全てルールどおり|彼らが助からなかった理由
突然だけど、デスゲームって面白いよな。
決められたルールを破ったら死ぬみたいなヤツ。
主人公の機転にも感心するが、馬鹿があからさまな罠に引っかかって死ぬのも痛快だ。
まぁ、いざ自分がそういう目にあったら、ちっとも笑えなかったけど。
「俺はある人物から、お前たちの処刑を依頼された殺し屋だ。罪状は高校の同級生をイジメて死に追いやったこと」
俺たちを誘拐したおっさんは分厚いガラス越しに部屋の外から、そう告げた。
「はっ!? 俺たちはイジメなんてしてねぇよ! アイツは勝手に死んだんだ!」
咄嗟に否定したが、おっさんによるとアイツの遺書にイジメのことが書いてあったそうだ。
「そ、そんな証拠があるなら、どうして警察に言わなかったんだよ……」
たじろぐ俺たちに、おっさんは笑いながら言う。
「警察に言ってどうなる? お前たちの経歴に多少の泥を塗ったところで彼は帰ってこない。依頼人が望むのはお前たちの死だ。そのためにはあちらも、イジメの事実など公にしないほうがいいのさ」
「つ、つまりアイツの身内が俺たちを殺せって頼んだのか?」
「そんな! アイツが勝手に死んだのが悪いのに!」
口々に叫ぶ俺たちに、おっさんは白い目で話を続ける。
「もう結果は見えたようなものだが、一応チャンスはやろう。『彼を死に追いやったことを、心から反省した者だけは助けてやる』」
さらにおっさんはその確認方法として、今俺たちがいる部屋の真ん中にある酸素カプセルみたいな装置に、誰か一人入るように指示した。
「そ、そのカプセルに入ると、どうなるんだ?」
「カプセルに入った者は毒ガスを注入されて死ぬ」
「そ、そんな!」
ショックを受ける俺たちに、おっさんは容赦なく追い打ちをかける。
「だがカプセルに誰も入らないまま制限時間を過ぎれば、毒ガスは部屋全体に注入される」
「つ、つまりカプセルに誰か入らないと全員死ぬってことか!?」
「制限時間は十分だ。さぁ、最も悪いのは誰か話し合え」
おっさんの宣告と同時に、部屋の上部にあるデカいタイマーがピッと作動する。
「お、俺は絶対にカプセルには入らないぞ! だいたい俺はいつも後ろから冷やかすだけで、直接手を出したことはないし!」
「はぁっ!? 手を出したことはないって! もっとこうしろ、ああしろって、面白がって煽っていただろ!?」
しばらくは仲間同士で誰が悪いと言い合っていたが、ふとそのうちの一人が呟く。
「……でも多分アイツが死んだのって、アレが原因じゃね?」
ソイツの言う『アレ』とは、俺が提案したいつもと違う趣向の遊び。
俺たちがよく行く公園に、五歳くらいのガキがしょっちゅう一人でいた。
見るからに汚らしく頭が悪そうなガキが以前から目障りだったので、アイツに蹴飛ばせと命じたのだ。
「あのガキを思い切り蹴飛ばしたら、もうお前をイジメないでやるよ」と。
アイツは最初嫌がっていたが「じゃあ、テメェがボコられてぇのか」と脅したら、言われたとおりにガキを蹴飛ばした。
まぁ、結局イジメはやめなかったどころか「保身のためにガキを蹴飛ばすようなクズに、人間扱いされる資格はねぇんだよ!」と、いたぶる理由にしたのだが。
「べ、別にアレのせいとは限らないだろ!」
「いや、絶対にアレのせいだって! アイツが死んだのって、そのすぐ後だし!」
「でもお前らだって一緒になって、アイツをイジメていただろ!? 俺だけが悪いんじゃない!」
俺は懸命に抵抗したが、
「残り三分しかないぞ! もうソイツを無理やりカプセルに突っ込もうぜ!」
「ちょっ! ふざけんな! やめろよ!」
と三人がかりで強引にカプセルへ入れられた。
中からは開けられない仕組みらしく、やがておっさんの言うとおり、ガスが充満した。
嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない。
でもずっと息を止めているなんて不可能で、俺はすぐに意識を飛ばした。
けれど、しばらくして――
「目が覚めたか?」
声に目を開けると、おっさんが俺を見下ろしていた。
「お、俺は死んだはずじゃ」
「周りを見てみろ」
おっさんに言われてカプセルから起きると、辺りには仲間が苦悶の表情で倒れていた。
どうして俺じゃなくてコイツらが死んだんだ?
驚く俺に、おっさんはこう告げる。
「最初に言ったはずだ。助かるのは心から反省した者だけだと」
そうか。コイツらは俺を無理やりカプセルに突っ込んだだけで、自分が悪かったなんて一言も言ってない。
仲間一人を犠牲にして自分たちだけ助かりたいなんて反省していない証拠だ。
だからカプセルに入れられた俺だけが、逆に助かったんだ。
意外な結末に、俺は思わず笑いながら叫ぶ。
「自分だって悪かったくせに、平気で人のせいにするようなヤツだからこうなるんだよ! ザマァみろ!」
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■ 解説■
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殺し屋は二度も言っている。
「助かるのは被害者を死に追いやったことを、心から反省した者だけだ」と。
またカプセルと毒ガスは上記の条件をクリアしたか確かめる方法だとも言った。
けれど少年たちは「自分が悪かった」とは一言も言わないまま、仲間に罪を押し付けて自分だけ助かろうとした。
その結果、無理やりカプセルに入れられた語り手だけが、実は催眠ガスで眠らされていただけで再び目覚められた。
一人生き残った語り手は助かったと勘違いして「ザマァみろ!」と仲間の死を嘲笑う。
自分もまだ一言も謝罪や反省を口にしていないことにも気付かずに。
結局、反省しなかった語り手は、すぐに仲間の後を追うことになる。




