第1章 登場人物・舞台設定
※第一章「戦国の終焉編」の内容を含みます。
【世界設定】
■舞台
古代中国、戦国時代末期。
秦、韓、趙、魏、楚、燕、斉の七国が争う中、秦王・政は天下統一を目指している。
■男女比
この世界では、生まれてくる子供の九割が女性で、男性は一割ほどしか存在しない。
兵士や武将、官吏の大半は女性。希少な男性は血を残す存在として保護され、特に王族男性の殺害は重大な禁忌とされる。
ただし、男性は自由な存在とは限らない。血統や政略のために囲われ、王族の男性は玉座を正当化する「生きた玉璽」として利用されることもある。
■史実との違い
秦王政、蒙恬、王翦、李牧、項羽など、史実では男性だった人物の多くが女性として生まれている。
国の興亡は史実に近い形で進むが、人物の性別や関係、転生者・扶蘇の介入によって、その経緯は変化している。
■扶蘇の未来知識
扶蘇は前世で東洋学を専攻しており、秦の統一から秦末、楚漢戦争までの歴史を知っている。
未来知識は戦や陰謀を予測する武器となる一方、歴史へ介入するほど、本来の史実との差も広がっていく。
【秦】
■扶蘇
本作の主人公。秦王・政の長子で、前世は東洋学を専攻する大学生。
史実では趙高と胡亥の陰謀によって自害させられる運命にある。
希少な男性として守られて育つが、「守られる男ではなく、守れる男」になるため、蒙恬から兵法と武を学ぶ。
未来知識を使って歴史を変える一方、自らの策が奪った命の重さにも苦しんでいる。
■政
秦王。扶蘇の母。後の始皇帝。
冷徹な決断力と強い執念を持ち、六国を滅ぼして天下統一を成し遂げる。
母として扶蘇を愛しながら、その異様な知識と出生には、拭いきれない恐れを抱いている。
■蒙恬
秦の女将軍。扶蘇の乳母であり、武と兵法の師。
赤子の頃から扶蘇を育ててきた、最も身近な女性。楚攻めでは絶体絶命の窮地に陥るが、扶蘇たちに救出される。
扶蘇にとって、守りたい者の象徴でもある。
■蒙凛
蒙恬の娘。扶蘇の幼馴染。
学問では扶蘇に及ばないが、武では上回る。楚では扶蘇、王離とともに母・蒙恬の救出へ向かった。
扶蘇を一人の男性として慕っている。
■呂不韋
秦の宰相。男性。
扶蘇を新王に据える反乱を企てるが、昌平君の離反によって失敗。
死の直前、秦王家の血に関わる重大な秘密を政へ明かした。
■嫪毐
呂不韋の反乱で兵を率いた男性。
反乱後に政の側へ置かれ、胡亥の父となるが、後に処刑された。
■胡亥
扶蘇の異父弟。政と嫪毐の子。
希少な男性であることを特権と考え、尊大に育つ。
史実では趙高に担がれ、二世皇帝となる人物。
■趙高
宮中文書を扱う女官。
秦王家の血に関する秘密を知り、優秀な扶蘇を危険視している。
操りやすい胡亥へ接近し、将来の陰謀に備えている。
■王翦
秦第一の女将軍。王賁の母、王離の祖母。
勝てる戦しかしない老練な宿将。六十万の大軍を率い、楚を滅ぼした。
戦場だけでなく、王や群臣の疑念まで読む知略家。
■王賁
王翦の娘。王離の母。
魏の王都・大梁を攻略した女将軍。
敵将・李牧を弔う扶蘇を目撃し、魏攻めを通じて、その優しさと統治者としての器を認める。
■王離
王賁の娘。扶蘇と同世代の若き女将。
魏攻めで初陣を迎え、楚では王家の私兵を率いて扶蘇に同行した。
扶蘇を強く慕っている。
■李信
男性でありながら、武功によって将軍まで上り詰めた叩き上げ。
楚攻めで深追いし、二十万の軍を失って失脚するが、燕・代討伐で功を立てて復帰した。
楚での失敗を知る蒙恬と、政から評価される扶蘇に昏い感情を抱いている。
■昌平君
楚王家の血を引く秦の重臣。
呂不韋を裏切って政を勝利へ導くが、その経歴と血筋から政に信用されず、次第に秦から離れていく。
最後には楚へ帰り、楚の女王として故国に殉じた。
■楊端和・羌瘣
秦の女将軍。
王翦とともに趙攻めへ参加した、優れた武人たち。
【趙】
■李牧
趙の女将軍。軍神と呼ばれる名将。
王翦をして正面からは勝てないと言わしめるが、扶蘇の献策と郭開の讒言によって失脚する。
愛する司馬尚と生きることを願いながら、守るべき王に裏切られて死亡した。
遺骸は扶蘇と蒙恬によって密かに埋葬される。
■司馬尚
李牧の副将であり、恋人。男性。
桓齮を討ち、楊端和を破るほどの武人。
李牧を失った後も趙兵を守るために戦い、王翦軍との戦いで死亡した。
■趙王・遷
趙の王。残虐かつ猜疑心の強い男性。
郭開の讒言を信じ、国を守っていた李牧を反逆者として捕らえた。
■郭開
趙の宰相。
秦の賄賂を受け、李牧を失脚させた奸臣。秦軍が迫ると、黄金を抱えて逃亡した。
【燕】
■燕丹
燕の公子。女性。
幼い頃、邯鄲で政とともに人質生活を送り、親友となった。
秦を恐れて荊軻を送り込むが失敗。燕滅亡後に捕らえられるものの、政によって命を救われる。
■荊軻
燕から送り込まれた男性の刺客。
笛に隠した短剣で政を襲うが、十歳の扶蘇に斬られた。
扶蘇が初めて自らの手で殺した人物。
【楚】
■項燕
楚の名将。男性。
李信の二十万を壊滅させるが、王翦の持久戦には敗れる。
楚の滅亡とともに、昌平君と命を絶った。
■項梁
項燕の娘。項羽の叔母。
楚滅亡の際、項家の血を残すため、項羽を連れて脱出した。
■項羽
項燕の孫。女性。
幼いながら、人並み外れた体格と王の器を持つ。
祖国を滅ぼした秦の大軍に恐怖と憧れを抱き、祖父から「秦を滅ぼす者」の遺志を託された。
【斉】
■田儋
斉王家に連なる男性武将。
秦への降伏を拒み、寡兵で遊撃戦を展開した。
王にも朝廷にも見放されながら抵抗を続け、その生き方は扶蘇の心に強く残った。
【第一章終了時点】
秦は六国を滅ぼし、五百年に及ぶ戦乱を終わらせた。
扶蘇は未来を知るだけの子供から、自ら軍を率い、人を救い、時には命を奪う決断を下す青年へと成長した。
だが宮中では、趙高が扶蘇の出生の秘密を握り、胡亥を利用する機会を待っている。李信もまた、扶蘇と蒙恬への敵意を育てている。
天下統一は、終わりではない。
史実における扶蘇の死と、秦帝国の滅亡は、むしろここから近づいてくる。




