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第75話 「山 を 越えて」




 翌日に、冒険者ギルドに確認に行って依頼が張ってある掲示板や職員の話によると、レインムル山での魔物討伐の依頼は常時出されているようなものしかないらしい。

 ただ、魔物の数が増えたことにより、大型の魔物の目撃例も増えたらしく、あの冒険者たちが嘘を言っている可能性は少し減った。

 依頼した奴が、本当にそう思っていたかは分からないけど。


「そうですか。そんなことが…」


 ゴルドーさんに、ギルドで聞いた話と冒険者たちから聞いた大型の魔物に関しての話をした。

 今回の旅の最終決定権は、ゴルドーさんにある。

 僕たちは護衛の依頼をされた側であって、あまり勝手なことはできない。

 土砂崩れを確認しに行った僕が言えた義理ではないけども。


「それで、ルートはどうしますか?一応、魔法を使えばレインムル山も通れますけど」

「大丈夫なのですか?」

「ええ。魔物が通れないようにしているだけならば、魔法で元に戻しておけば大丈夫でしょう」

「そうですか。しかし、大型の魔物がいるとなると………。シュウ殿、これはお聞きしても良いのか分かりませんが…」

「何でしょう?」

「シュウ殿はどれぐらい強いのでしょうか?ルイズリーの町の防衛の時に、オーガが一撃で切り裂けるほど、と小耳に挟みましたが。話したくないのであれば、秘密のままで構いませんが」


 冒険者は基本的に自分の手をあまり周りに言わない。

 特に戦い方や、切り札にしているものが知られていれば、それだけ自分の命を失う可能性が高くなる。

 同業者や盗賊などに襲われた時に、対策されてしまうからだ。

 ランクが上がって有名になると、それを隠すのはより難しくなるけど。


「いえ、特に隠しているわけではないですよ。そうですね………オーガが100体ぐらいなら、10秒もあれば余裕を持って片付けられるかと」

「それは………」


 ゴルドーさんが絶句する。

 まあ、信じられないだろう。

 オーガは皮膚が硬く、生半可な攻撃では傷一つつけることはできない。

 ドワーフの村でガシューさんが戦っていたが、硬い皮膚と筋肉に阻まれて、あれだけ大きなバトルハンマーでもあざが残るのが精々だった。

 僕もオーガと初めて戦ったときは大変だったっけ。

 ダンジョンで出てきた奴が相手だったけど、剣でほとんど傷がつかないから目とか口とかの柔らかい場所を狙うか、打撃でちょっとずつダメージを与えるしか倒す方法がなかった。

 魔法が使えるようになってからは大分楽になったけど。


「まあ、オーガが100体も揃うことなんて、魔物の大量発生でもない限りありえませんけどね」


 小人のような魔物であるゴブリンや、豚の顔を持った人型の魔物であるオークなどは群れて集落を作るため、100体いることはあるらしい。

 しかし、オーガは個体自体が強いため、ほとんど群れることはないとか。

 精々、つがいのような2~3体程度までらしい。

 僕がダンジョンの転移系罠トラップにかかって、100体以上のオーガが待ち受ける魔物部屋に転移させられたから言えることではあるけど。


「いえ、シュウ殿ならありえるのでしょう。私も色々な人を見てきましたが、あれだけの魔法を扱う方は見たことがありません。ですので、改めてレインムル山のルートをお願いしてもよろしいでしょうか?勿論、その分の報酬はお支払いいたします」

「分かりました」

「それと、先ほどの岩で道を塞いだことに関係のある話がありまして」

「ゴルドーさんの方でも何か分かったんですか?」

「ええ。私も噂程度のものだったので信じてはいなかったのですが、どうやら聖都の周りで魔物の目撃例が増加しているらしいのです。それも過剰なほどに」


 へー。………僕がダンジョンを攻略したのが原因じゃないよね。


「その魔物の目撃例が増加したのって最近ですか?」

「いえ、どうやら5年ほど前からだそうです」


 僕じゃないならよし。


「元々、聖都には呪いを解くために色々な人が集まります。その中には、シュウ殿たちのように冒険者も多くいます。今までは冒険者の数も多かったので、それほど問題には思われていなかったのですが、最近はそれでも間に合わなくぐらい、魔物の数が増えているそうです」

「なるほど」

「私たちが旅をしている間、魔物はほとんど見ていなかったので、噂だと思っていたのですよ」


 僕がスケルトン部隊に処理させてたからですね、すいません。


「ですので、明日からよろしくお願いします」

「はい、分かりました」






 雨も上がり、日も昇っていない内にレムートの町を出発した。

 魔法で元通りにしておくにしても、塞いだ場所を通るのは見つからない方が良いと思う。

 魔物が壊していった場合に、原因を押し付けられかねないし。

 レムートの町では、大岩で道を塞いでいたことに関しては、数日経ってから冒険者ギルドから通達がなされた。

 それでも、前もって教えられなかったレムートの町の人は不満をあらわにしていた。

 レインムル山は、岩肌に生える草や苔の中に素材となるものもあるらしく、そういった素材を必要な人にとっては、仕事に影響が出るんだとか。


「ゴルドーさん、そのまま進んでください」

「はい」


 魔力で大岩へと干渉し、道を平らにする。

 そして、馬車が通り過ぎたところで、元の大岩へと戻す。

 ついでに、魔力を多めに込めて、より強固な岩へと変えておく。

 これで、仮に魔物が壊そうとしても大丈夫だろう。


「それでシュウ殿、魔物はどれぐらいいるのでしょうか?」

「そうですね…」


 サーチフィールドを展開して探っていく。

 森や平原を通っていたときと違って、主に上へと広げて探っていく。

 山を下から見上げても、崖の上に何があるかは分からない。

 仮に、土砂崩れのように、上から何かを落とそうとした場合、どうしても発見が遅れる。


「っと!近くにはいないようですね」


 道の突起に馬車の車輪がぶつかり、勢いよく跳ねる。

 雨が上がってそれほど経っていない所為か、水溜りも多く見受けられる。

 まあ、水溜りは熱で蒸発させて風で散らしているし、馬車がすんなり通れるように魔法で道を平らにしていってるから、余程のことがない限り進んでいけるだろう。

 後は、馬車の前に車のヘッドライトのように薄っすらと光を向けている。


「シュウ殿、この道はどちらに進めば良いと思いますか?」

「えーっと、ちょっと待ってください。………右、ですね」

「分かりました」


 というか、このレインムル山は岩が脆くてすぐに崩れ、道が細かく変わってしまうため地図が意味を成さないらしい。

 さっきから、分かれ道に差しかかってはサーチフィールドで道の先を確認している。

 それでも道がないときは、僕が魔法でエレベーターのように地面を上げたり下げたりして、なんとか進めている。


「シュウ様が作った道は、分かりやすいですね」

「そうだね」


 僕のイメージで道路を整地しているせいか、綺麗に整えすぎて心なしか木の車輪が滑っている。

 もうちょっと雑でも良かったか。

 二日後、僕が魔法で道を短縮したりした結果、魔物に襲われることなくレインムル山を越えてレモルンの町の近くまで来ていた。


「シュウ殿の魔法のおかげで、予定より随分と早くレモルンへと着けそうですね。ありがとうございます」

「いえいえ、お気になさらず」


 今は、夜明けと同時にレインムル山を下って、レモルンの町の手前をゆっくりと走っているところだ。

 徐々に昇る太陽の光によって、僕たちが行くレモルンの町が照らし出された。


「レムートの町で足止めされたときはどうしようかと思いましたが、順調に進んでこれましたね」

「そうですね―――」

「シュウ様、北側の森が何か騒がしい」


 ゴルドーさんに返事を返そうとしたら、クスノの言葉で遮られた。

 狐耳族ルナーユに限らず獣人は耳が良いらしく、種族によっては遥か離れた場所に落ちた物音が聞き取れるほどだという。

 サーチフィールドは大体2~300mぐらいの範囲で出しっぱなしにしているから、クスノが聞き取った範囲はそれ以上遠くのようだ。


「…レモルンの町の南側、森の中から僅かに煙が見えます」


 今僕たちは東に見えるレモルンの町へ向けて走っている。

 レモルンの町を中心にすると、僕たちが下りてきたレインムル山を西、聖都が東、そして、その北側と南側にレモルンと聖都を囲うように山を背に森が広がっている。

 森からの魔物の襲撃を警戒してか、町の南北はかなりの距離が開いている。

 エリィとクスノ、二人に言われて急いでサーチフィールドを広げていくと、南北両方の森から数え切れないほどの魔物が溢れてきた。


「戦闘準備!これだけの魔物がいると、すぐに町に入れてもらえないかもしれないからね」

「「はいっ!(コクッ)」」


 エリィたちの返事を聞いて、僕も気を引き締める。


 レモルンの町に近付くにつれて、森から出てきた魔物を確認できるまでになってきた。

 北側の森からは主にゴブリンの群れで、上位種のハイゴブリンや魔法を使うゴブリンメイジなど、様々なゴブリンが出てきていた。

 南側の森からは、バイソンのような牛型の魔物が群れで飛び出してきた。

 それに立ち向かうように、レモルンの町から冒険者たちが飛び出してきた。


「ゴルドーさん、あの南側の魔物はなんですか?」

「あれはラッシュホーンですね。突進力に任せた体当たりはとても強力で、毎年狩ろうと失敗して亡くなる冒険者が多いそうです。また、仲間意識が強いため、一匹を狩ろうとすると群れ全てを相手にしなければいけません。ただ、あの曲がった角は素材として重宝されていますし、何より肉が食用として大変人気があります」

「肉、ですか」

「「「お肉…」」」

「どちらにせよ、魔物のことが落ち着かないと、僕たちは入れませんね」

「そうですね」

「シュウさん!後ろからも色々と来てますよー!!」


 セナの言葉に後ろを振り向けば、僕たちが下りてきたレインムル山からバラバムとハーピィが何十羽となってこちらへと向かってきている。

 しかも、レモルンの町へと向かってきていたゴブリンやラッシュホーンも、町の方かられてこちらへと向かってきている。

 町の入り口を冒険者たちが守っているため、それを嫌った魔物が結構な数、横へと逸れてきたようだ。

 ふむ。ゴルドーさんたちを護衛する人が残らないといけないし、どうやって分けるか。


「エリィは後ろ、バラバムとハーピィを頼む。クスノはゴブリンの方を頼む。焼き尽くしても構わない。それと、セナはラッシュホーンを頼む。三人とも、無理はしないようにね」

「「はいっ!!」」

「分かった……!」




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