【ユリア編】 スターウォッチャー その2
――そして夜7時30分。
身支度を済ませ、寮の入り口で先輩を待つ。気温はそこまで寒くもないし、暑くもない、とても過ごしやすい温度だ。
ついでに空を見上げてみる。――先輩の言ったとおり、雲がほとんどなく、綺麗な星空が既に広がっていた。これは確かに天文部はじっとしていられないかもしれない。
「あ、ごめんね穣くん、待った?」
「いえ、大丈夫です。……ふっ!」
「わわっ……な、何で急にしゃがんだの?」
「いえ、何だろう……無意識に身構えちゃったな……」
「あ、分かった。前にあたしに悪戯されたから警戒したんでしょう?」
「ああ~、それを身体が覚えちゃってたのか……」
「心配しなくても、今日は悪戯をする気はないよ。だから、身構えなくて平気だよ」
「今日は、なんですね」
「うん、今日は、だよ。しないなんて言えないもん」
「ですよね」
「それより……穣くん、いつもとちょっと雰囲気違うね」
「そ、そうですか?」
「うん、何だか大人っぽいかも」
「先輩に誘ってもらったんで、一緒に歩くのに恥ずかしくない格好をしないとと思ったので……」
「あはは、そんなの気にしなくてもいいのに……」
「いやいや。それよりも……先輩もいつもと雰囲気違いますね」
「えへへ、どう、かな?」
「ボキャ貧なので月並みの言葉しか言えないですが……すごくいいですよ」
いつもは結わいている髪を今日はおろしていて、年頃の可愛らしい服を着ている。本当に女の子って、髪型、服装でガラッと印象が変わるな。
「うん、すごくいいです」
「二回もありがとう。今日はよろしくね?」
「はい、こちらこそ。……で、何処に向かうんですか?」
「あ、そういえばまだ言ってなかったね。実は星を見るのに良いポイントがあるんだ~。少し歩くんだけど、平気かな?」
「はい。後、言われた通り懐中電灯持ってきたんですが、外灯があんまりないところなんですか?」
「そうだね。それが今日のおでかけの一番のキーアイテムだよ」
「キーアイテム?」
「穣くんを誘った大きな理由は、それに隠されてるよ」
「…………?」
「とりあえず、出発進行~。案内するから」
「わ、分かりました」
懐中電灯がキーアイテム……出発したばっかりの俺には意味が全く分からなかった……。
…………しかし、途中からその意味が分かることになる。
…………。




