ドジっ娘OL 第六話。
つくし野のコンビニ。
ひなとのデートを終えた青木は、1人いつものコンビニで買い物をしていた。
「ビールにおつまみと、朝メシ用のおにぎり。あとは……。」
青木が雑誌コーナーの前を通りがかると、≪UOMO≫の春のデート服特集が目に止まった。
「春のデート服特集ね……。」
青木は小声で呟くと、ブルーのカゴに≪UOMO≫を入れレジへと向かった。
「1740円になります。」
青木が電子決済をする。
青と白の制服を着た店員が丁寧にお辞儀した。
ガチャ。キィー。
青木が大学時代から住むアパートのドアを開け、誰もいない真っ暗な部屋の明かりを点けた。
ステンカラーコートを脱ぎ、あぐらをかいて座ると、ガサゴソとコンビニの袋から≪からあげクン≫と≪一番搾り≫を取り出した。
≪一番搾り≫を開けると、プシュッという音と共に、勢い良く白い泡が弾ける。
「やっぱ、ビールは≪一番搾り≫やな。」
青木が≪一番搾り≫を口にすると、トゥルルとスマホから音がした。
スマホの画面には青木繁とある。
青木は画面を見ると、スマホを耳に当てた。
「純、元気か?」
スマホから父、繁の声が聞こえた。
「父さん。」
「純、そろそろお前も香川の実家に帰って家業の酒蔵を継いだらどないや?」
言葉に詰まり、うつむく青木。
青木は少し考え、天井を見つめると、繁に返事した。
「父さん、もうちょっと、こっちで頑張ってみようと思うねん。」
「そうか、その気になったら電話くれへんか?」
そういうと繁は通話を切った。
スマホを置き、青木は部屋の隅にあるアコースティックギターを手にした。
「ギターなんて、慶應出て以来やな。」
青木はそう呟くと、≪秦基博≫の≪アイ≫を弾き出した。
♪♪♪~。
ベランダの扉に取り付けられたネイビーのカーテン。
その隙間から漏れる月の光が青木を照らす。
ギターを弾き終わると、青木は無言でグビッと少し苦みのある≪一番搾り≫を飲み干した。
つくし野にある築20年程のひなの自宅。
ガレージには≪N-BOX≫が止まっている。
1階のお風呂の窓から明かりが見え、若い女性の声が聞こえた。
ひなが自宅のお風呂で体を洗っている。
ひなは体を洗い終わると、頭にピンク色のタオルを巻き、バシャという音と共に湯船につかった。
「ふぁ~、やっぱ、お風呂最高!!」
そう言うと、ひなは両手を上に伸ばし、湯船の中でう~んと背伸びした。
そして、ひなは子供の頃からご愛用の黄色いアヒルの人形を見つけると話しかけた。
「ねぇ、パカ~、ピアノどうしよう?」
ひながパカを指でツンツンとつつく。
ひなが湯船を出ると、パカと呼ばれたアヒルの人形が知らんがなと言わんばかりに、プカプカと静かに浮かんでいた。
ひなはお風呂から上がると、ピンク色のバスタオルを巻いたまま、冷蔵庫からキンキンに冷えた≪晴れ風≫と書かれた缶ビールを取り出した。
リビングのソファに座り、テレビを点ける。
缶ビールの蓋を開け、コプコプコプと≪晴れ風≫をコップに注ぐひな。
コップから白い泡があふれ出した。
「おっとぉ。もったいないーっ!!」
ひなが慌てて、口をコップに持っていく。
ひなの鼻の頭にビールの白い泡がついた。
鼻についた泡をティッシュで拭くと、ソファに深く腰かけ、テレビを見るひな。
テレビには最近、人気のお笑い芸人が映っていた。
「プハーッ。やっぱ、お風呂上がりの≪晴れ風≫とお笑いは最高!!」
≪晴れ風≫を飲み干すと、ひなはそのままソファで眠りこけた。
「ただいま。」
ひなの父が自宅に帰ると、リビングで楽しそうに夢を見ているひながいる。
「ムニャムニャ、青木さん……。」
1人ソファで眠りこける娘を見て、優しそうに微笑むと父が呟いた。
「何かいいことでもあったのかな?ひなちゃん、こんな所で寝てたら風邪引くぞ。」
ひなの父は娘にそっと優しく毛布を掛けた。
翌朝、春野家リビング。
しっかり風邪をひいた鼻声のひながいる。
「あ~風邪引いた~。へ、へ、へくしゅん!!」
ひなの頭のアホ毛がゴメンなさいとばかりに垂れ下がった。
第六話。 終わり。




