第68話 「ルビーライト王国 と 東西 の 国」
第三王女が亡くなっている?
どういうことだ?
「何故亡くなったとかは分かりますか?」
「幼い頃に、呪いにかかったって聞いたわ」
「それは私も覚えているぬ。当時ぬ、その呪いを解くための方法を国王の命で探していたんだぬ。莫大な報酬が用意されていたからぬ、冒険者でも話題になっていたぬ。あれは確かぬ…」
「3年前だったかしら。その募集も割とすぐに取り消されたから、呪いで亡くなった…って王家から御触書が出ていたわね」
じゃあ、僕が助けたあの子はなんなんだ?
鑑定で見た限り、あの子は間違いなく王女だったはず。
それとも、『鑑定』で見える情報は間違っているってことか?
確かに最初の方は、知識や経験で知っていることしか鑑定で見ることはできなかった。
それも、クスノと出会ったときには、知らないはずの名前まで見ることができていたんだ。それは間違いない。
鑑定を使い慣れることで熟練度が上がり、見える範囲が増えてきていたのは事実だ。
だとすると、僕が助けた時に僕の鑑定では見えないように、何かしらのスキルや魔道具が働いていた可能性もある。単純に、僕の鑑定が未熟でそう見させられていたかもしれないけど。
どちらにせよ、一度ゴルドーさんのところに行って、もう一度あの子を鑑定してみるか。
セナに使ってもらう炉の材料を、依頼しようと思っていたから丁度良い。
「そうねぇ。後は………」
その後も、ノイアさんにルビーライト王国について話を聞いた。
現在、床に臥せっている国王は良い王だったらしく、町や村の間の道を整えたり、魔物が大量発生した場合を想定して、騎士団の錬度を上げて町へと配備したりしていたとか。
その業務を継いでいる第一、第二王子と第一王女たちが事にあたっているが、結果はあまり芳しくないらしい。
突然、国王が体調不良だったんだし、しょうがないんだろう。
前世でも思い当たる事で、バイトしていた時のことだったと思う。
その働く場所でそれなりの人数がいたけど、とある人にしかできない仕事があった。
偶々(たまたま)その冬にインフルエンザが流行って、その人がインフルエンザで休んでしまって仕事ができない状態になってしまった。
インフルエンザになると家から出てはいけないから、電話で仕事内容をなんとか上の人が聞こうとした。けど、高熱で意識が朦朧としていたのか、口から出る内容が要領を得ずに仕事が進まなかった。
仮に、その人の意識が朦朧としていなくても、仕事の進み自体は遅くなっていたのは確実だろう。
ここで問題なのは、その人が休んだことではなく、その仕事ができる人がその一人しかいなかったということだ。
もし、もう一人、二人その仕事ができる人がいれば、そこまで問題にはならなかったと思う。
そんな状態でも関係なく「出勤して来い!」と言う人がいるけど、個人的にそれは間違いだと思うんだよな。
その人がインフルエンザにかかっているのに仕事をした場合、職場に菌が撒き散らされて全員仕事をできなくなる可能性もあったわけだしな。
飲食店なら休業日でもないのに休みなっているに違いない。その店に行ったお客さんもかかるわけだし、見えない分だけ一種のテロ行為と変わらんよ。
まあ…インフルエンザじゃなくても、咳が出るなら休みにするべきだとは思うけどな。
ただ、ルビーライト王国の場合が、店ではなくて国の運営だから、大臣が業務を支えているから問題ないとは思う。
しっかし、国王が病気、第二王女が発狂、第三王女が呪いによって死亡………って、話に聞く限りでもルビーライト王国は大丈夫か?って心配になるよな。
「………ルビーライト王国については、こんなところかしら」
「ありがとうございます。それで、リカルデ王国とレイラント神聖国との関係はどうなんでしょう?」
「そこも難しいわね。この国とリカルデ王国は、王族同士が留学しあっているぐらい仲は良いんだけど…」
「レイラント神聖国とは仲が良くない…と?」
「うーん、表向きは仲が悪いわけではないのよ。ただ、この大陸の宗教は知ってる?」
確か、ゴルドーさんに聞いたよな。なんだっけ?
「アルファルディア教、でしたっけ?」
「そう。そのアルファルディア教なんだけど、国によって解釈がちょっと違っているの」
「解釈?」
「レイラント神聖国は、女神アルファルディアが「人間」であったと主張しているのよ」
「レイラントは、ってことは他の国は違うってことですか?」
「ええ、そうよ。他の国では「人」の形をしていると言っているだけで、羽が生えているだとか、耳の形だとか、尻尾が生えているとかいないとかで、姿形に決まりはないって言われているの」
「でも、レイラントだけは「人間」だと種族を決めてしまっているってことですか」
「そうなのよ」
だから、人間至上主義なわけか。
女神が人間であったという真偽はともかく、レイラント神聖国ではそれが真実として今まで過ごしてきたわけだ。
それがいつから浸透しているのかは分からないけど。
「それを信じてエルフとか獣人の、人間以外の種族に対しての当たりが強いのよ。奴隷も獣人ばかりだし………」
「そういった奴隷たちをぬ、人間の生活で出る汚物処理や誰もやりたがらないような仕事をさせることに回しているんだぬ」
奴隷の使い方としては、そういったものが多いのもゴルドーさんから聞いている。
建築物を作るときの力仕事は、どうしてもそういった人を使ったほうが安く済むから。
「ただ、人間至上主義が悪いことばかりでもないの。とある街では、この町と同じようにダンジョンがあるんだけど、親が冒険者や探索者だったりする子供がいると、孤児になってしまう子もいるの」
「親が魔物に殺されたり、罠で死んだりして、帰らぬ人になってしまうからですね?」
「ええ…そうよ。でも、レイラント神聖国には教会が管理する孤児院があって、孤児となってしまった子供たちを無償で教育して、自立できるように援助しているのよ」
「種族が人間であれば良い国ってわけですか」
僕一人が行くなら、大して問題は起こらないだろうな。
「リカルデ王国の方はどうなんです?あまり話も聞きませんけど」
「確かにそうかも。このルイズリーの町は、ルビーライト王国の中でも特に東にあるもの。王都よりもレイラント神聖国の国境のほうが近いぐらいだしね。リカルデ王国はこの国の西側にあるから、噂話ですらあまり入ってこないのよ」
確か、この大陸の中心にロイヤル湖という湖があって、その東西南北にそれぞれ国があるんだったよな。
「リカルデ王国は、騎士の国ね」
「騎士の国?」
「そうよ。リカルデ王国は、100年前に魔王との戦いで勇者を支えた英雄たちを輩出した国の一つでもあるの。騎士の国だけあって、剣や槍の名門の家が多いことで有名ね。ここの国の第一王子が騎士団に携わっているのをさっき話したと思うんだけど、そのリカルデ王国で騎士として学ぶために留学していたのよ」
「この国の騎士もぬ、ほとんどがリカルデ王国で一度は学んでいるぬ。代わりに国の北側を覆っている山脈にある鉱山資源を提供しているぬ」
「あ、私の村も、リカルデ王国へ送るための武器とか作ってますよー!レイラントにも送ってますけど」
その後も、ざっとではあるが、ドランさんとノイアさんから国の話を聞いておいた。
とりあえず、話を聞いた情報とこっちで集めた情報を照らし合わせると、レイラント神聖国に行く必要がありそうだな。
あと、もう一度王女に会っておこう。




