↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/53

余命占い|俺の数値が明らかにバグっている件

 現在二十三歳の俺は、近々同世代の友人二人と、世界旅行する計画を立てている。


 俺たちは全員フリーターなので、そのうち家庭や定職を持って身動きが取りにくくなる前に、一度世界を見て来ようって話になったのだ。


 気心知れた友人たちと長期間の貧乏旅行をするなんて絶対に楽しい!


 ……と計画時はノリノリだったのだが、結構危険な地域にも行くので今さら不安になってきた。


 事故や事件に巻き込まれずに、無事に帰国できるか分かる方法はないかな?


 なんて考えていたら、たまたまネットで『余命占い』なるものを見つけた。


 プライバシーに配慮してか、入力する個人情報は生年月日と性別のみ。


 後はランダムに出題される五つの質問に『はい』か『いいえ』で答えるだけで余命が分かるらしい。


 しかもありがたいことに無料だった。


 ネットの占いなんかで本当に余命が分かるわけないけど、ちょっと面白そうだな。


 せっかくだから一緒に旅行する予定の友人たちを誘ってやってみるか。


 次に友人たちと会った時に早速『余命占い』を勧めてみる。


 ノリのいいヤツらなのでサクサク入力してくれた。


「えっ!? 俺、五十二歳で死ぬの!? 早くね!?」


 俺の携帯の画面にも友人と同様大きく『五十二』と表示されている。


 解説とかはなく、数字だけ出る超シンプル占いのようだ。


「違う違う。寿命じゃなくて余命だから、後五十二年の命って意味だよ」


 誤解している友人に教えてやると、彼はホッとした顔で言う。


「じゃあ、七十五歳までは生きられる計算か。ちょっと短い気もするけど、まぁ、そんくらいか」


 俺と全く同じ結果なのもあり、納得したようだ。


 ちなみにもう一人の友人は、


「俺はお前らより三年長生きできるだけだわ」


 と『五十五』と表示された画面を俺たちに見せた。


 奇(く)しくも皆同じくらいの余命だ。


 ネットの占いとはいえ、極端に余命が短いヤツがいたら気の毒だから良かったな。


 俺は結構真に受けるほうなので、全員五十年以上の余命があるなら今回の旅行は無事に済みそうかなと密かに安心した。


 ところが旅行を目前にして、なんと俺に彼女ができた。これまでは女っ気ゼロだったので人生初の彼女である。


「で、男同士の友情よりもポッと出の彼女を優先すると?」


 空港に見送りにきた俺に、友人Аは白い目を向けた。


「悪いとは思っているよ。でも付き合ったばかりの彼女を、一年近くも放置するのはマズいだろ?」


 ゴニョゴニョと言い訳する俺に、友人Bはからかいの笑みで言う。


「まぁ、許してやろうぜ。コイツは俺らの中でいちばんモテないし、この機会を逃したら一生結婚できないかも」

「そうだよ! だから土壇場(どたんば)で行けなくなってゴメンな!」


 勢いよく謝ると、友人たちは俺を仲間外れにするかのように肩を組んで宣言する。


「いいけど、二人きりで世界を旅する俺たちの友情は次のステージに行くからな!」

「次に会った時、話について来られなくても知らねぇぞ!」


 そんな冗談を最後に二人は出国した。


 三日後。男の友情を裏切って、日本に残った俺は彼女とのカフェデートを満喫していた。


 その話題の一つとして、余命占いの話をする。


「へぇ~、余命占いなんてあるんだ? 私もやってみようかな?」


 もしかしたら怖がるかと思ったけど、彼女はノリノリで余命占いをした。


「見て! 私の余命八十三年だって。百歳超えだよ、すごくない!?」

「すげぇ。俺なんて余命五十年くらいだったよ」


 てっきりもっと喜ぶかと思いきや、俺の余命を聞いた彼女は「えっ」とショックを受ける。


「そんなのやだ。私だけ長生きなんて悲しい。もう一回やってみて? このランダムな質問の答えが違えば、もっと余命が伸びるかもだし」

「確かに。じゃあ、もう一回やってみるわ」


 前とは一部違う質問に、正直に答えた結果。


「九千百二十五年!?」


 桁違いの数字に驚く俺に、彼女も目を丸くしてツッコむ。


「いきなり余命伸びすぎ! というか、人類には無理でしょ!? 途中で不老不死にでもなった!?」


 厳密にはいつか死ぬなら不老不死ではないが、確かにとんでもない数字だ。


 なんかバグったのかな? まぁ、彼女と盛り上がれたからいいけど。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 解説■

━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 データを入力すると、画面に数字だけが表れて余命が分かるという占い。


 語り手たちは二桁の数字を見て自然と『年』という単位を当てはめた。


 ところが物語のラスト、世界旅行をやめて日本に残った語り手が再度占うと、今度は『九千百二十五』というあり得ない数値が出た。


 しかし、もしこの結果が正しいなら、人が九千年以上生きることなどありえないのだから、『数値』ではなく『単位』が間違っていたことになる。


 つまり数字に対する実際の単位は『年』ではなく『日』だった。


 だとすると世界旅行中の友人たちや今付き合っている彼女は、近く亡くなることになる。


 語り手の余命が変わったのは、友人たちと世界旅行に行くのをやめたから。


 ただし語り手の余命も変換すると、二十五年と決して長くはない。


 それは親友たちや人生で初めての彼女を相次いで亡くすという大きな痛手のせいである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。