【陽愛子編】 部室脱出パニック!! その3
――というわけである。なかなか危険な状況だ。
「…………体勢、きつくないか? 陽愛子」
「う、うん。私は全然大丈夫だよ。それより穣くんの方がきついんじゃない? ずっと腕張ってるし」
「それはいいんだ。こうしてないと、陽愛子が怪我しちまうかもしれないからな」
「穣くん……」
「しかし、何か方法はないかね? 助けが来るのを待つって言ったけど、そもそも助けが来るのかが心配だ」
「練習始まっちゃうと、部室に来ることってほとんどないんだよね」
「そうだよな。……でも、あれだろ? 陽愛子が部活に来てないって分かれば、きっと探したりしてくれるよな?」
「そうだね。それは、あるかもしれないね」
「携帯があれば、誰かに繋いで助けてもらうことができるんだが……」
「携帯……バッグの中だもんね」
残念なことにバッグは部室の外にある。よってその作戦は不可能だ。
「どうしよう……」
「うーん……」
二人で悩む時間がしばし続く。
――今更だが、かなり陽愛子との距離が近い。こんなに近くで見たのは今までにない。どうやら、向こうもその事に気付いたようで。
「……えへへ、すごく近いね」
「そ、そうだな」
「ちょっと、照れちゃうな……」
「照れられると、俺まで照れちまうって」
「あ、ごめん」
「いや、謝らなくてもいいが……」
「…………」
何だろう、意識すると気まずくなってしまう。それにこんな状況だと普段してるような馬鹿馬鹿しい会話もし辛いし……。何で距離が近いなんて事を考えてしまったんだ俺は。
「……………………」
「…………?」
でも、こうして見ると、陽愛子はかなり美人だなってことが分かる。目、鼻、口と全て均整がとれた顔立ちをしている。それで性格が良いんだから、男女問わず人気するのも頷ける。
「どうしたの? 穣くん」
「ああ、いや、何でもない。……早く、助けが来るといいな」
「そうだね。……でも、良かったな」
「え? 何がだ?」
「ううん、この状況に一緒にいるのが穣くんでよかったな~って。他の人だったらもっと不安になってるだろうけど、穣くんだから、不思議と不安にならないんだよね。何でだろう?」
「まあ、顔見知りだからな。俺も陽愛子じゃなきゃもっと取り乱してるだろうし」
「えへへ、同じだね」
「だな」
「――あ、メガネ落ちそうになってるよ? 穣くん」
そう言って、俺のメガネを治してくれる。――ちょっと、今のはかなり可愛いぞ、陽愛子。こういう一面に、男は心を擽られるんだろう。理性が弱い男ならどうにかなっちまう可能性があるな。
「……? 穣くん?」
「ああ、何でもない。ありがとう」
「うん。……いてて」
「ん? どうした?」
「ううん、何か背中に当たってるみたいで……ちょっとだけ動いてもいいかな?」
「ああ、気をつけてな」
「うん。……よいっしょ」
陽愛子はゆっくり身体を動かし、背中の様子を確認する。そうすると、もちろんスカートも揺れ動くわけで。
「…………」
非常に悩ましい。一言で表すなら、パンツ見えそうだ。
「――あ、とれた」
どうやら、背中に当たっていたのはキーホルダーだったようだ。
「もう、大丈夫か?」
「うん。ありがとう穣くん。――よいしょっと」
「!?」
「あ……!?」
「――ごめん、見ちゃった」
「い、いいよ謝らなくて。今のは私のせいだから」
「可愛いパンツだったな」
「い、言わなくていいよ穣くん!? そんなのフォローしなくていいから~!」
「すまん、いつもの癖が……」
「……あははは」
「はは……」
――ピンクのパンツでした。




