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魔王に攫われた公爵令嬢に、俺の理性が毎晩試されてます。~片思いを拗らせた俺が、婚約者だと明かせない理由~  作者: 雨屋飴時


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14-5 仮面の下の正体




 

 臙脂の槍が、じりじりと結界を焼いていた。


 両手を広げ、俺の前に立つ彼女の背に、5年前の光景が重なる。

 強力な結界をその身にかけているとはいえ、直撃すればただでは済まない。

 

「どけ! ダリア!」

  

 叫んだが、ダリアは退かない。

 小さく震えている肩。けれど、一歩も引かないその姿が、彼女の決意を感じさせた。

 

 くそ、と舌打ちする。

  

 ダリアは、死なせない。 

 けれど、俺も死ねない。


 ここで魔王を倒さなければ、ダリアはまた狙われる。

 魔王の手から、ダリアを守らなければ。

 

 何か打開点は?

 

 必死に魔王の隙を探す。

 

 違和感があるのは、外套の中に隠れたままの右手だ。

 戦いの最中でも、まだ一度も出していない。

 俺なんて片手で余裕ということか、それとも他に理由があるのか。

 

 他には――俺を狙う槍を見据え、ふと気づく。

 

 槍の進路が、ゆらいでる……?

 

 さっきまでと違い、その軌道はかなりぶれていた。


 まさか、ダリアが前にいるから躊躇してる?

 

 娘には攻撃しないでやる、と魔王は言っていた。

 だが、その実ダリアを攻撃したくないのは、魔王自身なんじゃないか。

 

 なんでだ……?

 

 隠された右手。

 ダリアを妙に気にしている様子。


 ちらりと、ある可能性が頭をよぎる。

 しかし、ゆっくり考えている暇はなかった。

 何はともあれ、この隙を狙うしかない。

 

 結界の隙間から、魔王を見る。

 仮面の顔では何も読み取れない。

 ただ、魔王が纏う魔力が迷うように乱れていた。

 

 今なら弾き飛ばせるか。


 結界の性質を変える。

 受け止めるのではなく――弾く。


 ぐぐ、と槍が食い込む。


 その反発を、そのまま返す。


 迫る槍の力を利用して、結界で弾き返した。


 魔力を手のひらへ貯めこみ、ばん、と合わせる。

 

「【衝撃波動ショックウェイブ】!」

 

 爆発音とともに放たれた、無色の衝撃波。

 

 槍は押し出され、先端から少しずつ砕かれ消滅する。

 爆風は、そのまま魔王を襲う。

 魔王は押し流され。背を壁に打ち付けた。

 轟音とともに、舞う風塵。

 

 やがて、訪れたのは静寂だった。

 

 ばたん、とダリアが膝を折る。


「ダリア!」

 

 ダリアの背を、腕で抱える。


「声が戻ったんだな、良かった。

 ってか、俺を庇うなんて何考えてんだよ。

 無茶すんな。頼むから……」

 

 ダリアを抱きしめる手が、震えていた。

 腕に伝わる彼女の体温が、打ち鳴っていた心臓を落ち着かせてくれる。

 

 しかし、ダリアは青い顔で首を振った。


「だって……これは……これはわたしが始めたことだから……っ」

 

「え?

 どういうことだよ。

 何言ってるか全然……」

 

 言いかけたその時、瓦礫を跳ね除ける音が響いた。


 俺はダリアを庇いながら、瓦礫の山を見据える。

 風塵の奥から、臙脂の外套を纏った影が立ち上がる。


 仮面が、こちらを向いていた。


「まだやるのか……」

「ごめんなさい、ごめんなさいルーク……」

「何でダリアが謝るんだよ。

 いいから、話は後だ」

 

 しがみついてくるダリアをなだめ、魔王に視線を向ける。

 しかし、魔王は俺を、見ていない。

 ダリアを、見てる?

 

 そして――


「 ダリア様ぁああああ!!」

 

 それは聞き覚えのある、いや、ありすぎる声だった。

 身に纏っていた重たい圧はどこへ行ったのか。

 臙脂の外套をなびかせ、途中でつまづきながらも床を這いずり、魔王がダリアへ飛びついていく。


「え……」

 

 呆気にとられる俺を置き去りにして、魔王はダリアの足元に滑り込み、そのドレスの裾に縋りついた。

 

「 ダリア様、ご無事ですか。

 わたしの術でダリア様が死んでしまったら、わたしは…………わたしはっ!」

 

  魔王のはずの存在が、ダリアを抱きしめておいおいと子どものように泣いている。


「…………は?」

 

 頬が、ぴくりと引きつった。

 なんだ、この既視感は。

 命がけで戦っていた緊張感が、急速に覚めていく。

 代わりに、これまで感じたことのない種類の、怒りがせり上がってきた。

 

 まさか、と。

 いや、戦いながらも少しは頭を掠めていたことがまさか当たりなのかと、仮面に手を伸ばす。

 

 からん。

 

 床に落ちた、魔王の仮面。

 その下から現れたのは、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった、メルティの顔だった。


「お、お前……!」

 

 慌てふためいているのは俺だけらしい。

 ダリアは最初から分かっていたらしく、「メルティのバカ!」とぽろぽろ涙を零して怒っている。

 その傍でダリアの足下にひれ伏し、申し訳ございません、とすがるメルティ。

 

「えーと……」

 

 メルティは生きていると、そう信じていた。

 あの強さで、簡単にやられるわけがない。

 そう思ってはいたが……。

 生きていて良かった、と安堵した中で、戸惑いと消化しきれない思いがこみ上げる。

 

「お前ら……。

 どういうことだよ、これ」

 

 自分でも驚くほど低く震える声。


「何の茶番だこれは…。

 ふ、ふざけんなあああああ!」

 

  俺の咆哮は、大広間にむなしく響いていた。





次回投稿予定:4/29(水)


命がけのシリアスを返してほしいルークの咆哮でした(笑)


少しでも面白かった、続きが気になる、ルーク不憫すぎる等思って頂けたら、下の★にて評価やブクマ等で応援してもらえると執筆の励みになります。

最終回まで後数話。最後までお付き合い頂けると嬉しいです。


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