【ユリア編】 スターウォッチャー
――それは突然のお誘いだった。
休日。宿題、勉強を終えて、俺は部屋でのんびり過ごしていると、一本の電話が鳴った。誰からだろうと携帯の画面を見てみると。
「せ、先輩からだ……」
ほとんどかかってきたことのない連絡相手に動揺が隠せないが、とりあえず出ないわけにはいかないだろう。俺は画面をタップして電話に出る。
「はい、もしもし」
「あ、穣くん? あたし、ユリアだよ~。こんにちは」
「はい、こんにちは。どうしたんですか? 俺に電話なんて……」
「うふふ、ちょっと、穣くんの声が聞きたくなって……なんて言ったらどうする?」
「小躍りして喜ぶと思います」
「あはは、そっか。一応理由があって……穣くん、今日の夜って何かご予定はある?」
「夜ですか? ……いえ、特にないですけど」
「ホント? じゃあさ、あたしと一緒に星を見に行くの付き合ってくれないかな?」
「星、ですか?」
「うん。今日は夜までずっと天気が良くて、すっごく綺麗に星が見える日なんだって。天文部としては、そんな日に星を見たいわけですよ。でも、急に思いついたから、一緒に行ってくれる人は限られるから……」
「それで、俺なんかに声をかけたんですか?」
「うん。何かおかしいところあるかな?」
「いや……特に……」
とは流れで言ったが、異性の俺でいいのかという疑問は残る。普通は天文部で仲の良い人を誘ったりしそうなもんだけど。
「もちろん、ダメなら言ってくれていいけど、もしよかったら、一緒に行ってくれると嬉しいかな~なんて」
「……ホントに俺でいいんですか?」
「うん、もちろん。だから電話かけたんだし……それに……」
「それに?」
「ううん、多分後で分かるよ」
「そうですか。……分かりました、付き合わせて下さい」
「わーい、ありがとう。じゃあ、夜ご飯一緒に食べて、それから準備して出発しよう」
「了解しました」
「楽しみにしてるね?」
「はい、よろしくお願いします」
ピッ。
――学園の男子生徒なら血の涙を流して喜びそうなイベントが夜に入ったな。しかも俺からではなく、向こうから誘ってもらえるという特典付き。
まあ俺はビビリだから、自分から先輩を遊びに誘ったりなんて恐れ多くてできないけどな。
何はともあれ、先輩と一緒におでかけするのに相応しい格好だけはしないといけない。俺はクローゼットにしまっている洋服をチェックし、コーディネートを考えるのだった。
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