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大町編  作者: 麦果
第3章 大崎尚進高校
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41. 最後の夏 7月24日



 大町とその仲間達の、高校生活最後となる夏休みが始まった。


 24日、仙台末娘事件から1年が経過した。朝の情報番組では、現在も加害者達の裁判が行われていると報じ、専門家がその行方を推測したり、迷惑行為や犯罪を繰り返す被告親族、すなわち妃元家と共継家に言及したりしていた。

 その標的となっている大崎尚進高校は、一見平和そうに見えた。課外授業が終わり、運動部員の掛け声やボールの音、吹奏楽部の演奏が校内に響き渡っていた。

 そんな中、ある教室で10人の男女が寄り合っていた。上靴の色が赤いから全員3年生だ。

「神明(しんめい)が来てくれるとは思わなかった」

 本沢(ほんざわ)が呟いた。

「狐塚(きつねづか)の事、ボロクソ言ってたのにな」

「あん時はね……でも、本当に悪いのは別の奴。そいつシメたくてさ」

 妃美(ひみ)が目をぎらぎらさせた。

 彼女とその取り巻きは昨秋の問題解決後、騒動を引き起こした冬美をなじっていたが、同級生である下川原や宮地の話から祖志継一派が元凶だと知り、考えを改めてここに来たようだ。

「って、あんたもだいたい同じでしょ。言い出しっぺが」

 本沢は人一倍強い正義感から、諸悪の根源に立ち向かおうと仲間を募ったのだ。

「で、どうすんの? 宮地みたいに基本別行動?」

 妃美が本沢にこれからの事を尋ねた。

「いや、大学達に混ざろうと思う。奴らに詳しい連中と一緒の方が賢明だ」

「確かに」

「賛成ー」

 下川原率いる〝尚進探偵団〟に友人、恋人が居るメンバーが賛同した。

「それなら私も」

 京穂(きょうほ)が話に混ざって来た。彼女はフルートと楽譜、連れ添う宮地もチューバを担いでいるから、パート練習の合間だろう。

「葛岡(くずおか)、大丈夫なの? 城山とその彼女居んのに」

「宮地さん、とっくに吹っ切れたから大丈夫。今、本沢君もあぁ言ってたでしょ? これからは下川原さん達に混ざろう」

「葛岡がそう言うなら……っつう事で、あたしらも混ざるわ」

「あぁ」

 本沢はほくそ笑んで、宮地と京穂を仲間に加えた。

「さっそく、下川原さんに言いに行こ! じゃないと帰っちゃう」

「だってよ、本沢」

「おう」

 妃美に背中を押された本沢は、京穂と進路指導室へ急いだ。


「下川原さん!」

「葛岡!? 本沢君も、どしたの?」

 下川原がちょうど進路指導室から出た所だった。京穂が彼女に事情を説明した。

「いいよ」

 既に学校全体が敵と見なされていて、断る理由がないからか、下川原はあっさりと承諾した。

「本沢君もよく考えたねぇ……くだんない事言ってる奴も居るから、そういうの嬉しいわ」

 下川原と尚進探偵団は宮城万路高校生同様、一部生徒から疫病神呼ばわりされていたそうだ。陰口を叩かれる程度だが、それでも不愉快だっただろう。

「そういや、誘拐だの偽ボランティアだのあった時も、周りに言ってくれてたよね。仙台も石巻も遠くて何も出来なかったも同然だから、助かったよ」

「そう言ってもらえて良かった。神明、偽善者って言われて落ち込んでたから」

「妃美が? そうだったんだ……あの子、あたし達にはそういうとこ見せないからなー」

「そうらしいな」

 本沢は妃美を中学時代から知っていた。また、彼らはこれまでにも行方不明になった祀陵高校生の情報を拡散したり、偽ボランティアの勧誘に応じないよう注意喚起を行っていた。

「で、他の新入り達は?」

「1組に集まってる」

 本沢と京穂は下川原を連れて教室に戻った。

「何気に4組多いな! 宮地はたまに一緒だったけど……ありがとね」

 集まっていた10人中5人、京穂と宮地を入れると7人が下川原のクラスメイトだった。

 彼女は新たな仲間達に礼を言って、この件を友人や矢遣団に報告した。間もなく陸から折り返し連絡が入った。

『矢遣団に入れそうな人居る? 居たら誘ってやって』

 矢遣団は参加者が限られている分、他の生徒への情報伝達が可能な各学校、クラスのまとめ役がメインである。そこで下川原は、本沢、妃美などを指名した。これで矢遣団は陸を入れて81人になった。

 この後合議はお開きとなり、本沢と妃美は下川原と一緒に帰る事にした。

「葛岡入ってくれて良かったねぇ。今日はこのまま終わりそう……だよね、部長」

「うん。今日は、ね」

「って事は、明日からが問題かぁ……気合い入れてかなきゃ」

 妃美は拳を握った。

「頼もしいねぇ」

 下川原は妃美に感心している様子だ。

「いつ、どこで何されるかは分からないけど……」

 魅阿の予告では〝夏休み〟としか告げられなかった。

「尚進には何もさせない。迎え撃つよ」

「イエッサー!」

 妃美の弾んだ声に、通りすがりの老婦人達が目を細めた。彼女達は威勢の良い妃美と下川原に、若くておてんばだった頃の自分達を重ねているようだった。

 本沢と妃美、下川原は古川駅前で別れ、それぞれの帰路に就いた。

【宮城県大崎尚進高校】


本沢剣一(ほんざわけんいち)

総合学科地域国際系列2年1組→3年1組

サッカー部

昨年のミスター尚進に選ばれた、男気あふれるリーダー。中学時代から京穂に片思いしている


神明妃美(しんめいひみ)

総合学科商業経済系列2年4組→3年4組

バドミントン部

強気で毒舌な、クラスの女ボス的存在。常に取り巻きと行動を共にするが、下川原や宮地とも話す


葛岡京穂(くずおかきょうほ)

総合学科商業経済系列2年4組→3年4組

吹奏楽部

昨年のミス尚進に選ばれた、おしとやかで部活も頑張る美少女。かつて城山に片思いしていた

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