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大町編  作者: 麦果
第3章 大崎尚進高校
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34. 尚進の女子

 不正なアプリケーションによる電話、SNSでの異変確認から一晩明け、ヌカボシには大町と北目、花壇、黒松、玲華、灯華が集まっていた。八幡も手の空いた時にはこちらに混ざっていた。

「ブロックとかされてるの、浦見台にも何人か居たよ。それで二人、友達に聞くのに出掛けてったって、さっき灯樹からメッセージ来た」

「そっか……そっちもかぁ」

 みんなどうしたんだろうねぇ、と玲華がため息を漏らした。彼女も部活繋がりで大崎尚進高校に友達が居るそうだ。

「電話とSNS完全に途切れたか……あ、メールは? EメールでもCメールでも、その他諸々でも」

 花壇がもう一つの手段を思い出したようだ。

「あ! 全然使わない分、手出されてなかったりして」

 玲華と黒松がその場で友人にメールを送ってみた。八幡も部屋に上がり、すぐ戻って来た。

「だめ、送れない」

「俺らのも、宛先不明で返って来た」

 八幡と黒松の報告に一同は落胆した。

「何なんだか……あ、待って、友達から」

 灯華が電話に出るため席を外した。3分程経って、新たな情報が伝えられた。

「尚進絡みで他にも……無線で、尚進の悪口とか垂れ流してるの居るんだって」

 灯華によれば、同級生の愛好家が自宅の無線局で違法局からと見られる怪電波を受信したらしい。それは男、時々若い女の声で大崎尚進高校を名指しで批判し、度々〝連帯責任〟という言葉を発するのだが、何に対する責任かは不明との事だった。

「何それ超イミフぅ」

 玲華が顔をしかめた。

「けど、やっぱり尚進なんだね……あそこ、今はもう何も関係ないのに」

 北目は、大崎尚進高校生と繋がりはないものの、昨年秋にあったというトラブルについては把握しているようだった。

 仙台末娘事件に巻き込まれた母子の遺族である一生徒が、絶縁はしているものの祖志継姓を名乗っていた女子生徒を学校裏サイトで非難し、それが原因で彼女が実の父親を毒キノコで殺害しかけた、という事件があったらしい。

「前にうめ達がもらったのもだけど……何でまた尚進が? もう全然関係ないじゃん」

「確かに、祖志継家に歯向かっていると言われるようなのは居ないしな」

 大崎尚進高校におけるトラブルでは、当事者は二人共最終的には退学していたそうだ。今は祖志継家と無関係、一族に叩かれる理由は皆無なはずだ。

「それが〝連帯責任〟って事じゃないよね? 同じ学校の子がやったんだから、みたいな」

 大町が呟くと、みんなが彼に注目した。

「……さすがに、無茶苦茶すぎてあり得ないかな」

「それだ! あり得るぞ、祖志継家(あいつら)なら言いかねない!」

 黒松が声を上げた。

「クロが言うなら……そうだな、大町ナイス!」

 花壇が手を叩いた。


 少し経って、一組のカップルが入店した。同年代らしき赤髪の男子が、サイドポニーテールでスタイルの良い彼女を連れていた。

「姉貴!」

「瀬里さん!? 丸沼君も……友達の所は?」

 このカップル――丸沼(まるぬま)と瀬里(せり)が、大崎市に向かっていたはずの二人だった。途中で何か分かったらしく、予定を変更して古川からバスで駆けつけたそうだ。

「で、どうしたの?」

「あれ、ガラケーの人は大丈夫だった! 不正アプリ入んないから!」

「小、中学校の同級生で一人だけガラケーの子が居て、その子が連絡くれたんだ」

 従来の携帯電話だと不正なアプリケーションに含まれたマルウェア、ウイルスには感染しない。それでも今の高校生はスマートフォンが主流でその大多数が被害に遭い、少数派の従来式携帯電話ユーザーは無事だったというのだ。

「例のあれが解除されるまで、その子が代わりに連絡するって。大学(だいがく)っていう女の子」

 瀬里は大学の連絡先を預かっていて、それを北目と八幡に渡した。

 この後丸沼と瀬里の二人も交えて喋りながらランチを食べ、関連校生の会合は終了した。


 ヌカボシを出た大町はそのまま買い物に行く事にし、その前に北目、丸沼と瀬里を仙台駅で見送った。

「じゃあねー……ん?」

 大町は振り向いた。小柄で髪は茶色のポニーテール、そばかすと八重歯が特徴的で明るい感じの女の子に肩を叩かれていた。

「どうしたんですか?」

「今一緒に居たのって、浦見台の丸沼と、その彼女だった……ですよね?」

「えっ、あ、まぁ……」

 素性を明かさない彼女に対し、はっきりと答え難かった。

「まぁ、って……大丈夫ですよ、うちは、あいつらの味方ですから」

「味方?」

「はい。うちも、訳あって祖志継家とか、その周りの連中追っかけてるので……あ、えと、名前言ってなかったですよね?」

 少女は生徒手帳の裏側、学校名と氏名が書かれた面を見せて自己紹介をした。

「大崎尚進高校3年、休塚夏芽(やすみづかなつめ)っていいます」

【学校法人秀堂学園石巻浦見台高校】


丸沼蒼吾(まるぬまそうご)/ぬまお

総合コース2年6組→3年3組・ソフトテニス部

陽気な、クラスのまとめ役兼ムードメーカー。瀬里の彼氏で、出身地である大崎市に昔からの友達が居る


雷神瀬里(らいじんせり)

総合コース2年6組→3年5組・ソフトテニス部

クラスの中心格で強気な性格。丸沼の彼女で、2年生事件には彼や友人と共に立ち向かった



【宮城県大崎尚進(しょうしん)高校】


大学慧都(だいがくけいと)

総合学科地域国際系列2年1組→3年1組

海外研究部・社会研究部

海外に関心を持つ、まじめな子。過去の経験から賑やかで活発な同級生を苦手としていたが、トラブル解決後には克服出来て打ち解けている


休塚夏芽(やすみづかなつめ)

総合学科商業経済系列2年4組→3年4組

ソフトテニス部

明朗な性格だが、トラブルと片思い解消を経て以前より勇気を持つようになった。同じ高校の友達に加え、祖志継家に立ち向かう他校生も知っている


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