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大町編  作者: 麦果
第3章 大崎尚進高校
39/84

38.包囲網

 3連休明けの16日朝、大町はトーストを頬張りながらワイドショーを見ていた。

「おはようございます、宮城県内のニュースをお伝えします」

 仙台に引っ越して以来、おなじみの女性アナウンサーだった。

「この前、クラスの子にこの人の口マネ似てるって言われたんだよねー」

 妹が思い出したように喋り始めた。

「やってみ、やってみ?」

「あ、ごめん。ちょっと待って」

 大町は姉と妹の会話を止め、テレビを注視した。

「――近く、自称会社役員の男と、その娘で、県北部の高校に通う女子生徒を逮捕する方針です」

 共継家による一連の事件の続報だった。不正なアプリケーション、みかんと冬美への暴行に加え、違法電波局による大崎尚進高校への誹謗中傷も、魅阿とその父親の仕業だったそうだ。

「こういう、家族揃って悪さすんの、去年もあったよねぇ……仙台末娘事件、っての?」

 姉は呆れ気味だった。

「後さ、石巻の……築山(つきやま)の弟の所もこないだ大変だったって。理夢の友達多いとこ。そうだ、あんた、海主(みぬし)君って子知らない? タメだよ」

「……海主君?」

 大町はパンを平らげて石巻浦見台高校の友人や、名前だけなら聞いた事のある人物を思い浮かべた。

「あー、友達の、そのまた友達だな」

 海主と面識はないが、彼の名前と、サーフィンをやっていて結構かっこいい奴だとは聞いていた。元2年3組、特に尾崎から。

「へぇー……じゃあ、これから会うかもね。築山に言っとこ。ごちそうさまー」

 姉が自分の皿やカップをまとめて立ち上がった。

「理夢兄、どんだけ他校に友達居んのー」

「たくさん居るかな」

「どうやったらそんなに出来るの?」

「……内緒」

 妹に対して、他校で起きた事件に首を突っ込めとは言えなかった。

「ごちそうさま」

「あたしもー」

 大町と妹も食器を片付けた。


 宮城万路高校では週末の事件に関する話題が飛び交っていた。実際に見た生徒も居たようたが、大町が魅阿のパンチを食らった事は知らないようだった。

「おはよー」

 大町が教室に入ると、元野球部の友人が文丸をクラスに招いていた。

「おっ! 今聞いてたんだけどよ、浦見台の奴らすげぇな!」

「どうしたの?」

「お手柄高校生だってよ」

 友人が文丸から聞いた話によれば、石巻浦見台高校3年の埣寺(ぞねでら)新橋(しんばし)という二人の男子生徒が、問題のアプリケーションや違法電波局について独自に調べ、警察に対し有力な情報を提供したそうだ。

「僕はさっき、史衣那に聞いたんだ」

 文丸は得意気になっている。

「彼女?」

「うん」

「どうりで……スマホ見ながらニヤついてるなと思ったら、彼女かぁ」

 友人は文丸に羨望の眼差しを向けていた。

「他の奴らも他校の、同中とかの彼女出来たって言うしよ……あの子、どこ行ったんだろ」

「えっ?」

「あっ、悪い。独り言っ」

 友人には誰か気になる子が居るようだが、大町も文丸も詮索しなかった。

「野球好きだったり、ソフトやってたりした子なら何人か繋がったんだけどさぁ」

 友人はスマートフォンでSNSを見つつ、浮かれた様子で語り始めた。

「趣味が合うのも大事だと思うよ……あ、SNSっていえば、これも史衣那情報なんだけど」

 文丸は大町に耳打ちした。

「例のアプリ消えたみたいだよ。それで、尚進の子何人か連絡寄越してるって」

「そうなの? ……あ、何か来てる」

 大町がスマートフォンを取り出すと、夏芽に加え、彼女の友人だという下川原(しもかわら)宮地(みやぢ)と名乗る大崎尚進高校生からメッセージが届いていた。

『大町の連絡先、クラスの子二人にも教えたわー。事後報告すまぬ』

『下川原伸歩ですー、夏芽達が世話になったようで。あざーっす!!』

『宮地ひなたです!! よろしく!!』

 大町がそれぞれに返信すると、宮地がもう一言送って来た。

『夏芽から聞いてたとこなんだけど、冬美達今日退院だってね!? 冬美、しばらく県外の親戚んとこ行くから安全っぽい!! めっちゃ遠くだって言ってたとか!!』

『そうなんだぁ』

 大町が送信ボタンを押したのと同時に、始業時間5分前を知らせるチャイムが鳴った。


 6校時とSHR、掃除が終わると、大町は8組に向かった。

「僕が最後だね、お待たせー」

「おー」

 凪輝と文丸、嵯久(さく)二日(ふつか)が大町を迎え入れた。

「大町! お前、文丸から今朝の事聞いてんだよなぁ?」

「うん、聞いたよ」

「だそうだ! っつう事で、ノロケタイム終了ー」

 嵯久は文丸の話題にうんざりしていたようだ。

「じゃ、ここからは俺の週末の話を」

「やめてくれぇ!!」

 嵯久は凪輝のナンパ自慢も受け付けられないようだ。

「大町にモテる秘訣でも聞けわー」

「えっ、僕!? そんな……」

 二日に話題を振られ、大町は戸惑った。同時に、誰かが教室に駆け込んだ。

中西(なかにし)君っ!」

「小凪ちゃん!? どうしたの? 顔色悪いよ?」

 湊だった。嵯久が腰を低くして彼女の顔をのぞき込んだ。

「あの子……魅阿さん、私の連絡先知ってたみたいで、こんなのが」

 湊が嵯久と大町らに魅阿からのメッセージを見せた。

『冬美どっかに逃げて居ないから、湊に言っとくね。警察動いてるけど、うちらは捕まるまでやめないから、夏休み、覚悟してなよ?』

「冬美さんと湊さんって何か関係あったっけ? それに、宮地さんとかも」

 冬美を取り巻く人物として、大町が知っているのは夏芽と魅阿だけだった。

「そっか、大町、3年さなってこっち来たから知らねぇんだよな……小凪ちゃん、言って大丈夫?」

「えぇ」

 湊の許しをもらい、嵯久が彼女と冬美について簡潔に教えてくれた。

 二人は保育園から一緒で、外見が非常に似ていた。2年生事件発生直後、エスカレートしたグループ争いに嫌気が差した湊が冬美に異常事態を知らせると、祖志継家関係者が絡んでいると見た彼女は湊になりすまし、石巻浦見台高校に潜入した。冬美の読みは当たり、南境らの動きもあって事件は解決、旧2年3組も最後の最後で平和になったが、湊は合唱部で付き合いがあった蒼子にだけこの旨を明かし、祖志継家と無関係かつ寮のある宮城万路高校へ逃げ隠れるように転校してきたのだ。

「結局俺らが居て、浦見台から来たと聞いて声掛けちゃったからなぁ……悪いね」

「いいえ、大丈夫。いずれ、冬美さんから足が付きそうな気していたし……だから」

 湊は嵯久に言葉を返すと、大町達に目を向けた。

「私、出来る内は静かに過ごしたくて皆から離れていたけど、もう1回混ぜてくれないかな? 正直、こっちに来てからも色々あって、苦手だったはずの浦見台の子達も心配している私が居るから……また、お願いします」

「うん!」

 嵯久が真っ先に答えた。大町と文丸、凪輝、二日と、後から事情を聞いた仲間達も彼に同意し、湊は正式に再合流を果たした。

【学校法人南奥羽万路学院宮城万路高校】


中西嵯久(なかにしさく)

実践教養コース3年10組

熱血漢だが、中学時代はビビり屋だった。元サスペンス愛好会で、北目達の同郷人


二日草輔(ふつかそうすけ)

実践教養コース3年9組

冷静で、母親は厳しいがうまくやり過ごしている。元サスペンス愛好会で、北目達の同郷人



【宮城県大崎尚進高校】


下川原伸歩(しもかわらのぶほ)/部長

総合学科商業経済系列2年4組→3年4組

ソフトテニス部

活発な探偵娘。夏芽とはクラスも部活も一緒で、丸沼や大学とは地元が同じ


宮地(みやぢ)ひなた

総合学科商業経済系列2年4組→3年4組

吹奏楽部

姉妹揃っての噂好き。下川原と夏芽のクラスメイト



【学校法人秀堂学園石巻浦見台高校】


築山海主(つきやまみぬし)/ぬっしー

総合コース2年3組→3年5組・サーフィン愛好会

フレンドリーな波乗り。新橋とは親友かつ恋のライバル。恵野が好きだが、尾崎に片思いされている


埣寺夏潮(ぞねでらなつしお)

総合コース2年5組→3年4組・パソコン部

マイペースなサブカル、アングラ通。人と関わる事は平気で、丸沼、中埣や屋下とよく絡む。趣味が合う彼女も密かに募集中


新橋瑞斗(しんばしみずと)

総合コース2年3組→3年3組・アマチュア無線愛好会

まじめで、親子3世代揃っての無線愛好家。海主とは親友かつライバルで、恵野が好き

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