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第3話 王都の姫君たち 1.カリア侯爵家からの訪問者

今読み返すと、第3話になって、どうにか調子が出て来たようです。長編小説を書くのは久しぶりなので、とりあえず起承転結の形にして、この部分は転に当たります。本格的な読み手の方に楽しんでいただけるのは、第3話の7くらいからではないかと思います。

第3話には、いろんなタイプの姫君が出てきます。

王太子妃と王弟妃はなぜ親友になり、王太子妃と王太子王子の乳母という関係になった後も親友であり続けているのでしょうか。

衰退していく貴族家の起死回生の策を打つ母娘はどこで間違ったのでしょうか。

エイプリルが王子妃となるために集められた姫たちは、友情と信頼を築くための努力をコケにされる屈辱と、地位と高給を伴う仕事を失う危機に直面して、どんな選択をするでしょうか。

国家の使命を負って敵国で働く娘は失敗したのでしょうか、成功したのでしょうか。

誰の人生にも限られた選択肢しかありませんが、どちらを選ぶかという瞬間はあります。その選択が自分のものであるために今日を生きるのは誰も同じこと。


 エイプリルの私室にペイジのノックが届いた。その日は王子マントの刺繍はお休みになっている。客を待っているからだ。

「用件を述べなさい」

「カリス家の馬車が間もなく到着とのことです」

「わかりました、応接室に行くと、セスに伝えなさい」

「復唱いたします。執事長セスさまに、次姫さまは応接室においでになるとお伝えいたします」

「よろしい、行きなさい」

 エルは、今日の執事室付き当番のペイジは忙しいだろうな、とその背を見送りエイプリルの身なりを整えた。


 応接間のソファでおとなしく待つエイプリルは、馬車が玄関前に止まる音でワクワクしていた。玄関まで走って迎えに行くどころか、窓からのぞき見することすらできない。最近エルが厳しいのだ。

 ソファにもたれてはいけない、カップを顔から迎えに行かない、カップを口元に持ってくるのです!と、スパルタだ。

 おまけに、「その場の主賓が、カップをかちゃんと音をさせてソーサーに置いたら、自分も必ず音を立てるのです、マナーとはそういうものです!」とかなんとか、高度な気配りなのか、何かの誤解なのかよくわからない。


 応接間のドアをセスが開いて、待ちかねたお客さま、母の実家であるカリア侯爵家の二姫、マリエが侍女ソリーを従えて入ってきた。エイプリルはソファから立ち上がって迎え、礼法に従って、

「レイディ・カリア、ようこそ」

 と言いながらドアまで迎えに行き、お互いに軽く左足を引いて腰を落とす挨拶をした。

「レイディ・フィエール、お久しぶりでございます」

 マリエもきちんと礼で応えた。

「こちらにどうぞ、お疲れでしょう。レイディ・カリアにお茶を」


 マリエにソファをすすめ、お茶が出るまでふたりは神妙に家族のことを尋ね合って「久しぶりにお会いする女友達との正しい社交」を実践していた。エルとソリーそしてセスの前で乱れは許されない。

 やがて、社交的会話も尽き、お茶もいただいたので、次の社交マナーに取り掛かる時間となった。

 この場の主人はエイプリルだ。

「レイディ・カリア、客間をご用意しております。セスがご案内いたします」

 マリエが笑顔で頷いて、セスを認識したことを伝える。

「お心遣いありがとう。それでは衣服を改めて、伯爵ご夫妻に滞在のご挨拶にうかがいます」

「父母は、晩餐の席にてお会いいたします。

 よろしかったら、晩餐までの時間、わたくしの部屋へおいでになりませんか。王都についてお教えいただきたいことがございます」

「何なりとお尋ねくださいませ。お役に立てるとよろしいですが」

「どうぞよろしくお願いいたします」

「こちらこそ大変お世話になります」


 だいたい合格の形式的やりとりを無事に終え、マリエはちょっとふらつきながら客間へと案内されていった。幼いころからの知り合い、しかも従姉妹との社交の実践はお互いにつらい。しかし、貴族の姫であるかぎり、いつでも・どこでも・だれとでも、これができなければ、実家から外に出ることは許されない。


 マリエが住むカリア城からラフィエール城までは、馬車で4日。途中ジガ城への登りと下りが難所になっている。貴人はつづら折りの道を運ばれて城内で待機、通行の手続きをする。馬車は馬車のために作られた長い傾斜路を使って丘陵の低いところを回り、ジガ城の下まで来る。再びつづら折りを下って馬車に乗る。


 ただ、マリエは王国貴族の子女に用意された通過儀礼のひとつとして王立学園に「収容」されるまでは、叔母であるメリーアンに憧れて剣を習い、馬に乗り、時としてラフィエールに泊まり込んでウイレムに師事して育った。

 馬車なんてお断りよ、ちょっとそこまでじゃない、と馬に乗ってラフィエール城まで駆け抜けたいと希望を出したが、あっさり却下された。

 おとなしく馬車に揺られてくるのは苦行以外の何物でもなかった。


 ようやく解放され、まもなく従妹とおしゃべりできるという期待に慰められながら、マリエは旅の汚れを落とし、旅装から明るいブルーのデイドレスに着替えた。


王子マント、完成する日は来るのか?

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