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大町編  作者: 麦果
第3章 大崎尚進高校
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35. 冬美さんを取り巻く人々

「休塚夏芽さん、ね……僕は宮城万路高校3年の、大町理夢。同い年だし、呼び捨てとタメ語で構わないよ」

「大町ね、よろしくっ」

「うんっ」

 大町は夏芽と共に周辺の飲食店に移り、そこで改めて彼女の事情を教わった。

「祖志継家って基本、悪い人多いじゃん? 恨むのも居る訳よ」

「って事は、夏芽さんがそれ?」

「違う違う、うちは復讐とか言ってやばい事しようとしてる、仲良かった子止めたくてやってんの」

「友達だった子が、かぁ……」

 夏芽のかつての親友――冬美(ふゆみ)は大崎尚進高校での問題に、仙台末娘事件の被害者遺族として関与していた。解決後も復讐を企て、今も一族を追い掛け回しているそうだ。

「本当は裏サイトやってた時に止めたかったんだけど、あの子に弱み握られてたから……今はそんなのないから大丈夫なんだけどね」

「そうだったんだ」

 大町は夏芽の話が終わると、彼女と連絡先を交換する事になった。試しにプロフィールから学校名を消した状態で、電話番号やアドレス、SNSでの宛先など全て渡し合った。

「メッセージ送ってみ?」

「うん」

 大町は夏芽に一言送信した。

「よし、届いた。やっぱ学校名入れてるとだめなんだねー」

 夏芽から大町への返信も可能だった。それが分かると、夏芽は地元に帰って行った。


「そういう事が昨日あってさ」

 大町は翌日、ヌカボシで2days+の新曲に耳を傾けながら、八幡、夏椰と笹上、山手(やまて)に夏芽の事を報告した。

「そんな子居るって聞いてたけど、その子仙台来てたんだ!?」

「うん。今日も行くって、今朝メッセージ寄越したし」

「本当!? 会ってみたかったんだよね!」

 山手は大町から夏芽について詳しく聞くと、すぐに勘定を済ませて退店した。

「山手も末娘事件の時、仲良かった子と色々あったからねぇ」

「熊ヶ根(くまがね)ちゃんの事ね……元をたどれば夕陽なんだけどさ」

 夏椰と八幡が仙台末娘事件前当時の事を思い返した。

 夕陽が何かしでかした事は大町も前に聞いていたが、熊ヶ根という子は彼女に恋人が居ない事を冷やかされた後、タイプの男性を紹介するからと誘われて祖志継家に協力したらしい。

 その当時山手は熊ヶ根といつも一緒に居たが、仲の良い彼女に対しても自己主張が出来ず、表面上は同意する素振りを見せてきたという。仙台末娘事件の容疑者は全員逮捕されたが、解決直後のニュースで無関係な親子が巻き添えになったと知り、山手は事の重大さを実感して思い詰めたそうだ。

「楽司君が居なかったら大変な事になってたよ……」

 八幡によれば、ニュースを聞いた山手は姿をくらまし、楽司が夜遅くまで探し回ったらしい。

「ついでに言うとさ、楽司と山手同中なんだけど、あの後しばらくしてから……バレンタイン辺りからかなぁ、何か良い感じなのよ。事あるごとに山手の事気に掛けてるし」

「クラスの女子、あの二人付き合ってんじゃねーってめっちゃ言ってんぞ。楽司、山手さん目当てで週に何回か6組来るし」

 夏椰に続いて笹上も、楽司と山手の睦まじさを語った。

「しかし」

「まだ付き合ってないっていうね」

 笹上と夏椰が二人でオチを言った。

「どひゃっ! ……ま、まるで綺那さんじゃん」

 大町は綺那が宮町のクラスにほぼ毎日通い詰める様を思い出した。

(昼休みになると、宮町君のクラス行くーって。あの時って2年だったよな……あ、2年生って)

 振り返れば仙台末娘事件、それが絡んでの大崎尚進高校におけるトラブル、石巻浦見台高校での最初の事件、これらは全て2年生の頃に起きた出来事だ。自分が綺那と宮町にからかわれる事を除いて、至って普通の学校生活を送っていた頃、こちらの仲間達は既に祖志継家や妃元家と闘っていたのだ、と大町は改めて考えた。

「あ、綺那さんってのは前居たとこの友達ね。んじゃ、僕も夏芽さんに会って来るわ」

 大町も山手と同様に店を出た。


 大町は夏芽に今から行くとメッセージを送ったが、何回か確かめても返事はなく、まだ読んですらいないようだった。そのまましばらく歩いていると、多くの人が集まっているのが見えた。

(事故とか?)

 大町が駆け寄ると、野次馬には夏芽と山手も混ざっていた。彼女達は倒れている女の子二人、座り込む男の子一人を囲んでいた。輝彦とみかん、後は知らない子だった。

「ど、どういう事!?」

「〝ミア〟って言う子があの二人、冬美と髪赤い子刺して逃げた!」

 夏芽によると、彼女と山手が言い争う声を聞いて来た時には既に二人共倒れていたらしく、犯人である〝ミア〟という女の子は集まる人々を押し退けて逃走したそうだ。

「何者? その〝ミア〟って。特徴は?」

「冬美の友達、だったはず……身長が大町と同じくらいで、髪黒くて、前髪ぱっつんのツインテール」

「背ぇ僕ぐらいで、ツインテね。探してくる!」

 大町は〝ミア〟が逃げたという方向に走り出した。こちらに向かって来る救急車、パトロールカーとすれ違ったが、気に留めている場合ではなかった。

【宮城県祀陵高校】


山手璃津子(やまてりつこ)

2年1組→3年6組・美術部

仙台末娘事件を経て正義感が強くなった。水森とはクラス・部活が一緒で、この頃楽司と良い感じになっている



【祖志継家関係者】


狐塚冬美《きつねづかふゆみ》

復讐目的の追跡者

大崎尚進高校総合学科→退学

可愛らしい見た目とは裏腹に常に冷静で、インターネットを駆使し暗躍していた。夏芽の元親友


熊ヶ根輝帆(くまがねてるほ)

協力者

祀陵高校→退学

優等生気質で仙台末娘事件以前は恋愛経験なし。山手の元友人。八幡らと同じ中学出身で、夕陽とは合わなかった




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