【陽愛子編】 部室脱出パニック!!
「……ん、どうだ? 陽愛子」
「ん……うん、痛くはないよ?」
「そ、そうか。だけど……これ以上動きようがないな」
「やっぱり? そうだよね。穣くんの背中に色々あるんだし……」
「まずいな、これは……」
――今俺たちがこういう状況になったのは、15分前に遡る。
…………。
――ふう、今日も無事に学園生活が終わりました。特に放課後に予定はないため、寄り道せずにまっすぐ家に帰ろうかな、と思っていたところ。
「よい、しょっと……」
「おい、陽愛子」
「あ、穣くん。今日もお疲れ様~」
「ああ。……その大荷物どうしたんだ?」
大きいスポーツ用のバッグを二つも抱えている。
「……夜逃げでもするのか?」
「ええ~? そんなことしないよ。まだまだこの学園でやりたいこといっぱいあるから。これ、テニスで使う道具なんだ。荷物当番で今日持っていかなくちゃいけないの」
「そうなのか。……これを一人で持ってきたのか?」
「うん、肩が外れそうになったけど、根性で持ってきたよ」
「……………………」
「後は部室に持っていくだけだから、ゴールは目の前だよ」
――これは友人としては放っておけないだろう。
「陽愛子、それ貸せよ。俺も持って行くの手伝ってやる」
「ええ? いいの?」
「ああ。というか、今の陽愛子の話を聞いて、大変だな、じゃあ頑張ってもっていけよ? なんて台詞を言えない」
「そ、そうかな」
「困った時に助けてあげるのが、本当に友人ってもんだろう。だから、手伝うよ」
「うん、ありがとう穣くん」
「そのバッグ二つとも貸せよ。代わりに俺のバッグ持ってくれ。そんなに重くないから」
「ええ? 大丈夫なの? 結構……ううん、かなり重いと思うけど」
「それを陽愛子はここまで持ってきたんだろう? なら俺にだって持てるはずだ」
男のプライドに賭けて、持たないわけにはいかないぜ。俺は両肩にバッグを吊り下げる。
「ふん! ……よし、大丈夫だ」
「わ~、さすが、男の子はパワーが違うね~」
「まあ、豊なら4つぐらい持てるだろうけどな」
「そ、そんなに? でもそっか、すごい体格良いもんね、豊くん」
「じゃあ行こうぜ。部室に案内してくれ」
「うん、分かった」
俺は陽愛子と共に教室を後にした。
…………。
「――ひー、ひー」
「だ、大丈夫? 穣くん」
「だ、大丈夫だ。こんなの余裕だぜ」
「顔の表情と台詞にすごいギャップを感じるけど……やっぱり一つ持つよ。悪いもん」
「いや、大丈夫だ。ここで、あきらめるわけにはいかないんだ!」
「……映画のクライマックスみたい」
「映画のクライマックスでこの映像流れたらとんでもなくシュールだけどな」
「あはは、そうだね。逆にちょっと興味があるかも。……後少しだから」
「ああ」




