ep16.激闘!大熊対決
「────……ねぇ、ルシファー。
この世界の熊ってこんなにでかいもん?」
目の前の五メートル級の熊は、グルルル……とかそんな可愛らしい唸り声を通り越して、ドゥルルル言ってる。バイクのエンジン音かな?
「いえ、大きな個体でも三メートルあれば巨体と言われます」
「ほぉん……じゃあ何、突然変異的な……?」
よく見ると、熊の体表を黒いオーラのようなものが覆っている。
瞳は赤黒く濁っていて、理性を失っているようだった。
「……あの黒いオーラ見える?」
「はい。……あれはおそらく、魔素かと」
「可視化できるほど、濃い魔素が取り巻いているってこと?」
熊はゆらゆらとその巨体を揺らしながら、虚ろな瞳で私たちを捉え、エネミー判定される。
その瞳は細くなり、熊からのヘイトが向けられた。
────刹那。
ドカァン!!!
瞬きの間に振り下ろされた腕が、私とルシファ-の間にあった岩を呆気なく砕いた。
砂埃と砕けた岩の欠片が舞う。
私とルシファ-はその攻撃を避けることができたが、巨大な図体からは想像もできないほどの機敏な動きに、私の心を焦燥感が占める。
(おいおい、ちょっと思ってた以上に動きが早いな!?)
ルシファーがすかさず、足を鞭のようにしならせて蹴りを繰り出した。
重たい攻撃はしっかりと熊に当たり、ズドン!と乾いた音が響いた。
しかし、それだけ重いルシファーからの打撃でも、ダメージはほぼないらしい。
「ルシファー、離れて!」
私は手のひらに魔力を集めると、熊へと照準を合わせる。
「“獄炎”!!」
ゴッ、と音とともに手のひらから濃縮された魔力が放出され、熊を丸ごと炎の壁で包み込んだ。
「グオォオオオォォオオァアアッ」
悲痛の声を漏らす熊。
本気の技ではないにしろ、それなりに攻撃力の高い魔法だったからか、炎が消えた瞬間熊はその場に倒れこんだ。
「グ、ォ……ァ……」
倒れた熊に近寄ると、焦げたような匂いが鼻につく。
わずかに呼吸をしていることから、まだ死んではいないらしい。
「素晴らしいです、ダリオン様。
生け捕りにするために、威力をギリギリに調整したのですね」
尊敬の眼差しを向けるルシファー。
……いや別に、そこまで考えて……
……いたような気がする!
無意識に、生け捕りできるよう調整した気がする!
「計画通り!」
「やはり!さすがダリオン様です!」
おほ~ん……ちょっぴり胸が痛い。
さっさと話題を変えようと、私は熊をどうしようかとスキルツリーを開いた。
「さて、どうやって運ぶか……」
有用なスキルはあるか、と見ていると横からルシファーが
「空間魔法は取得されていますか?」
と疑問が投げかけられる。
「空間魔法?」
「ええ。空間魔法があれば、熊のような生命体でも仕舞えると思うのですが」
そう言われてスキルを見てみるが、空間魔法のような文字は見つけられない。
そこで、元ゲーマーの私はピンときて、スキルツリーのUIを消して別のUIを呼び出してみることに。
「“インベントリ”」
そう口にすると、空気が揺らいで【Inventory】の文字が現れる。
(おお、やっぱり!)
インベントリにはまだ何も収納されておらず、容量は十分。
私は再度熊に触れると、半透明のUIが表示された。
《熊:回収可能────回収しますか?》
その下に出ている《Yes / No》の選択肢で《Yes》に触れると、熊の巨体は粒子となり、光のように崩れ、私のインベントリの中に収納された。
「ふむ、これで良し!」
インベントリを開いただけなので、MPの消費もない。
魔王というぶっ壊れキャラの特性も相まってMP量はもともと多く、先ほどの“獄炎”も大技ではあったが、魔王のMPからしたら微々たるものである。
……MPもそうだけど、魔法の便利さよね。
五メートル級の熊をポケットに仕舞う感覚で収納できるなんて。
某島クリエイトゲームみたい。
……いや、あれは実際にポケットにしまってるからもっとすごいのか。
「さて、小鬼人の集落に一度戻ろう。
それからレイヴンとも合流して今後の方針も決めなきゃ」
「承知いたしました」
この後の流れを簡単に確認し、私たちは洞窟に背を向けた。
────ピロン。
久々に聞いた、レベルアップの音。
そういえば、と、私はふと、久しくステータスの確認をしていなかったことを思い出す。
私は帰ったらスキルツリーと自分の現在のステータスをしっかり確認しようと決めた。
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【STATUS】
名前:ダリオン・ラス
種族:悪魔族デモリアン
ランク:魔王(憤怒)
レベル:26
体力:150
魔力:200
信仰値:上昇中(上限突破)
役職:ノエルを見守り隊隊長
スキル:《カリスマ補正》《鑑定》《再生》《超速再生》《魔力増幅》《筋力増強》《不眠》《思考》《調合》《労働管理》《魔王覇気》《魔力探知》《魔力感知》《熱感知》《使役》《共有》
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