↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルド遺書課 〜最期の言葉を届ける者〜  作者: トリバード
白梟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/19

遺されたもの

 誰も動かなかった。


 沈黙だけが部屋を満たしている。


 やがて。


 エリアスは静かに一礼した。


「……このような折に恐縮ですが。」


 穏やかな声だった。


「規程に基づき、今後のお手続きについてご説明いたします。」


 グレンは何も言わない。


 ただ、小さく頷いた。


「ルーク・アスター様名義のギルド口座につきましては、所定の手続きを経た後、ご指定の相続人様へお引き継ぎいたします。」


「また、お預かりしております私物につきましても、後日改めてお届けいたします。」


 ミアは静かに手帳へ目を落とす。


 研修で学んだ文言だった。


 だが今、その一つ一つが違う重さを持って耳へ届く。


「現在、救助局が現地にて遺品の捜索を行っております。」


「発見されたものにつきましては、確認後、順次お届けいたします。」


 一つずつ。


 漏れがないように。


 確認するように。


 エリアスは言葉を重ねていく。


 そして最後に。


 胸元の封筒へ視線を落とした。


「こちらの遺書につきましては。」


「ご家族の皆様で、お読みください。」


 深く一礼する。


「本日のご説明は以上となります。」


 踵を返そうとした、その時だった。


「……待ってくれ。」


 グレンだった。


 先ほどまで怒鳴っていた男とは思えないほど、小さな声だった。


「さっきは……悪かった。」


 エリアスは振り返る。


 グレンは目を伏せたまま続ける。


「分かってる。」


「お前さんたちは悪くねぇ。」


「そんなことは、昔から分かってる。」


 一緒に育った友人。


 その時も。


 遺書課は何も悪くなかった。


 それでも。


 あの日も。


 今日も。


 怒りを向ける場所が見つからなかった。


 グレンは一度だけ息を吐く。


「……大変な仕事だな。」


 少しだけ笑う。


 泣き笑いのような、弱々しい笑顔だった。


「本当に、ありがとう。」


 エリアスは何も言わない。


 ただ静かに一礼する。


 それだけだった。


 リシェルも続く。


 ミアも深く頭を下げる。


 ダリウスたちも、何も言えないまま頭を下げた。


 六人は静かにアスター家を後にした。


 家を出ても、誰も口を開かなかった。


 ミアは一度だけ振り返る。


 閉じられた扉の向こうでは、きっと今、ルークの最後の言葉が読まれている。


 そう思うと、胸の奥が少しだけ苦しくなった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。