宇宙人の見分け方|私がいちばん信じてなかった
それは久しぶりに会った学生時代の友人と行列のできるカフェに並んでいた時のこと。
「でね! 宇宙人は実在して密かに侵略を続けているんだよ! 日本の政治家のほとんどは、もう宇宙人と入れ替わっているんだって!」
興奮気味に語る私に、友人は半笑いで呟く。
「……まさか社会人になっても、その手の話題に夢中だとはね~」
眉唾扱いする友人に、私は強く反論する。
「いや、これはオカルトでも陰謀論でもなく本当の話なの! ある人が貼ってくれた画像で発覚したんだけど、人間に成り済ました宇宙人は共通してある仕草をするんだって!」
「ある仕草って?」
もう一人の友人の質問に、私はジェスチャーを交えながら説明する。
「なんかお茶とかコーヒーとか温かいものを飲む前に、カップに手をかざして三回円を描くような動きをするんだって! だからそれをするかしないかで、宇宙人かどうか分かるみたい!」
なんと有名な政治家のほとんどが、その仕草をしていたのだ。
その検証画像を見て、私は宇宙人の地球侵略は真実だと確信した。
「だから久しぶりに知人と会ったら、まず温かい飲み物を勧めて宇宙人かどうか判断するといいらしいよ!」
彼女たちの身の安全のために、今日は宇宙人の見分け方を絶対に教えたかったのだ。
ところが友人は呆れ顔でこう指摘する。
「ある人が貼った画像ってことはネットかなんかで見たんでしょ? そんなネットで騒がれるくらい有名になった癖、宇宙人だってそろそろやめているんじゃない?」
宇宙人の存在自体は否定しないでくれるの、逆にありがたいなと思いつつ、私はこう切り返す。
「でも習慣って咄嗟に出ちゃうものだし。それに、その仕草は宇宙人の習性的に絶対にしなきゃいけないという説もあって……」
「席空いたみたいだよ。続きは中に入ってから話そ」
店員さんの迷惑になるので、友人の言うとおり、まずは席に着いて注文することにした。
ところが頼んだ品を見て驚く。
「えっ、クリームソーダにしたの? こんなに寒いのに?」
「別にいいじゃん。外は寒かったけど、店の中は温かいし」
本人はそう言うけど、さっき店の外で並んでいた時には「寒い。早くココアでも飲んで温まりたい」と言っていたのだ。
それがいきなりクリームソーダに変わるなんてことある?
私の思考を読んだように、真冬にクリームソーダを頼んだ友人が釘を刺す。
「宇宙人だからではないからね?」
「わ、分かっているよ……」
「私、逆に宇宙人~」
そう言いながらもう一人の友人は、わざとミルクティーで例の仕草をして見せた。
「逆にって何よ!? 宇宙人は本当にいるんだから、舐めていると痛い目に遭うよ!?」
それから十分後。
「ねぇ、見て。あの人、なんかずっとこっちを見ている」
友人に言われて目を向けると、他のテーブルの客がこっちを凝視していた。
普通は見ているのがバレたら、すぐに目を逸らすだろう。ところがそのおばさんたちは、ジッとこっちを見続けている。
「本当だ。気持ち悪いね」
相手に聞こえないように、小声で言い合っていると、そのテーブルに注文したドリンクが届く。
グラスではなくカップなので、中を見なくてもホットドリンクだと分かった。
何気なくチラ見していると、おばさんたちはこちらに見せつけるように、不気味な笑みで例の仕草をしてみせた。
「えっ!? 今のって……」
私はギクッと肩を跳ねさせると、友人たちに「ど、どういう意味かな?」と意見を求めた。
友人たちも気味悪そうにしながら、
「『宇宙人です』ってことじゃない?」
と半信半疑で答えた。
さっきまで声高に「宇宙人はいる!」と主張しておいてなんだけど、本当は私も面白半分だったみたいだ。
今、実際にいるかもしれない可能性を目の当たりにして、すごく怖くなってしまった。
「ゴメン。もうお店を出たい。うちに帰りたい……」
久しぶりに会ったのに、もう家に帰るなんて友人からすれば迷惑だろう。
ところが実際は、
「大丈夫? 心配だから家まで送って行くよ」
と優しく気遣ってくれた。
「あ、ありがとう……」
私は友人たちに礼を言うと、家まで送ってもらうことにした。
帰り道、何度も後ろを振り返ったけど、さっきの不気味なおばさんたちは、ついて来ていないみたいでホッとした。
……けれど宇宙人の脅威は想像以上に、近くまで迫っていたようだ。
気付いた時には、もう手遅れだったけど。
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■ 解説■
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語り手が言うには『宇宙人には見分け方があり、久しぶりに会う人には温かい飲み物を勧めて判断したほうがいい』そうだ。
ところが語り手自身は久しぶりに会う友人たちに、その確認方法を十分に行っていない。
一人は「寒いから温かいものを飲みたい」という前言をひるがえして、真冬にクリームソーダを頼んでいるのに「宇宙人だからではないからね?」の一言で「わ、分かっているよ……」と流してしまった。
もう一人は実際にその仕草をしたにもかかわらず、ふざけた調子から冗談だと認識してしまっている。
そして語り手は友人たちに家まで送ってもらった後、宇宙人の脅威が近くまで迫っていたことに改めて気付いた。
しかし気付いた時には手遅れだったと後悔している。
カフェで会った不気味な客だけを警戒していた語り手は、自宅に戻ってから友人に成り済ましていた宇宙人たちに襲われたのだ。




