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11.伯爵の決断

旅程3が重複していて、旅程4が落ちていました。本日訂正しました。

教えてくださってありがとうございました。感謝です。

フィエール領の新しい地図ができました。絵画的になっています。このお話の最初の読者である女友達が、第2話までを読んで描いてくれた美しい地図です。作者のコンピュータとの親和性は非常に低いので、原画の魅力が伝わるか不安です。

第4話の最初のページに挿入することにしました。

 レポートを読んだ伯爵は、顎に手を当て、目が虚ろになっていた。

 伯爵の頭をよぎっていたのは、まず、下の姫は何という大嘘つきかということだった。おまけにとんでもないデバガメだ。闇に紛れて、プロポーズのシーンを録音する伯爵令嬢とかどんな存在?純真さなど欠片もないではないか、本当に第三王子妃になるのか、いや、そもそも他家の嫁など務まるのか、空恐ろしい、という感想だったろう。

 やっぱり王家に差し出すのはやめておこう、どんなことになるかわからない、俺は責任取りたくない、とも思ったことだろう。


 相当考え込んだのち、伯爵は配下の密偵を放った。

 密偵の報告書を手にして、一部、つまり、魔晶石に関することはわかったと思ったが、これは長男マクニール子爵と、大姫の夫カンデラ公爵の解決を待つことにした。急がなくていい。若い者に課題を残しておくのはいいことだ、と伯爵はニマリとした。

 だが、まだ少し足りなかった。



 エイプリルがカンデラ家の招待を受けてフィエール別邸を留守にしていることを、リバーアン夫人が把握していなかったことは問題外の失態だ。別邸に送られていたリバーアン夫人配下の使用人は、なぜ報告しなかったのか。あるいは報告したのに伝わらなかったのか、それとも、夫人は知っていたのか。

 明らかなのはただ、エイプリルがフィエール別邸での宿泊を回避したことだけだった。19日の宿泊場所、フィエール家別邸は、大嘘とまではいわないものの真実ではない。姫隊5人は「開通式のお祭りを明け方まで楽しみ」明け方に別邸から馬と犬を引き出してそのまま駆け去ったのだ。

 ロイは開通式を見ることもできず、前々日のうちに別邸を離れていたし、アニーは23日早朝、「姫君のご指示です」と馬車を出して帰城の途についた。


 何かあったのかと尋ねても、エイプリルはレポートの通りとしか答えないだろう。

 相手は奇襲を任される戦姫、兵数百を率いることも許される指揮官なのだ。読み解くのが辺境伯家総司令の選ぶべき道だ。


「うーん、わからん」

 伯爵はまだ悩んでいた。

「お館さま、リバーアンのことですか?」

「そうだ」

「そうですか」

「そうなのだ。そなた、どう思う」

「どうとおっしゃいますと?」

「下の姫は、どうして別邸を嫌ったのだ」

「そのことですか、そうですね」

「何か考えがあるか」


「エイプリルは、カンデラ公爵家への出立をどこに報告したと書いておりましたか?」

「おお、それは砦指揮官だ」

「ストラッサー卿でしたね。

 指揮官とリバーアン夫人の関係は、どちらが上ですか?」

「リバーアン夫人はそなたの管理下、砦の奥向きの管理である。

 ストラッサー卿は俺の配下だな、要は俺とそなたの関係だ。上下はない。

 役向きが違うのだ」


「ストラッサー卿は結婚しておられますか?」

「結婚して息子ひとりを得た。出産の後妻を失ったと覚えておる」

「ご再婚は?」

「最近であったな、縁戚の者から新しく妻を迎えた」


「お館さま、それは」

「うん?」

「説明は難しいのでございますが。

 さようですね、仮に、わたくしがエイプリル出産の後、はかなくなりましたと思し召されませ」

「なんと?」

「いえ、説明が難しゅうございますので、仮にそう考えてごらんくださいまし」

「うむ、難しいがのぉ」

「まずまず、そのように。

 奥向きが動きませんので、わたくしの妹を仮に夫人に据えて、管理を任せたといたします」

「うむ、そうなるであろう」

「10年ほどたち、後妻を迎えると思し召されます」

「うむ、よかろう」

「嫁いでいらっしゃった新しい奥さまと、10年奥向きを管理してまいりましたわが妹の関係はどうなりますでしょう」

「う?ううーん」


「すこし通じまして?」

「うーむ、困る」

「さようにありましょうとも。お館さまとて考えてみるも嫌にございましょう?」

「そうよのぉ、その状態ならば、そなたの妹御を後添えに頼むがよいであろうのぉ」

「それがようございましょう、あるいは形だけになろうとも、それが良いのでございます。

 妹に子が望めぬ場合も、お館さまのお立場ならば領地に夫人を置かれればよろしいのです」

「うむ、そうなるであろう」


「リバーアン砦の奥向きの使用人が割れているのでございましょう。

 リバーアン夫人の配下ですのに、ストラッサー卿夫人からも指示が出るのだと存じます」

「ううーむ、ストラッサーも気の毒よのぉ」

「いえ、お館さま。

 そもそもストラッサー卿に奥方が健在でおられれば、リバーアン夫人を置く前にストラッサー卿、奥方、お館さま、わたくしで十分に話し合って、役割を分担したことでしょう。

 奥方が亡くなられ、そのあとでリバーアン夫人を置き、時間が経って後にストラッサー卿が再婚なさったのですね。ストラッサー卿夫人との話し合いが足りなかったのです。

 一番良い解決策は、お館さまがもっと早いうちにリバーアン夫人をストラッサー卿に下げ渡しなされることだったのかもしれません」

「む、それは思い至らなかった。

 うぅむ。儂はちと足らぬのぉ」


「いえ、お館さま、わたくしも至りませんでした。

 ストラッサー卿の再婚について十分配慮しておりませんでしたのは、わたくしの責でございます。

 奥向きの乱れは、砦の守りに隙を生みます

 エイプリルに教えられましたのね。」

「そなたの言うとおりであるな。エイプリルは公爵家別邸に砦の夫人か指揮官から挨拶が来なかったことで身の危険を感じたのであろうよ」


「さようですね、そもそもエイプリルがリバーアン砦の、しかもフィエール家別邸にいることを、ローズが知っていて迎えをよこすというのが変なのでございますよ」

「そうか、そうなのだな。あ奴め、別邸の警備を試したのか」

「そこまではどうかと。ただ、危険と感じた後はなかなか見事な逃げっぷりではありませんか」

「そうよ、さすがそなたの子よの」

「まあ、お館さま、逃げならお館さまに勝るものはないと存じますが?」

「そんなこともあったかのぉ」

「あら、お忘れですか?」

「いや、まぁ、の」



 リバーアン夫人は、伯爵夫人から職務怠慢で夫人の役職を解かれ、ラフィエール城に呼び寄せられた。後に伯爵から配下の騎士に下賜される形をとって、生まれ育ったリバーアン砦町に帰ることを得た。

 砦指揮官、騎士ストラッサーはゴッチ砦への移動を命じられた。しばらく後引退となり、出身の領地に妻とともに帰郷。前妻との間に得た長男はラフィエール城へペイジとして奉公に来た。


 リバーアン砦は、指揮官を廃して代官が置かれることになった。奥向きの管理は代官夫人が担当する。戦略地点として直轄地となっていたリバーアン砦は、交通の要衝としての役割が拡大したため、将来的に周辺地域を割譲し、リバーアン領とすることになった。


 組織変更とともに上道の巡回隊には別に砦内宿舎を設け、独立した専任の指揮官がジガ城から配置されることになった。この変更によって、巡回隊が今どこにいて、宿営地が空いているのはいつなのかを把握しているのはジガ城関係者に限定されることになった。

 これについては、伯爵が内心「若い者を少し助けてやるかの、慈悲である」とかなんとか、適当なことを思って、自画自賛したのだが。


 マクニール子爵が、「クソ親父、知ってたなー!」と悲鳴交じりの怒号を上げるのは10年ほど先のこと。


橋の渡り初めのお話はここまでです。

伏線がたくさん張ってありまして、これは「ざまぁ」回で全部拾います。

抜け道の部分は、ストーリーが明後日の方向に行ってしまうので掲載しないことにしました。独立した別の話にすべきかもしれません。

気になる方のために結論だけ書くと、魔晶石はもともと安価なアクセサリーとして使われていたために、磨きなおして魔晶石とすることができるが、性能が落ちる、それを王都から鉱山に運び込むルートが確立されている、目的はカンデラ公の地位を貶めること。



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