ドジっ娘OL 第五話。
桜の花咲く、つくし野のバス停。
満開の桜の下、ひなが1人ベンチに腰掛け、ニコニコと楽しそうにスマホをいじっている。
通勤途中の青木がひなを見つけ、声をかけた。
「春野さん、おはよう。何を楽しそうに見てるんですか?」
「あっ、青木さん、おはようございます。」
ひなが軽く頭を下げると、青木がひなのスマホをチラリと覗く。
「ああ、ランチが人気のお店ですね。僕も行ってみたかったんですよ。よければ、今度行ってみませんか?」
ひなの頭の中の小さなひなが狂喜乱舞する。
(ふぁぁ!?もしかして私、デートに誘われてる?)
ひなはアホ毛をピョンピョンと揺らすと、胸を高鳴らせた。
ひなの頬が鮮やかなピンク色に染まった。
ブロロロロ……と音を立て、つくし野のバス停にバスが着く。
先にバスに乗り込んだ青木がひなに声をかけた。
「春野さ~ん。バス出発しちゃいますよ。」
「あっ、はい!!」
ひなは慌ててバスに乗り込んだ。
後日、渋谷のレストラン。
ピンク色の花柄のワンピース。
目いっぱいのお洒落をしたひながいる。
「こちらが春の新作、桜のパフェになります。」
レストランの従業員がテーブルの上にパフェを置くと、ひなの目がキラキラと輝いた。
「美味しそう!!」
うっとりした顔で両手を胸の前で合わせると、ひながアホ毛をピョンピョンと揺らす。
ひなは満面の笑みでパフェを頬張った。
「うん、美味しい~!!桜の香りがする!!」
「春野さんに喜んでもらえて僕も嬉しいです。」
青木はそう言うと、ひなを包み込むように微笑んだ。
ひなが頬を桜色に染め、照れくさそうに下を向いた。
「あっ、あの……。」
ひなは顔を上げ、不器用ながらに青木に感謝の言葉を述べた。
「青木さん……その、ありがとうございました。」
2人はレストランを後にし、渋谷駅に向かった。
駅前に着いたひなと青木。
「あれっ、神崎先輩?隣の人……誰だろう?」
ひなは神崎と30半ばくらいの上質なスーツを着た男性がいるのを見つけた。
「向こうもデートかな?」
ひなはレストランの窓越しにテーブルを囲む2人を見つめた。
その様子を見ていた青木がひなに声をかける。
「春野さん、行きましょうか?バス、無くなっちゃいますよ。」
「ああっ、はい。」
ひなは神崎達を横目で見ながら青木と渋谷の駅へと向かった。
レストランの中で食事をする神崎と男性。
店員が2人にデザートを持って来た。
「当店自慢のチョコテリーヌになります。」
しばらく間を置くと、男性が神崎に声をかける。
「恵、ロンドンのエネルギー事業部への赴任が決まったよ。で、そろそろ俺、桐生雅也と結婚する気はないか?」
「……。」
食後のチョコテリーヌを食べる神崎の手が止まる。
神崎は黙ってうつむいた。
少し考え、桐生を見つめると、神崎は珍しく感情的に答えた。
「出来ないわ。私、昇進したの。」
桐生がふぅとため息をつくと、天井の豪華なシャンデリアを見上げ、ぶっきらぼうに呟いた。
「やれやれ、まったく不器用な女だ。」
「ごめんなさい、雅也さん……。」
神崎はただ申し訳なさそうに下を向いた。
満開の桜咲く、つくし野バス停に降り立つひなと青木。
ニコニコ顔のひなが青木に頭を下げる。
「青木さん、今日はご馳走様でした。楽しかったです。」
「また、食べに行きましょう。春野さん、好きな食べ物とかあります?」
青木が人差し指を顔に当て、照れくさそうに話した。
ひなの中の小さなひなが反応する。
(来た、来た、来たー!!)
「……オムライスかなぁ。トロッとした卵の。」
ひなは頬をピンク色に染めながら、人差し指を顔に当て、しらじらそうに答えた。
「じゃ、次はトロッとしたオムライスですね。」
青木が優しい口調でそう言うと、ひなの頭のアホ毛がピョンと立った。
「はいっ!!」
ひなは目を輝かせ、明るい笑顔で答えた。
第五話。 終わり。




