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大町編  作者: 麦果
第3章 大崎尚進高校
37/84

36. ミアさん

一部、暴言を吐くシーン等を含みます

(どこだ!! どこに逃げた!?)

 大町は血眼で〝ミア〟を探し、青葉区内を駆けずり回った。

 しばらくして、言われた特徴通りの女の子が足を広げて座り込んでいるのを見つけた。彼女は何かやりきったような、達成感に満ちた表情を浮かべていた。

「よし……あのさ、君〝ミア〟さんでしょ?」

「そうだよ。うちが〝ミア〟、共継魅阿(ともつぎみあ)っていうの。捕まえに来たんでしょ?」

 彼女は平然と名乗り出て、さらに屁理屈を並べ始めた。

「そんな気したんだよね。でも、悪いのは冬美とみかんだから。冬美はお姉さんと甥っ子殺したのわかなさんなのに、祖志継家ってだけでみんな敵だって言うし、そもそもみかんがおとなしく祖志継家に戻ってれば、そんな事も起きなかったんだから」

「黙って」

 大町は魅阿を睨んだが、彼女はヘラヘラしたままだ。

「何イキってんの? 全然怖くないんだけど……だからね、みかんこそがお姉さん達の仇だよって教えたら、冬美、必死になって探してさ、デートしてるの見つけて飛び出してったとこを……」

「黙れっつってんだろ!? おめぇが祖志継家の何なのかは分からねぇけど、二人も刺したんだろ!? グダグダ言ってねぇで、とっとと警察行けやぁ!!」

 大町は咆哮した。息を整え、我に返ると魅阿が目を潤ませ怯えていた。

「えっ、あ、その……でも、魅阿さんはそれだけの事したんだからさ」

 大町が魅阿の涙に戸惑いながら近寄ったその時、腹部に拳が入った。

「ぐっ……」

 腹を抱え足元をふらつかせた大町を誰かが支えた。同時に、その場から逃げ出した魅阿をもう一人が追いかけて行った。


「大町、大丈夫か?」

立町(たちまち)君?」

 大町を介抱していたのは、私服姿の立町だった。魅阿を追っているのは伊賀(いが)だそうだ。

「ここに来たって事は、さっきの聞いてたよね?」

「あぁ、聞いてた。大町、本気で怒ると怖えのな」

「そんなに? ……それより、立町君も祖志継家の事、たくさん知ってるでしょ?」

 大町は魅阿が名乗った〝共継〟という姓について立町に尋ねた。母方の先祖と祖志継家の間に因縁がある事から、彼も黒松同様あの一族には詳しいのだ。

「共継……また表に出て来たんだな」

「また、って?」

 立町の話によると、共継家は祖志継家の家来的存在らしい。血の繋がりはなく、妃元家のように結婚を通じて仲間入りした訳でもないが、先祖代々祖志継家をサポートしているそうだ。前に現れたのは数十年前。現在の様に事件が相次ぐ中で、共犯として逮捕者を出した事でその存在を知らせたのだという。

「そうだったんだ……」

「撒かれたよー」

 伊賀が戻って来た。

「けど、あれだけ騒いでみんなに見られたんだし、すぐ捕まるでしょ」

 現場は、今日のような休日は多くの人で賑わう場所だった。通りすがりに見ていた人も居ただろう。

「君達、ちょっといいかな?」

 誰かが通報していたのだろうか、二人の警察官が現れた。大町らが魅阿について証言すると、彼らはみかんと冬美に起こった事も先に聞いていたようで、礼を言ってさっそく魅阿を捜しに行った。

 警察の人達をその場で見送ると、伊賀のスマートフォンだけが気味の悪い音を鳴らした。

「何この音。あのアプリのせいだね……えっ?」

「何!?」

 不正なアプリケーションを持っていない大町、従来式携帯電話を使っている立町は、伊賀宛のメッセージを見せてもらった。

『周りがうるさくなってきたから今日はここまで。でも、まだ終わりじゃないから。夏休み、覚悟してなよ? by魅阿』

【宮城県祀陵高校】


立町将太郎(たちまちしょうたろう)

2年1組→3年4組・硬式野球部

紳士的で人当たりが良い。母方の先祖と祖志継家の因縁があるため、その事情に詳しい。恋人である伊賀とは付き合いが長い


伊賀藍輝(いがあいき)

2年3組→3年6組・バレーボール部

気配り上手な女の子。恋人である立町とは付き合いが長い



【祖志継家関係者】


共継魅阿(ともつぎみあ)

支援家系

高校3年

表向きは賑やかでごく普通の女の子だが、陰で祖志継家を支えている。冬美とは地元が一緒


祖志継わかな

分家

大町らと同い年

乱暴な娘。冬美の姉と甥を殺害し、仙台末娘事件実行犯では1番最後に逮捕された。みかんと生き別れた2番目の姉で、彼女と瓜二つ

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