第72話 「入国」
8万PVいきました。ありがとうございます。
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ステータスの表記は主にオウガバトル64を元にいくつか足しております。
■2017/03/14
・第36話に挿絵を追加しました。
今、いただきますって言った?
ちょっと待った。
この子は、呪われていて、その呪いで1週間しか記憶がないはず。
だから、盗賊から助けた時の夜営で聞かれた「いただきます」という食事前のあいさつを覚えているわけがない。
あの時から間違いなく1週間は経っている。
それに、この旅に出るときに、呪いにかかっているのを鑑定で再確認したはずだ。
どういうことだ?
■名前:サーシャ・アーシリア・ルルイエ・ルビーライト
種 族:人間
年 齢:9
性 別:♀
レベル:8
クラス:プリンセス(ルビーライト王国第3王女)
状 態:【呪い:記憶を1週間しか保持できない(特級)】
うん、呪い自体は今でも確認できる。
じゃあ1週間前の記憶がないはずだよな…。
「?お兄さん?嫌いな物が入ってたの?」
「あ、いや…」
前は不思議がっていたのに。
………ちょっとカマかけてみるか。
「よく知ってたね」
「えっ?」
「いただきますってやつ。それを知っているっていう人に初めて会ったかも。やっぱり旅に出ているからどっかで聞いたのかな?」
「お兄さんが教えてくれた…んだよ。。忘れちゃったの?」
「あれ?そうだったっけ?ゴメンゴメン」
うん、間違いなく僕が聞かれて教えたはず。
もしかすると、町で出会ったおっぱいの呪いの人みたいに、呪いの効力がない、もしくは薄いのかな。
呪いにも、花粉症みたいになったりならなかったりみたいに、効果があったりなかったりで個人差があるんだろうか。
今度ダールソンさんに会ったら、確認しないといけないな。
もしくは、上手いこと隠しているだけかもしれない。
………最後の手段として、サーチフィールドを応用して盗聴するか。趣味じゃないんだけど。
王女の身分を知っているんだから、少なくともお母さんことメイドさんであるカナタリスさんとの会話を探れば分かるだろう。
「すみません、うちの娘が…」
「いえいえ、気にしないで下さい。今は休憩中ですから」
僕の故郷にあった遊び道具や食べ物の話をしながらサーシャちゃんと食事をした。
翌朝以降、盗賊に襲われることなく順調に旅は進み、レッゾルッソへと辿り着いた。
「ここからがレイラント神聖国ですか」
「そうなります」
この町からエリィたちが迫害を受けるかもしれない。
気を付けていこう。
「それで、聖都まではどれぐらいかかるんでしたっけ?」
依頼を受けたときに聞いたはずなんだけど、驚かされる事が多くて忘れてしまった。
往復で結構な時間がかかるというのは聞いていたんだけど。往復で3ヶ月ぐらいを予定しているんだっけ?
「そうですね。順調に旅を進めることができるなら、聖都までは1ヶ月ほどですね」
「なるほど。呪われた物の呪いを解くために行くんでしたよね?」
「はい。ただ、聖都には呪われた品物を持ち込む人が多いので、私の順番が回ってくるまでどれぐらいかかるかは分かりませんが。シュウ殿もこの国に用事があるとのことでしたが…」
「ええ。依頼を受けるときにも話をしましたけど、聖都までの護衛の成功報酬にゴルドーさんが持っている呪われた物を見せて頂きたいのと、後はちょっと調べ物というか、確かめたいことがありましてね」
「見せることは了承しましたが…呪われた物ですよ?シュウ殿も呪われてしまうかもしれませんが…それでも良いとのことでしたね」
財宝を溜め込んでいた盗賊団、『蛇の牙』の雇い主というかスポンサー的なやつがいれば、確認しておきたい。
とりあえず確認さえしておけば、後はうちの配下に見張らせておけば良いしね。ゴルドーさん達には言えないけど。
「それで、確かめたいこと、ですか?」
「ええ。ちょっとこの国のダンジョンを調べたいと思いまして」
「ダンジョンを?」
「はい。僕はルイズリーの町ぐらいしかダンジョンを知りませんので」
自分が管理しているダンジョンは7つあるけど、呪われていたダンジョンは『怨恨』のダンジョンのみ。
それ以外にも呪われたダンジョンを見てみたいんだよな。
7つもダンジョンを攻略してみて分かったけど、『怨恨』のダンジョンが特殊だったんだよな。
1階層でダンジョンボスが出てきていたし。
シグの話からすると、『怨恨』のダンジョンはボスのブラック・スカル・レギオンのレベルを見る限り30階層までないとおかしいはずだ。
他の6つのダンジョンはシグの言う通り、ダンジョンのレベルとボスのレベルが一致していた。
呪われたダンジョンが特殊だったのか、はたまた元の世界で同級生だった境浦が関わっていたからなのか、『怨恨』のダンジョンだけの特例なのか。
それを確認する意味もある。
境浦の名前を、この世界で聞いてからずっと疑問に思っていたからなー。
解決できないならできないで良いんだけど。単に『怨恨』のダンジョンの前の所有者だったってだけだろうし。
「それと、呪いを解く瞬間が見れたら良いなとは思っています。見たことがありませんからね。まあ、こっちはおまけで見れれば良いかな程度ですけど」
ダールソンさんの話によると、『初級』『低級』『中級』『上級』『特級』『永級』とある階級の中でも、中級までは教会でも解呪できる。
上級や特級になると、稀少品を集めて作らないと解呪できない。
もしくは、ダンジョンでその呪いに対応したアイテムを手に入れるしかない。
けど、運良く自分の呪いを解呪できるアイテムを手に入れることはほぼ不可能だと思う。
鍵の形も分からない、鍵穴の形も分からないのに、無差別に挿した鍵が一回で一致することなんて、それこそ奇跡でも起こらないとね。
僕の呪いは、結果的に+に働いているから無理に解呪する必要はないなー。今のところは…だけど。
「勿論、ゴルドーさん達の護衛が最優先ですよ。それに、こうやって色々と見て回れるので、それで十分なんですよ」
「そうですか。ところでシュウ殿、記憶はどれぐらい戻ったのですか?」
「いやー、全然ですね。おもちゃとか小さいことは思い出せたんですけど、それ以外はさっぱりで」
嘘です、すいません。もっと思い出してます。
具体的には、高校ぐらいまでは大体、それ以降は22歳ぐらいまでは生きていたってことぐらいは思い出してます。
20歳以上のことになるとほとんど出てこないんだけどね。
「そうですか。思い出せると良いですね」
「そんなに困ることでもないので、気長に待ちますよ」
話しているとレッゾルッソの入り口が近付いてきた。
レッゾルッソは、町の外側が石積みのルイズリーの町に似た作りだった。
常に魔物に襲われる危険性があるこの世界では、この形が一般的のようだ。
国境だけあって、ルイズリーの町より一回り小さいくらいの規模だ。
レッゾルッソに入るために門に並んでいる人たちのところへと向かう。
「止まれっ!!」
町の入り口へと辿り着くと、ルイズリーの町とは色形の違う鎧に身を包んだ衛兵に止められた。
ルイズリーの町は金属の鎧でいかにも兵士って感じだったけど、このレッゾルッソ…というかレイラント神聖国は僧兵って感じの装いだ。
武器も剣より槍、棍のような長物が主体のようだ。
奥の方には、メイスや杖のような物を持っている人も見える。
「そこの商人、何をしにこの国にきた」
「呪われた品の呪いを解いていただきたく、レイラント神聖国へと参りました」
「そうか。順番が回ってくるまでおとなしく待て」
「分かりました」
「………チッ!(亜人を連れてきおって………!)」
ずっとサーチフィールドを使っていた所為で、舌打ちとその後に続く言葉がはっきり聞き取れた。
ゴブリンやオーク、二足歩行する犬のようなコボルトなど、人のような形の魔物を亜人種と呼ぶ。
つまり、レイラント神聖国はエルフや獣人であるエリィやクスノを人扱いしないどころか、魔物と同じ扱いをしたってこどだ。
………あからさまに陰口を言われてイラッとしたな。
ここでなにかやらかせば、すぐ疑われる。今はおとなしくしておこう。
国境だけあって、順番待ちの列が長い。
ルイズリーの町でも長かったしな。
しばらく待つと、僕達の前の商隊の番になった。
その途中、とある袋の中身を確認していると、中身を取り出した時に掌からその物が零れ落ちた。
「っと、すまないな」
コロコロと転がった金貨が辺りに金属音を響かせる中、商人たちは手分けしてお金を拾う。
周りの視線が下へと向いた瞬間に、僧兵の一人が金貨を数枚くすねてポケットに入れた。
以前、テレビで見た、ATMで操作している人の後ろからお札を落とし、お金落としましたよと言って拾っている間にATMに乗っている鞄の中身や引き出したお金を取る手口の映像を思い出した。
あとは、生前の物作りをしていた友人が、個人出展イベントに参加した時。
お金をやりとりする際に小銭を落とし、出展側に拾わせている間に机の上の物やおつり用のお金を持っていかれるという事件があるから気をつけないとな。と言っていたのを思い出した。
物はともかく、お釣りを見える位置においておかない等の対策が必要だとか。
そして、商会の人が地面に落ちたお金を全部拾った後、何食わぬ顔で仕事に戻ろうとした僧兵に腹が立った。
この僧兵たちはさっきの態度といい、自分達が気に入らないならお金を盗んでも良いという判断を下して実行までした。
これは流石に見逃せないので、衣服のポケットに入れた瞬間、サーチフィールドを徐々に熱へと変えて金貨へと干渉する。
金貨袋の荷物の確認が終わりそうな時、流石に異変を感じたのか僧兵に動きがあった。
「熱っ!!」
急いで取り出した金貨が地面へと落ち、辺りに散らばる。
その響く音で周りから視線が集まる。
ざわざわと辺りが騒がしくなる。
それもそうだろう。
国の抱える組織の兵がお金をくすねようとしたということは、前世で言う警察が荷物検査の傍らにお金を盗むようなものだ。
それを衆人環視の中で晒されれば、言い逃れはできない。
騒がしくなったおかげで、余計に人が集まるという悪循環。
「荷物、再確認したほうが良いですよ。特に金貨の枚数」
僕が前の商隊へと声をかけると、すぐに金貨を数え始める。
「貴様!言いがかりも甚だしい!!馬鹿馬鹿しくて付き合ってられんな!大方そこにいる亜人たちが、我らを貶めるために仕組んだことだろう?」
ふーん。この状況でシラを切るか。しかも、よりにもよって触れてすらいない僕らにどうやってできるんだろうか。
僧兵の隊長かな?大声を上げた所為で余計に前後から僕らに視線が集まっている。
でも、サーチフィールドを展開している僕には、まだ僧兵が金貨を持っていることを知っているんだよな。
追加で、ポケットに手を伸ばしていた男のズボンを止めていた紐をエアスライサーで切る。
ズボンがスルッっと落ちて、地面に金属がぶつかり合う音がした後、僧兵のポケットから残っていた金貨が零れ落ちてきた。
今度は目撃者が大勢だし。
金貨は個人で使う人はあまりいない。一般の家庭でも金貨が数枚もあれば一ヶ月生活できるぐらいだ。
そんな高価な物を落とすかもしれないポケットに入れておく人はそういない。
今のこの状況は、例え盗んでなくても疑わしくなることは間違いないだろう。
「おや?まだ金貨が出てきますね。もしかして他にもあるのでは?」
周りから言葉は上がらずとも、疑惑の目線という圧力がかかる。
全てのポケットを裏返してコインがないことを証明して、その場は何とか終わった。
その後の荷物検査はかなり軽いものになった。あれだけのことがあったしな。
エリィたちを連れていたから、物凄く睨まれたが。自業自得なのに。
ちょっかい出しておこうか。舌打ちのもあるし。
盗賊たちを確認してもらっている間にちょっと会話を振っておく。
「以前、ルイズリーの町の近くで『蛇の牙』という盗賊団が出たんですけど、この辺りにも盗賊って多いんですかね?」
「何?そんなわけがないだろう。我々がいるのだ。盗賊がこの辺りに潜んでいるわけがないだろう」
「そうなんですか。お疲れさまです」
確認を終えて、レッゾルッソへと入る。
『蛇の牙』のアジトから出ていた車輪の後は、この国へと向かっていた。
元々その調査というか、黒幕を探しに来たのが目的なので、『蛇の牙』の名前を出しておけばそれなりに話が広がるだろう。
向こうからちょっかいを出してきたら、そいつに対してスケルトン部隊を監視に付ければ良いんだし。
これで、少しは尻尾を出してくるかな?
次までに第55話と第56話の間にキャラ紹介を入れておく予定です。




