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魔王♂に転生したけど、勇者パーティの僧侶に恋しています。  作者: アオ
第1章

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ep15:ドキドキ☆エンカウント!



「────……ダリオン様」

「ん、何?」


レイヴンを見届けると、ルシファーが私に声をかける。

振り向くと、ルシファーは一点を指さしていた。


「そこの洞窟、怪しくないでしょうか」

「おぉ、おあつらえ向きな洞窟だねぇ」


私は自慢ではないが、唯一の熊なし県出身のため、“熊出没”という単語は教科書やニュースの中でしか見たことがない。


そんな私でも、熊の巣穴としては丁度良いな、と思うほどの洞窟が目の前にあった。


「……うん、《魔力探知(マナ・サーチ)》でも《熱感知》でも、あの洞窟から反応があるわ」

「なら、洞窟の奥へ進みますか?」

「うーん、洞窟の内部がどういう構造か分からないのが不安よね。

中で行き止まりに追い込まれても困るし……。

万が一複数個体いたら囲まれちゃうかもしれないしね」

「さすがダリオン様。思慮深いお考えで」


ふむ、と私は少し思案する。


(そういえば、レイヴンの《使役》のスキルって私使えないかな)


ふと思い付き、スキルツリーを表示する。

空間が揺らいでUIが表示されると、そこに《使役》の文字を見つけた。


(アンロックされてるけど……、今あるポイントで解放できるな)


私は慣れた指先で、スキルをアンロックしていく。

そして目的のスキルを解放した。


「よし、これで私も《使役》できる、はず……」


とはいえ、私にはレイヴンのような“眷属”となる小動物がいない。


「私の眷属となるとしたら、どの動物になるの?」


ルシファーに尋ねてみると、きょとんと首を傾げてみる。

ルシファーがやるとどうしてそんなに可愛いの?

私がやったらさぁ、何かしらの法に触れそうなのに。


「ダリオン様の眷属は、我々“悪魔族(デモリアン)”に連なるすべての魔物、動物ですよ」

「おう?」

「つまり、私自身もダリオン様の眷属ですし、私の眷属である蜘蛛なども使役できます」


系譜が複雑だ……。

これもスキルツリーみたいに表示できるかな。

あとで確かめてみる必要があるな……。


「じゃあ、蜘蛛は使えるってことか。

この辺に蜘蛛は……」


魔力探知(マナ・サーチ)》を少し応用して特定の生き物を探すよう調整する。

すると、さすが森の中だけあって蜘蛛の生体反応はたくさんあった。


……え?熊のときもそうすれば良かったって?

今思いついたんだからしょうがないじゃん。


(う~……正直蜘蛛ってかなり苦手だけど……)


女子高生時代の記憶が蘇り、反射的に鳥肌が立つ。

ある夜、普通に仰向けで寝ていた私はふと目を覚ます。

ぼんやりとした視界で捉えたのは、ゆっくりと降下してくる蜘蛛で────……


(っひぃいいいいぃぃぃあああ)


ぞわっと頭皮にまで鳥肌が立つ思いに両手で二の腕部分を高速でさする。

わずかな摩擦熱で鳥肌は落ち着いたけれど、あの気持ち悪さといったら……。


「く、蜘蛛以外にないかなぁ!」

「他、ですか……。そうなりますと蛇なんかはいかがでしょう」

「蛇!蛇いいじゃん!」


爬虫類は平気だ。トカゲもカメレオンも蛇もいける。

私はすぐに《魔力探知(マナ・サーチ)》で蛇を探す。

すると思いのほかすぐ傍に蛇の生命反応を見つけた。


「お、いたいた。────《使役》」


スキルを使用するには視認する必要がある。

私は草陰に潜む蛇をしっかり視界に入れ、スキルを発動した。

すると、蛇はわずかにぴくっと震えると、すぐに私の足元に絡みつくようにして体を上ってくる。


……え、これ蛇だから可愛いで済んでるけど、蜘蛛だった場合同じことされんの?


複数の蜘蛛が自身の体を這い上がる様子を想像してしまい、再び鳥肌地獄。

全く、想像力豊かなのも問題があるぜ。


「あの洞窟の中を調べてきて」


短い命令を蛇に下すと、蛇はするすると降りていき、地面を這って行った。


(そういえば《使役》と一緒に《共有》のスキルもあったはず……)


スキルツリーを開き、《共有》の文字をタップする。

眷属の視覚、聴覚を共有することができる。

という説明を見て、私はさっそくスキルを使用して蛇の視覚を共有した。


(蛇の視界と私の見え方は違うけど……、まあ視覚的情報を得る分には十分かな)


これも自慢になるが、私は前世では視力2.0だった。

というか自慢できることがそのくらいしかなかったんだけど。

蛇の視覚は、輪郭や遠くのものはぼやけるし細部は見えないけれど、明暗も分かるし、何より動物などの動きには敏感すぎるほど反応できている。

索敵にかなり適した選択だったな、と蛇を選んだ私を褒めてあげたい。


……まあ提案したのはルシファーだけど……。


「────……見つけた」


蛇は洞窟の最奥へと辿り着いた。

光の刺さない洞窟の奥はかなり暗く、蛇の視覚では何も見えない。

しかし、蛇の“知覚”は確実にそれを発見していた。


「……うん、洞窟の造りはシンプルね。

まっすぐ行った洞窟の最奥に熊がいるわ」

「どうされますか。中に入って討伐しますか?」

「ん-、中だと動きが制限されるのよね……。

炎系の魔法も、密室というか……空間が閉ざされた場所で使うのは危ないし。

何かを囮にして外におびき出せないかな」


少し思案したところで、私は蛇にある指示を送る。


『熊に噛みつき、反応があったらすぐに洞窟から出るように』


すると蛇はすぐに行動を起こし、熊と思われる動物に思い切り牙を立てた。

図体がかなり大きい熊は、蛇の一噛みくらいで悲鳴を上げたりはしないが、“ちょっかい”は効いたようで、もぞっと動く様子が見られた。


反応があったため、蛇はすぐに洞窟から離脱。

洞窟の外へ出てきて森の中へとまぎれたところで、私は《使役》のスキルを切った。


「────……グォオオォ……っ」


洞窟の奥から雄たけびが聞こえる。

どうやらこちらの目論見は成功したらしい。



「出てくるよ、ルシファー」

「はい」


洞窟の中で影が揺れる。


そして、洞窟の外へとゆっくり現れたのは────



「……いや、でっか……!」



想像の倍以上大きな、五メートルを優に超える巨体だった。


「……こっわ」


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