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大町編  作者: 麦果
第3章 大崎尚進高校
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37. 魅阿さんが去った後

 魅阿による襲撃事件と予告メッセージについては、当日中に仲間全員が知る事となった。

 県内各地から生徒が集まる宮城万路高校では、共通の知人を介して一連の騒動を知った者も居たらしく、北目や凪輝は同級生から質問攻めされたとぼやいていた。


 連休最終日。大町は夏芽、山手と待ち合わせて、冬美の居る病院を訪れていた。二人によれば、みかんは輝彦に付き添われ別の病院に搬送されたそうだ。

「別々で良かった……魅阿さんが冬美さんの事唆したらしいけど」

 大町は魅阿が昨日話していた事――冬美にとっては、みかんが姉らの敵になる事を夏芽らに伝えた。

「そんなの、こじつけじゃない。わかなさんが冬美さんのお姉さん達襲ったの、ただの八つ当たりだから、みかんさんは全然関係ないのに」

 山手いわく、冬美の姉と甥――金谷(かなや)母子が殺害されたのは、同じく仙台末娘事件の実行犯である家族や親戚が自分を残して捕まり、逆上したからだそうだ。

「それを今言ったとして、冬美が聞くと思う? ガチでみかんの事探してたんでしょ? 同じ病院だったら会った瞬間ぶっ飛ばしてたって」

「だろうね。僕もそう思った」

 学校をやめてまで仇討ちに専念する冬美なのだから、周りが何を言っても無駄だろう。大崎尚進高校で問題が起きた際、彼女に屈していた夏芽の言葉は、軽い口調とは裏腹に説得力があった。


 一人用の病室に着くと、冬美はアイドルの写真集をぼんやりと眺めていた。

「……夏芽?」

 冬美はゆっくりと、こちらに目を向けた。

「うちの事、許さないんじゃなかった?」

「何かしたらの話でしょ、今回はギリギリセーフ……それより」

「それより?」

「あの魅阿っての、去年の尚進祭来た子じゃん? ああいう奴だって気付いてなかったの?」

 夏芽の話だと、魅阿は冬美と同じ中学で、他の同郷人も連れて前回の尚進祭に顔を出していた。その際、冬美が学校裏サイトで非難していた相手がどんな人物か見に行っていたらしい。

「うん、ただ単に秋美(あきみ)姉達襲った犯人の従姉妹がどんな子か見たかったんだろうなって思ってた。それに、本当は祖志継家(あっち)側、共継だか何だかだったなんて知らなかったんだよね。そんな苗字名乗ってなかったし」

 襲撃直後、魅阿が冬美らにも本当の自分について明かしていたらしく、大町が改めて説明する必要はなかった。

「魅阿も魅阿で、あの子に会いたかったのかもね。うちが復讐だなんて考えてたのも気付いてたんだろうし……何考えてたんだか、あん時のうち」

 今の冬美からは恨みや怒りといった負の感情が感じられないどころか、それを他者目線で否定している様子が伺えた。

「仕返しだなんて、犯人の子や魅阿と同レベの発想じゃん」

 わかなは近親者を捕らえられて、魅阿は共継家として祖志継家や妃元家が次々と敗れた事に対してあのような事をしたと、冬美は刺された直後に魅阿から言われていたそうだ。そして、それと同様の事を企てていた自分を恥じているようだ。

「だから、うちはそういうの、もうやめる」

「冬美……そうだよ、やめちゃえやめちゃえ!」

 夏芽は冬美がようやく目を覚ましたと、自分の事のように喜んでいた。

「良かったね、夏芽さん」

「うん!」

 山手も夏芽の願いが叶った事を嬉しく思っているようだ。

 この後、冬美の家族が面会に来たので大町らは病院を後にし、山手は楽司らが居るヌカボシへ、大町は夏芽を送るため仙台駅にへ分かれた。

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