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第70話 「リセット と 出発」

■2017/02/15 第14話と第25話に挿絵を追加しました。




 部屋に差し込む月明かりが、ベッドに寝ている幼い顔を照らし出す。

 今日が一週間で最後の日。

 私は、なんて無力なのでしょう。

 ずっと鍛錬に励んできました。

 鍛錬だけに明け暮れていたと言っても過言ではないでしょう。

 それほどまでに、貪欲に力を求めました。

 その結果、国でも上から数えるほどまで盾術を極め、適性のあった水と土魔法も、魔法使いとして一人前と言われる上級まで使えるようになりました。

 全ては亡き恩人とその子供である、このベッドに寝ている方を守り支えるために。

 私を救ってくれた恩人に返せる、唯一のもの。

 でも、あの日から私はその役目を果たすことができなくなりました。

 あの日、あの女にかけられた呪いの所為で、私は傍にいることしかできなくなりました。

 戦うことでしか、私の価値はないというのに。

 これがなければ、盗賊団などに遅れを取ることはなかったのに。

 それがとても悔しかった。

 もうダメだと、せめて自分を犠牲にしてこの方を逃がす方法はないかと考えていた時、一人の少年に助けられました。

 歴代の王国筆頭魔法師でも使える者が限られる、炎と風の合成属性―――雷魔法と共に。

 それに、呪われていると言われていたエルフを引き取るような、この方と同じような志を持っているであろう少年には、共感を覚えます。

 どれだけ少なくても、同じ考え方を持つ人がいるというのが分かっただけでも、運が良いのでしょう。

 それが、命を救ってくれた恩人であれば尚の事。

 まだ終わりじゃない。そう思わせてくれたことに感謝を。そして、できれば、この方の今後に幸多からんことを。

 それが、傍にいることしかできない私の、せめてもの願い。






 カーテンの隙間から差し込む光で目が覚める。

 見慣れぬ天井とシーツの感触、それと嗅ぎなれない部屋に漂う少々埃っぽい空気。


「おはようございます」

「………おはよう」


 目を開けてボーっとしていると、見慣れた人が、見慣れぬ服装で傍らに控えていた。


「混乱されていて、お聞きしたいことが多いとは思いますが、こちらから話をしてもよろしいでしょうか?」

「………お願い」


 話を聞いて状況を理解した。

 彼女の話はとても簡潔で、私が何を聞きたいのかを的確に理解しており、窺える表情から|何度も同じ説明をしている《・・・・・・・・・・・・》というのがよく分かった。

 私はまだ幼いけれど、生まれてからの付き合いがあるこの人は、世界で2番目に信頼できる人だ。

 少なくとも、一人の姉を除いて、同じ血を分けた兄弟よりは話が通じるでしょう。

 それほど信頼の置ける彼女が話す内容に驚きはしたものの、立ち上がって鏡を見るとそれが間違いなく事実だと信じられた。

 身に覚えのない目線の高さに、手足の長さ。髪も…昔より伸びている。


「はぁ………それで、私が残した書置きやメモ…もしくは、言葉か伝言は何かある?」

「はい。こちらになります」


 単語だけをメモ…というより木の皮に自然についた傷に偽装した樹皮紙を渡された。

 自分の思考パターンからある程度予測し、読み取ってみる。

 内容から再度確認し、傍らに控える人にいくつか質問する。


「なるほど、分かったわ。それにしても詠唱も無しに5属性もの魔法を使い、白いクロウラーを従える記憶喪失の人…ね」


 雷魔法を使っていた所から、火と風魔法が。水球で拘束した後に岩で手錠を作っていたことから水と土魔法。それと、傷を癒す光魔法か。

 同じように上手い具合に、刺繍に隠されたメモを読み取って着替えていく。


「物語に出てくる勇者のような、とんでもない人がいたものですね」

「はい。あの実力をかんがみるに、私が完全装備で挑んだとしても勝てるかどうか…」

「あなたにそこまで言わせるなんて、余程の腕なのですね。できれば、もう一度この目で見ておきたいところですが…」

「それについてお話が…」


 耳にささやいて教えてくれる内容に、私は改めて頷く。

 なるほど、前の私が既にそこまでの指示を出していたようですね。


「そうですか。なら、もう少し見極めることができそうですね。大丈夫だと確信できたら、上手く味方こちらがわに引き込みたいところです」

「はい」


 その時、空腹を知らせる音が私のお腹から鳴った。

 とても恥ずかしいです。


「では、朝食の準備を致します」

「はい、お願いします」


 さあ、ここからは気合を入れて演じてみせましょう。

 大丈夫。今までも、そうしてきたのだから。






 依頼された日から二日後、ゴルドーさんの準備が終わったので、ゴルドー商会に顔を出す。

 結果的に、僕たちはゴルドーさんの依頼を受けた。

 元々、レイラント神聖国に向かうのに、徒歩か馬車か配下召喚で足代わりになる魔物を呼び出すかで迷っていたし。

 僕が探知系の魔法を使えるということで、僕たちも馬車の片隅に乗せてもらえることになった。

 できるだけ急いでレイラント神聖国へと行きたいのだとか。

 こっちはこっちで、スケルトン・アーチャーであるツァロとスケルトン・アサシンであるテールナー、そして。それぞれの配下をそれなりに呼び寄せている。

 僕の個人的な用事も、急いで片付けるつもりだったしな。

 準備が無駄にならなくて丁度良かったとも言える。


「では、シュウ殿。今日からよろしくお願いします」

「はい。お任せください」


 ゴルドーさんと一緒に馬車に乗り込む。

 馬車は全部で3つあり、それぞれの屋根に先頭からセナ、真ん中に僕、後ろにエリィとクスノが乗っている。ゴルドーさんと王女とその護衛は真ん中の馬車に乗っている。

 動き出す前に、ゴルドーさんの娘(王女)に剣玉などの遊び道具を渡しておいた。

 その時に鑑定を使ってみたけど、やっぱり王女で間違いないみたいだな。

 となると、市民に流れていた噂って言うのは、死亡扱いにしないといけない理由があったってことかな。


「『サーチフィールド』」


 ルイズリーの町を出る前から、展開しておこう。

 今回のことで動くところがあれば、それは僕にも敵になりうる相手に違いないだろうから。

 この二日間で、エリィたちはさらに強くなった。

 ただ、セナの魔法に関しては、魔力の扱い方を教えたけど、魔力不安定の呪いがある所為かまだまだ時間がかかりそうだった。

 元々、鍛冶の素材集めは自分でするもの、と父親であるガシューさんから厳しく言われていたらしい。

 その分もあってか、出会ったときから結構戦えるようだ。

 じゃなきゃ、村から魔物を引き付けるためにおとりになったり、ガシューさんが旅についていくことを了承しないだろう。

 後は、森に散らしているスケルトン・アーチャー、アサシン部隊に任せておけば良いだろう。

 何もないのが一番良いんだけどな。




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