違法スペア・後編|全ては丸く収まった
蒼白になって固まる俺に、親友は急に噴き出す。
「アハハハハッ! 自分から仕掛けたくせに、逆に引っかかってやんの!」
「えっ? ど、どういうこと?」
戸惑う俺に、親友はネタばらしする。
「『本当は俺がスペアかも』って疑って鎌をかけたんだろ? だとしても、よりにもよって男同士で付き合っていたなんて嘘をつくかね?」
「ああ~、笑いすぎて腹が痛ぇ~」と、親友は両手で腹を押さえた。
「つまり分かっていて引っかかったフリをしたのか!?」
弄ばれて憤る俺に、親友はムカつくキュルン顔で言う。
「演技じゃなくて本心だよ? 俺もずっと好きだった」
「裏声やめろ!」
恥ずかしさのあまり真っ赤になって怒鳴る俺に、親友はサラッと話を戻す。
「まぁ、マジレスするとスペアって外見的にはそっくりでも、実際は本物と同じ年数を生きてないから内臓が妙に若いとかで、解剖すりゃ分かるらしいぞ」
加えて親友が言うには、コイツを襲った違法スペアの左胸には、所有者の名前のタトゥーがあったらしい。
だから返り討ちにされて死んだほうがスペアで間違いないようだ。
確かな証拠を提示されて、俺は心から納得した。
「……そっか。じゃあ、お前は本当にお前なんだ」
「安心したか?」
「した。けど友達なのに分からなくてゴメン」
中学からずっと一緒の親友が本物かも分からないなんて。
もし自分が疑われた側なら、きっと傷ついただろうと謝る俺を、親友はニッコリと許す。
「いいって。おかげで可愛い恋人ができたし」
「恋人って?」
親友は笑いながら俺を指差した。
「俺が悪かったから、いい加減、擦るのやめろ」
ちなみに後日、警察の捜査により違法スペアの所有者が見つかった。
勝手に親友のスペアを作ったその人物は、隣のクラスのヤツが目撃したとおりの風体だったらしい。
しかし事件の前に、違法スペアに殺されていたそうだ。
クローンだって勝手に作られて、奴隷か玩具のように扱われちゃ、所有者を憎んでも仕方ない。
とにかく違法スペアの件は、完全に解決したみたいでよかった。
ところで俺には、もう一つ気になることがあった。
「そういや、お前が本物なら、あの子が俺を好きだったって言うのも本当なのか?」
無事に親友が退院した後、下校中に尋ねる。
「何? 気になるの?」
「そりゃ気になるだろ……」
コイツと違って俺は今まで女の子にモテた試しがない。
だからあの謎の絡みが、実はコイツではなく、俺と近づくためだったのかと気になった。
しかし親友は俺の質問には答えず、逆に尋ね返す。
「もし告白されたら付き合った?」
「どうかな……でもまぁ、すごく嬉しかっただろうとは思う」
「じゃあ、良かったな」
「何が?」
首を傾げる俺に、親友は天を指しながら、にこやかに答える。
「あの子が。もう叶わないとしても好きな人が自分の気持ちを喜んでくれたら嬉しいんじゃないかなって」
「そうかな? そうだといいけど」
クラスメイトとして、あの子の葬式には行ったけど、それだけじゃ足りない気がする。
今度あの子の友達に聞いて、コイツと墓参りにでも行こうかな。
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■ 解説■
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違法スペアに殺されかけた親友。
語り手はもしや本物の親友は殺されていて、目の前の男がスペアなのではないかと疑う。
しかしスペアは外見は同じでも、解剖すれば内臓などの様子から本物と区別できるという。
加えて親友の違法スペアの左胸には、所有者の名前のタトゥーがあったそうだ。
ところで作中には服装に関する描写はないが、皆さんは違法スペアの外見をどのように想像しただろう?
少なくとも胸が見えるような服装ではなかったのではないだろうか?
仮に作中の季節が夏でも、海やプールでもないのに胸部を露出するような格好は、日本ではかなり稀だ。
語り手と話したのは事件の翌日で、親友自身もニュースで報道された以上のことは知らないはず。
それなのに親友は見えるはずのないタトゥーを知っていた。
それは親友が襲撃される前に、自分の違法スペアと会っていたから。
自分のクローンを見つけた親友は「ある人物を殺してくれたら、代わりに自分の人生をやる」と違法スペアに話を持ちかけた。
そのある人物とは事件当時、不自然に親友の家にいたクラスの女子。
動機は自分から語り手を奪おうとしたから。
「皆に隠れて付き合っていた」という語り手の嘘をしつこく弄ったのは、それが親友の密かな願望だから。
話の最後で、もしその子に告白されたら付き合ったかと問われて「嬉しかったと思う」と答えた語り手に、
「じゃあ、良かったな」
と親友が言ったのは「じゃあ、(きっとお前はその子と付き合っただろうから殺して)良かったな」という意味。
親友は違法スペアを利用して、恋敵と自分のクローン、そして勝手に自分の複製を作った所有者の全てを一掃したのだ。




