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再会 ~All That I Needed(Was You)~  作者: あだちゆう
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トンネル

パウロの後継者として現れた神官は、過ちこそ一切犯さなかったが、笑顔もなく一切が事務的な人間。

悪くは決してない。そして、それでいいのだ。そうするしか、生きのびる道はなくて、心を捨てることだけが唯一の正解としか認められてはいないのだ。


教育を施すのは、社会性を身につけるため。

そして社会性って何かって言ったら、形にはまってみんなと同じ方向を向くこと。たとえそれが普遍的に間違っていようが、正しかろうが。みんなが間違っていたら、自分も間違うことが世の中では正しいことなのだ。そして、この世界には正しいものなんてなくて、正しいものと言えば暴力くらいなものだ。「戦争をしろ」といわれたら「はい」と言えること、それが社会性だ。

狂った秩序にNOをつきつけた瞬間、この世界は崩壊し、そのまえにつきつけた人間は生きていく術すら失ってしまうか、結局この狂った秩序に巻き込まれていくしかないのだ。


ハンスはいまやすっかり惨めな何でもない人間。

都市に閉じ込められ、その先に飛び上がることもできないまま日々を漫然と過ごしている青年でしかない。

こんなことではいけない、こんなことではいけないと思い続けながら、その思いは残酷なほどまでに踏みにじられた。

新しく自費で購入したギターの手触りも弾き心地も抜群だった。だけど、少し寂しかった。

「魔法というのは、夢を叶える力のことだ。理想を現実にする力のことだ。」

ユタカはそう歌っていた。

なんてことを、ハンスが歌った瞬間、失笑が起こった。

それ以来、ハンスはそんなことを歌詞にして人前で歌うことをやめた。あれだけ人びとを熱狂の渦に巻き込んだユタカはもう「過去の人」「忘れられた人」だ。

だけど、ハンスはひとりになってもずっと信じ続けていた。

理想を描き続けること。その実現に何度挫折しても決してあきらめないで何度も立ち上がること。

それは、同時に孤独と疑いの暗いトンネルをたった一人で歩いていくことなのだ。



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