにとっても魔法で人の命を奪ってしまったことは、永遠に消えないトラウマになるだろう。

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