表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王♂に転生したけど、勇者パーティの僧侶を推しています。~限界オタク女子、推し活ついでに魔界改革はじめました~  作者: アオ
第3章:選定の儀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/59

ep35:初めての手がかり

最後にノエルとダリル(幼少期)のイメージ画像が載っています。



「────今、なんて……?」


どこか慌てた様子で、レイヴンが影から出てきて衝撃発言(爆弾)を落とした。


「ノエル殿が……、村を出ました」


二回聞いても意味がわからん。なんでだ????


今のノエルは選定の儀を受け終わったばかりの十三歳。

勇者と旅に出るのは十六歳で、それまではあの村にいた筈。

独学で《聖》魔法を学び、レベル上げもしていたノエルが……、村を出た?


「そ、それでどこに向かっているの?」

「報告によりますと、ノエル殿は王都に行くと宣言されたようですが……。

その足取りは、王都へ向かってはおりません。

むしろ、辺境へ、辺境へと向かっているようです」


レイヴンの丁寧な説明も、鼓膜を滑っていくばかり。

とりあえず知っている情報を脳内で纏める。


まず、《聖》魔法の使い手は数百年に一度しか現れず、現存している使い手はいない。

そのため、ノエルの師となる人物がいないのだ。


(だから、ノエルは独学で魔法を扱えるようになった)


怠惰の谷(スロース・ヴァレー)の近くに住んでいることもあり、弱小種族の魔物との戦闘機会は多く、練習相手には困らなかった。


ここまでは、公式の情報である。

この情報を元に考えれば、勇者が来るまでの三年間で魔法の習得やレベリングをしていた筈。しかし、《聖》属性については残された書物も少なく、特に辺境の村には殆ど情報はなかっただろう。


そう考えれば、ノエルが《聖》属性の情報を求めて村を出たのかもしれない、と一つの答えにたどり着くが、


(でも、それじゃあ、より辺境に行く理由にはならない)


となると、辺境の魔物相手にレベル上げを行うのだろうか。

いくら《聖》魔法の使い手とはいえ、魔法の知識がないまま魔物と戦うのはリスクが高い。ノエルの性格上、リスキーなことはしないはず。


思いつく理由のどれもがしっくり来なくて、私は背もたれに寄りかかり天井を見上げる。


「ん~~~~~~、わっかんないなぁ……。

とりあえず引き続きノエルを見守っていて。

それと、万が一ノエルに危険が迫った場合は助けてあげて」

「承知いたしました」


レイヴンがするんと影へと潜っていった。

ノエルの行動理由が分からない今、見守りに徹するしかない。

レイヴンが見ていてくれるなら、大きな危険もないだろう。


なんだか胸がざわざわするけれど、私は気のせいだと言い聞かせていつも通り書類と向き合った。




***




「この村に、ダリルという少年はいるか」


もう何度も投げてきた問いかけ。

しかし返ってくるのは「知らない」という言葉ばかり。


飽き飽きしてきたところで、村長の少し後ろに立っていた子どもが口を開く。


「そのヘビ、きれいだね」


子どもは五、六歳前後だろうか。ダリルと出会った頃の自分と重なる。


「────ああ、スノウって言うんだ。

ボクの友達だよ」

「そうなんだ! ヘビはよく見かけるけど、そんなにきれいなヘビは見たことないや」


そう言って屈託なく笑う子ども。

久々に邪気のない態度に少し戸惑いながらも、友達を褒められて嫌な気はしない。


「ああ。スノウは特別だから」

「そっか……。そのダリルって人も、お兄ちゃんのトクベツなの?

いったい、どんな人なの?」


そういえば今まで、ダリルの特徴を聞いてくる村はなかった。


「そうだね、特別だよ。

ダリルは────赤い、夕日みたいな色の髪をしているんだ」


赤髪は禁句だったかもしれない。けれど、ダリルを見つけるためには必要な情報だろうと一番最初に挙げた。


……本当はもっとたくさん特徴がある。


陽に当たっていないのか、ボクと同じ真っ白でどこか不健康ささえ感じる肌。

まん丸で大きな、琥珀色の瞳はボクの右目と同じ色だった。

いつだって穏やかに微笑んでいて、ボクのどんなにくだらない話でも、大切な話のように聞いてくれる。

身長は、今はどのくらいになっているか分からないけれど、ボクと変わらなかった。

瘦せていて、麻の服を着ていた。


ダリルの特徴すべて、覚えている。

思い出せば胸が温かくなるのと同時に、言い表しようのない寂しさを覚えた。


「────赤い髪……」


子どもと手を繋いでいた少年────と言っても、ボクと変わらないくらいの男の子が口を開く。その表情には恐怖に似た色を滲ませていることから、やはり禁句か、と半ばこの村での捜索を諦めようとしたときだった。


「森で……、狩りをしているときに見かけた」

「何……?」


少年は少し震えた声で話し始める。


「その日は、すごく狂暴な熊が森の奥で見つかったんだ。

最初は魔物かと思うくらい大きくて、攻撃的だった」


少年の話を聞いていただけの村長が、ハッとした表情を見せる。


「ああ、あの日か……!」


村長の中で、何かの点と点が繋がったらしい。


「村が危ないから、村の大人たちとボクも一緒に熊の退治にでかけたんだけど……」


ごくっ、と少年は生唾を飲み込む。

よほど恐ろしい経験をしたのか、見開いた目は地面を見つめたまま動かない。


「森の、奥で……熊の寝床に着いたときそこには……五メートルはあるんじゃないかってくらい大きな熊と……、赤い髪の男の人が立っていたんだ」


少年は震えながらも、話を続ける。


「その赤髪の男の人は、魔法であっという間に熊を倒したんだ。

大人たちは村の危険はなくなったって喜んでいたけど……僕はあの赤い髪の男の人の方がずっと怖かった」


少年は戸惑いに揺れる瞳で、ボクを見つめた。


「少年とか、小さな子じゃなかったから君の言っている子ではないと思う。

けど、その人の赤い髪はすごく────綺麗で、怖かったんだ」


少年の話からして、ダリルではないことは百も承知である。

けれど、最後の少年の感想にも似た言葉が、ボクの胸を貫いた。


ダリルはボクと同じくらいの背丈だったし、年齢だって近い。

五メートルの熊を倒せるような男ではない。


……それなのに。


『綺麗で、怖かったんだ』


少年のその言葉だけが、妙に胸に残った。

ダリルの赤髪も夕焼けを切り取ったように鮮やかで、けれど目を逸らせない強さを持った色だったから。


(……まさか、な)


形容し難いものではあるけれど、少年の言葉は何故かボクの思い描くダリルを連想させる。


「その森は、どこだ?」


地図を少年に見せると、少年の少し汚れた指先がすぐ近くの森を指さす。


「ここだよ。ここから森に入ってまっすぐ南に進んだところで見たんだ」

「わかった、ありがとう」


ボクはダリルを探し始めて、初めて「ありがとう」という言葉を口にしたな、と思いながら地図を仕舞う。


「も、森へ行かれるのですか?

もう陽も暮れますし、武器などお持ちでないと危険ですよ」


村長がそう言うけれど、ボクの胸の中でざわめきが収まらない。

夜の森が危険であることは重々承知しているのだが、この逸る気持ちを抑えることはできない。


「構わない。その時はその時だ」


そう言ってボクは村を後にした。


……もし違ったとしても構わない。

また空振りでも構わない。

けれど……、万が一、本当に万が一。

あの少年が言う赤髪が、ダリルに繋がるのなら。

立ち止まるという選択肢は、今のボクにはなかった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ