ミスは誰にでもあるから|リカバリー上手な病院
先日、私は四十歳にして初めて手術することになった。
私は極度の痛がりかつ怖がりなので、とても不安だったけど、家族や友人に励まされながら、なんとか手術を乗り越えた。
しかし後は退院の許可が出るのを待つだけかと思いきや――
「えっ? また手術するんですか?」
お医者さんによると、術後の検査で別の病気が見つかったらしい。
その位置はちょうど前回の手術で切った部分だった。
確かにその辺りに痛みや異物感があったけど、手術で切ったせいかと思っていた。
でも実際は手術でできた一時的な傷とかじゃなくて、別の病気だったのか。
「それは前回の手術で見つけることはできなかったんですか……?」
お腹を開いた時に見つけて、ついでに処置してくれれば良かったのに。
つい恨み言を言ってしまう私に、お医者さんは、
「おっしゃるとおり、見えづらい位置にあったとはいえ異常を見落としてしまったのは、こちらのミスです。本当に申し訳ありません」
と低姿勢で非を認めると「今回の費用はこちらで持ちますので、もう一度手術させていただけませんか?」と改めて頼んだ。
あっ、いちおう病院側のミスってことで、費用は負担してくれるんだ?
お金の面も気がかりだったので、無料で済むことに少しホッとする。
でも自分の健康のためとはいえ、二回も手術を受けるなんて割に合わないので、
「人間ですからミスがあるのは仕方ないですけど、こちらも二度も手術するのは負担なので、もう少しだけ割り引いてもらうわけには……?」
ダメもとで申し出ると、さらに入院費を少し安くしてもらえることになった。やったね!
後日、二度目の手術は無事に成功した。
私もだけど、お医者さんたちも今度こそミスなく終えられてホッとした様子だった。
ミスと言えば看護師さんたちが、病院の廊下でこんな立ち話をしていた。
「あっ、じゃあ、うっかり置き忘れたかもって言っていた器具、ちゃんと見つかったのね」
「バレたら大変でしたから、大事になる前に回収できて良かったですね」
若い看護師さんの言葉に、ベテランの看護師さんは優しい声で返す。
「これもミスを隠さずに、すぐに周りに相談したおかげね。あなたも何かあったら、隠さないで周りに言うのよ。そうすれば皆でカバーできるから」
「はい、先輩」
命を預かる現場でも人間だし、やっぱり小さなミスは出ちゃうんだな。
でも、この病院はミスを隠さないで周りと協力し、適切に対処する体制ができているみたいだ。
私の担当医も自分の非を認めて誠実に対応してくれたし、クリーンでいい病院だな。
次に私や家族が大きな病気をした時も、ここで診てもらおう。
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■ 解説■
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病院側のミスによって再手術になった語り手は、術後に看護師の立ち話を聞く。
どうやら何かの器具を『どこか』に置き忘れたらしいが、バレる前に回収できたらしい。
しかしこの『バレたら大変』な相手は誰を指すのか?
病院関係者はこの事態を知っているのだから、身内以外への露見を恐れていることになる。
けれど普通なら器具の置き忘れくらいで外部の人間が騒ぐことはない。
そもそも病院内で起きた器具の紛失を、外部の人間が知る機会もないはずだ。
ただし置き忘れた場所が『患者の体内』なら話は別である。
語り手が術後に感じていた痛みや異物感は、別の病気ではなく医者が置き忘れた手術用の器具だった。
語り手は病院側の見事な連携により、重大なミスを誤魔化されてしまった。




