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第76話 「魔物 の 群れ」

10万PVいきました!ありがとうございます!




 向かってくる魔物に対抗するために、魔力を高めていく。

 まずは、突進力が高く、一番早くこちらへとやってくるであろう南方面ラッシュホーンからだな。


「行きますよっと!!」


 馬車の屋根からセナが飛び降りる。

 それを横目に、走ってくるラッシュホーンの走るコースを限定するために、魔法で石の壁『ストーンウォール』を作り出す。

 丁度、こちらに来るほど狭くなるように。

 そして、足元に魔法で石のハードルを次々と作り出す。


「ブモー!!!」


 いくつか破壊されたが、先頭を走っていたラッシュホーンが、ハードルの一つに足を引っ掛け転倒する。

 すると、後続を走っていたラッシュホーンたちが、雪崩なだれのように次々と同じように転倒していく。

 前世で見た、マラソンやロードレースのスタートで、一人が転倒すると後続が転ぶ映像を思い出した。

 あれ、かなり危険なんだよな。


「セナ、後は頼む」

「まっかせて下さい!」


 流石に全てのラッシュホーンが転んだわけではないが、それでも走っていた集団を止めることには成功した。

 動きが止まった後ろの方に、改めて魔法で石壁を作って退路を断つ。

 少なくとも、これでほとんどのラッシュホーンは動けない。

 後は、時間はかかるだろうけど、セナに任せておけば良いと思う。

 これで、お肉が食べれるな!

 西のレインムル山から飛んできている蝙蝠のようなバラバムとハーピィは、まだシルエットとして遠くに見えるぐらいでしかない。

 近付いてきたらエリィに任せておけば大丈夫かな。今のエリィなら、弓でかなりの飛距離を出せるし。

 次は北側からきているゴブリンの集団だな。

 飛んでくる矢や魔法などを、同じように魔法で打ち落としながらそちらへと目を向けると、クスノがゴブリンの先頭集団と丁度ぶつかっているところだった。


「『炎剣・緋斬』」


 炎を纏った短剣を振り回し、クスノへと群がるゴブリンたちが振り上げた武器ごと焼ききられ、燃やされて消し炭になっていく。

 クスノの後ろから近付こうとするゴブリンもいたが、尻尾の先にともした炎―――狐火で焼却された。

 そして、ただのゴブリンの数が半分も切ろうとした時、後ろに控えていた一際ひときわ豪華な鎧に、剣や槍を持ったゴブリンたちが出てきた。

 鑑定してみると、ゴブリン・ソードマンとゴブリン・ランサーと出た。

 やはり、うちのスケルトンたちと同じように、魔物もクラスが変わったりするようだ。


「ガァアアア!!!」

「アァアアア!!」

「………ふっ!」


 ゴブリン・ランサーが中距離から繰り出す槍を、かわし、時には手に持った短剣で弾いて回避していく。

 避けるクスノの体勢をさらに崩そうと、その間を縫うようにゴブリン・ソードマンが剣を突き刺し、なぎ払っていく。

 息もつかせず繰り出される2匹のゴブリンの攻撃を、クスノはなんとかさばいている。

 だけど、さっきまでゴブリンの集団と戦って魔力を消費したためか、少しだけ動きが悪く見える。

 と思ったその時、クスノが珍しく少しだけ足を滑らせた。


「…っ!」


 その隙をゴブリンが逃すわけもなく、ゴブリン・ソードマンとゴブリン・ランサーが左右から畳み掛ける。


「クスノ!………って、あれ?」


 ゴブリンたちの攻撃がクスノに当たったと思った瞬間、ゴブリン・ソードマンとゴブリン・ランサーの首が落ちて絶命した。

 後に残ったのは、左右に短剣を振りぬいたクスノだった。

 ゴブリン・ソードマンとゴブリン・ランサーが攻撃したところを探ると、クスノの魔力の残滓ざんしが感じられた。

 なるほど。尻尾の先にともした炎と魔力によって、陽炎のような視覚をあざむくく幻覚のようなものを作り出したのか。

 その幻覚を攻撃している一瞬の隙に、左右の短剣をゴブリンたちへと振るったようだ。

 …分身の術とかその内できそうだな。時間のあるときにでも試してみよう。

 クスノが無事なのを確認しつつ、馬車へと飛んでくる矢や魔法のことごとくを相殺していく。


「というか、やけにこっちへ攻撃が飛んでくるな。一応、町の入り口に冒険者が集まっていたはずなんだけど…」


 レモルンの町の北門と南門までサーチフィールドを広げていく。

 すると、冒険者たちが中々の抵抗をしている所為か、ゴブリンたちがレモルンの町の中へと入ることができていないことが分かった。

 その代わりなのか、町の外にいて容易に襲える僕たちの方へと向かってくる数が多くなったようだ。

 いっそのこと、ラッシュホーンたちをゴブリンの方向へと走らせるように、石壁でコースを作った方が良かったかもしれないな。

 というか今作るか。先頭を転ばせただけで、ラッシュホーンの生きている数自体は大して減っていないしな。

 どっちにしろ、広範囲の魔法を放つためには、魔物をどこかにまとめたいと思っていたところだ。


「セナ!予定変更!一旦上がってくれ!」

「オッケーです!!」


 セナが上がってきたのを確認して、ラッシュホーンを誘導する石壁を魔法で作ろうと魔力を高める。

 すると、いざ魔法を使おうとした僕に、エリィから声がかかった。


「シュウ様!、一際大きい魔物が遠くに見えます!」


 エリィの言葉で周囲を見回すと、ラッシュホーンの後方とゴブリンの後方に一回りも二回りも大きい個体が控えていた。

 ラッシュホーンがバイソンだとするなら、ボスとも言うべきストロングホーンはアフリカゾウともいうべき大きさを誇っている。

 また、頭にある角も、ラッシュホーンが直線的で40cm程なのに対して、群れのボスは平たい木の枝のように枝分かれしている上に2m以上もある。

 ゴブリン側にいるボス―――ゴブリン・キングも略奪した品物なのか、一級品とも言えそうな豪華な鎧と剣を装備していた。

 しかも、その装備を身に着けている体は、通常のゴブリンの身長80cmと比較しても4mほどと遥かに大きく、全身が筋肉でできている強靭な体が装備の隙間から見え隠れしている。

 そのボスたちの後ろからも、次から次へと森から魔物が出てくる。

 どんだけいるんだよ。


「シュウ殿、このままではここも危険なのでは…」

「そうですね…」


 ゴブリン・キング、ストロングホーンという強力な個体と、それに率いられたゴブリン軍団とラッシュホーンの群れ。

 確かにこのままだと護衛対象であるゴルドーさんたちにも被害が及ぶ。

 それに、いくらクスノがダンジョンで鍛えたからといって、ゴブリンたちの数の暴力の前では疲労が溜まって動きが鈍る。

 現に、さっきまで余裕を持って躱していたゴブリンの攻撃が少しずつ掠るようになってきている。

 これだけの数の魔物がいると、僕が広範囲で高威力の魔法を使ったほうが早い。…んだけど、僕は割と大雑把にしか魔法を使っていないから、今回のクスノみたいに大軍の中の一人だけ被害が出ないように魔法を使うなんて器用な真似はできないんだよな。10や20までならともかく。

 後先考えずにぶっ放すのはできるんだけどな。


「クスノ!引き上げてくれ!!」

「分かった………!」

「エリィ、クスノの援護を頼む」

「分かりました」


 それぞれの群れに左右の掌を向けて高めた魔力をさらに濃密にしていく。

 そして、ゴブリンの群れとラッシュホーンの群れを包むように掌を握る。


「『フリーズ・ロック』」


 先頭にいたゴブリンとラッシュホーンが足元から凍っていく。

 そして、先頭にいた個体から、それぞれの群れへと後方にかけて伝播して凍っていく。 


「ガァァアアアアア!!!!」

「ブモォオオオオ!!!」


 ただし、ストロングホーンとゴブリン・キング、魔法を使うゴブリン・メイジなどは、魔法抵抗が強いのか少し動きが鈍るだけだった。

 そして、仲間が凍らされたことに怒り、こちらへと突撃してくる。


「セナ!うまく乗って!」

「あわわわっ!!」


 セナの足元の地面を隆起させ持ち上げて馬車の乗り越えさせる。


「エリィ、クスノ、セナ。ゴブリンの方は任せた!」

「はいっ!」

「分かった…!」

「分っかりました!」


 3人の返事を背に、僕はストロングホーンの方へと向かっていく。

 アフリカゾウのような体格で暴れ牛のような速度で馬車に突撃すれば、馬車どころかゴルドーさん諸共もろとも粉々になりかねない。

 すぐに魔力を体に纏わせてストロングホーンの目の前に飛び上がる。


「ォオオオオ!!!」


 目の前に来た僕を排除するために、ストロングホーンの歪曲した角が掬い上げるように迫ってくる。

 下からくるその角を手のひらで押すように逸らして回転し、目の前に来たストロングホーンの顎を蹴り飛ばす。


「モォオオオオ!!!!」


 肉が歪む感覚を足先に感じて着地すると、蹴り飛ばして吹っ飛んだ巨体が、凍らせた牛のオブジェの中を粉々に砕きながら滑っていった。

 さらに追加として、氷の槍を打ち出して頭を貫いておく。

 よし、これでラッシュホーンの方は終わったな。

 後は、エリィたちが相手をしているゴブリン・キングたちと、もうすぐこっちに到達するバラバムとハーピィの群れか。

 馬車の上へと飛び上がってゴブリンの方へと顔を向けると、クスノとセナを先頭に打ち合うゴブリン・キングと、弓と魔法を撃ち合うエリィとゴブリン・メイジ数体という構図になっていた。


「ふっ………!」

「ガァァアアアアア!!!」


 クスノが振るった左右の短剣を、ゴブリン・キングが構えた盾と剣で防ぎ、時折反撃いていく。

 さっきまでゴブリンの群れと戦って疲労が溜まっているクスノの僅かな隙に、ゴブリン・キングの盾を使った剣技が迫る。


「させませんよっ!………っと!」


 それを、セナがバトルハンマーを振るって、ゴブリン・キングの横から攻撃を加えようとして剣で弾かれている。

 片や、ゴブリン・メイジたちが炎や水の玉を馬車向かって撃ち出せば、エリィが魔力を込めた矢を放って相殺している。

 このままでは実力が拮抗して、決着がつかない。

 ただ、一番はじめにこの状態が崩れるとすれば、クスノかもしれない。

 さっきまでゴブリンの群れと戦って、少なくない疲労と魔力消費をしている。


「『狐火』…!」


 実力が拮抗した膠着こうちゃく状態と、それが崩れるなら自分だといち早く理解したクスノが行動に出た。

 ゴブリン・キングの顔面に向かって、尻尾の先からゆったりとした炎を飛ばす。


付与魔法(エンチャント)『双炎刃』―――っ!?」

「ガァァアアアア!!」


 一時的に魔法でゴブリン・キングの視界を塞いだ隙に、クスノが短剣に炎を纏わせようとした瞬間。

 ゴブリン・キングが盾に身を隠しながら狐火を躱しつつ、盾ごとタックルするかのようにクスノに突っ込んだ。


「うっ………!」

「クスノっ!!」

「!?…クスノちゃんっ!」


 ゴブリン・キングの体格もあって、4tトラックに跳ね飛ばされたかのように吹っ飛ばされるクスノ。


「クスノさんっ!…うぐっ!………っ!」


 吹っ飛んだクスノに気をとられて、セナがゴブリン・キングの剣を受け損ねたのか、肩から血を流している。

 ―――プツンッ。と、自分の中で何かが切れるのが分かった。




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