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【ユリア編】 悪戯っ子世にはばかる?

「うう、痛かったよ~……」

「当然の報いだな。自分の行いを悔い改めよ」

「そんなこと言ったってさ~……付け焼刃で治すにはこの染み付いた習慣は治り難いよ~」

「百歩譲って治り辛いとしても、お前にはそれを治す努力が見受けられない。お前のせいで俺まで遅刻しそうになるんだぞ? 他人にまで迷惑をかけるってことを忘れるんじゃねぇ」

「他人じゃないもん、肉親だもん」

「……どうやらもう一発デコピンショット喰らいたいみたいだな。今度は指に炎纏ってショットするぞ? おでこに後が付くくらいに」

「そ、それは嫌だ~!」

「じゃあ治せ! 次はホントに置いていくからな。肝に銘じておけ、このねぼすけが~!」

「あーん、お兄ちゃん怖いよ~」

 いつになったらこいつの寝坊癖は治るんだろうか……低血圧だからとか言うレベルではない。下手したら病気かもしれないぞ?

 今のうちに治しておかなければ、将来職を持ったときに絶対に後悔することになる。時間の乱れは関係の乱れ、これをほのかにはしっかり覚えてほしい。


 …………。


 ――学園に到着。今日も一日頑張りましょう。

 ……とその時。

「あ、おーい、穣くん」

「ん?」

 この綺麗な声は……そう思い後ろを振り返ると――

「……誰もいない?」

 いやいや、そんなはずは、聞き間違いじゃなかったはずなんだが……」

「何キョロキョロしてるの? お兄ちゃん」

「いや、ユリア先輩の声が聞こえた気がしたんだよ」

「そうなの?」

「だけど、その姿が見えない」

「……お兄ちゃん、初老?」

「いや、そんなはずはない。前の聴力検査で異常は見られなかった」

「じゃあ、あんまりにもユリア先輩に会いたいから無意識に?」

「い、いや、そんなこともない……」

「ええ~? そうなの? それはちょっと残念だな~」

「うわあぁああああああああああああああ!!!!」

「お、お兄ちゃん、驚きすぎだよ」

「あっはははは、思ったよりもビックリしてるね」

「せせせせせせせ先輩!? どどどどどど何処から出てきたんですか!?」

「せが多いし、ども多すぎるよお兄ちゃん……」

「うふふ~、作戦成功、だね」

「ホントにビックリしました。鳥肌が3センチくらい立ちましたよ……」

「そこまで立ったら立派な鳥になれそうね」

「で、先輩。一体どんな方法で俺を驚かせたんですか?」

「まず穣くんに声をかけるでしょう? 振り返った瞬間にシャドーの魔法を使って隠れるでしょう? 穣くんまでぐーっと近付くでしょう? 魔法を解くでしょう? ……はい、ビックリ仰天」

「なるほど。……ん?」

 何か、同じ方法でビックリさせられた記憶があるような……。……いや、まさかね。

「いや~、心臓止まるかと思いましたよ」

「うふふ、次は止めちゃおうかな? なーんて。穣くんのハートを仕留めちゃうぞ?」

「仕留めるが至極物理的な意味ですね」

「それはそれでアリじゃないかな~?」

「まあ、先輩に仕留められたいって人は多いから、アリでしょうね。でも、ギリギリ生かしてくれると俺は助かりますね」

「そうよね、まだ遣り残したことあるだろうしね。分かった、次やる時も寿命はちゃんと残しておくよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、満足したから行くね? じゃあね~」

「はい、今日も頑張りましょう」

「ユリア先輩、ばいばーい!」

 ――先輩、ホントにただ俺を驚かすために声をかけたんだろうか?

「はぁ~、いいな~。私もユリア先輩みたいになりたかったな~」

「何を言い出すんだよ、急に……」

「だって、スタイル良いし、性格も良いし、勉強もできるし、スポーツもできる……そして極め付けにあの顔立ち。もう、非の打ち所が全くないじゃない?」

「確かに、お前が持っていないものを全て持っているな、先輩は」

「ぐはぁ!? お、お兄ちゃん、何でそんなストレートに……」

「約束を破ったお前のことを若干根に持ってるから。もっと攻撃してもいいか?」

「や、やめてください。ホントに倒れちゃいますから~……」

「ちっ……」

「舌打ちが聞こえた気が……でも、ホントにそう思うよ。お兄ちゃんだって、ああいう女の子が自分の彼女だったら嬉しいでしょう?」

「そりゃあ、そう思うけど」

 万に一つもそんな可能性はないだろうが……。

「でしょう? あ~あ、中身だけ入れ替わる魔法があればいいのにな~」

「お前が先輩と入れ替わったら、一日で先輩の評価が地の底まで落ちるぞ」

「そ、そんな~。ちゃ、ちゃんとユリア先輩の演技すればいいんでしょう? わ、私だって本気を出せばそれくらい――」

「……………………」

「すいません調子に乗りました私には到底そんなことできません間違ってましただからその冷ややかな目線を向けるのをやめてくださいお願いします」

「そうだよな。もしそれ以上の台詞を続けようものなら、俺はさっきお前がダウンしかけた台詞をもう一度放っていたところだ」」

「く、首の皮が一枚繋がった……」

「まあ、一つ言えるのは、先輩がああいう感じになれたのは、一生懸命自分なりに努力をしてきたからってことだよな」

「そうだね」

「だからお前はもっと努力しろ。分かったな?」

「は、はーい」

「じゃあ、そろそろ行くぞ?」

「うん」


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