第64話 「おっぱい」
1万ユニークいきました。ありがとうございます。
「シュウさん!丁度良かったです」
「ああ、シャロンさん。こちらもお聞きしたいことがありまして…」
冒険者ギルドへと入ると、シャロンさんが受け付けカウンターから出てきた。
「どうぞこちらへ。ギルド長からお話があるそうです」
話?エリィ達も同じように首を傾げている。
シャロンさんの後ろへと着いていくと、2階の突き当りの部屋で立ち止まる。
「ギルド長?シュウさんたちを連れてまいりました」
「うむ、入りたまえ」
ノックの後に呼びかけ、返事の後に扉を開ける。
そこには、前に会ったときにはかけていなかった眼鏡をかけたギルド長が、書類と格闘している所だった。
「おお、よく来たな!どれ、そこにかけるとええ。シャロン、お茶を頼む」
「はい」
部屋に入って、事務机の手前に置いてあるソファに座るように促される。
エリィやクスノやセナが小さいから、3人掛けのソファでもなんとか座れそうだな。
と思っていると、エリィ達は僕の後ろで立ったまま待機していた。
「良いから座りなよ」
「いえ、私たちはこのままで…」
「ほっほ!儂のことは気にせず座るといい。呪いだとか狐耳族だとかは儂は気にせんよ。シュウ君が、そういう方針だと言うなら儂は何も言わんが」
「だってさ。ほら」
ソファの空いている両サイドをポンポンと叩く。
三人は顔を見合わせると、ソファに座る。
左からクスノ、僕、エリィ、セナという形だ。
皆が座った頃に、シャロンさんがお茶を運んでそれぞれの前に置いてギルド長の後ろへと控える。
「それで、話というのは?」
「うむ。まずは、ギルドの依頼であるルイズリーの町の防衛についてじゃな。シュウ君たちのお陰で町に被害が出ずに済んだ。本当にありがとう」
そう言って、頭を下げるギルド長。
「いえ。僕は直ぐに離れてしまいましたから、すいません」
「いやいや、それについてはドワーフの村から来た者に説明を聞いておる。シュウ君が居らなんだら、ドワーフの村に多大な被害が出ておったじゃろうて。ガシューとは知り合いでな、儂からも是非礼を言わせておくれ」
頭を下げるギルド長。
「で、これが町の防衛参加の報酬じゃな」
「ちょっと待ってください。僕は途中で離れてしまったので、それを受け取る権利は…」
「まあ待ちなさい。この後の話にも続きがあるんじゃよ」
「続き…ですか?」
「寧ろ、そっちが本題なんじゃ。お主達が倒した魔物の魔石や素材の数が、数えられるだけでもかなり多くてのう。緊急時で倒してすぐに移動したのもあって、いくつか確認したいんじゃよ」
僕は、北門すぐからドワーフの村がある山の麓から村までの山道ほぼ全て。
エリィとクスノの二人は、弓が使えるエリィがいたこともあって、所々に魔物の死体が散らばっていたらしい。
発見した魔物は既に息絶えており、急所に突き刺さっていたり、魔物自体を貫通して地面に矢が刺さっていたことから、エリィではないかとの判断だった。
また、狐耳族の特徴である炎の焼け跡と、クスノの双剣による傷が死体に残っていたとのこと。
二人が多分倒したであろう魔物の数は、ほぼギルドで集めた情報と一致した。
「これでほぼ全部じゃと思うが、査定するので待って欲しい。申し訳ないんじゃが、量が量じゃから………2日後にギルドに来てくれんかの」
「はい、わかりました」
「で、昨日の内にドワーフの村から人が来て説明していきおったんじゃが………セナのお譲ちゃんには、ドワーフの村でその説明を聞きたい。なんでも、シザーアントの巣があったとか」
「そうですね。では、昨日の魔物が大量発生した件からですね!あれはですね………」
セナが魔物に襲われて、僕が助け、村の中にいた魔物を退治し、シザーアントの巣の発見と討伐をしたことを説明していく。
「なるほど。あい、分かった。して、その魔石や素材はどうしたんじゃ?」
「村の人に譲渡しました。ギルドの許可なく渡したのは、やっぱり不味かったですかね?」
「いや、それは構わんよ。シュウ君が倒した物をどのようにしても、儂らギルドは関与せぬよ。坑道から続く巣の方も、改めて調査隊を送ることはするが」
「わかりました。で、一応コレがシザーアント・クイーンの魔石になります」
アイテムボックスから、クイーンのコアを取り出して見せる。
「ふむ。こちらの想定以上に魔物が多かったようじゃな。どうやら北にあったシザーアントの巣と、北東の森から多く出現したと報告を受けておる。そこら辺も改めて調査せんとな」
「確かに、町の防衛依頼を受ける前に僕らが通ってきた南東の森は、特に変わったことはありませんでしたね」
「冒険者たちの話によると、西のダンジョンの近辺にもかなりの数の魔物が湧いて出たそうじゃ」
「ダンジョンの周りに?」
「そうじゃ。あのダンジョンも儂の生まれる前からあったものじゃしな。分からんことも多いんじゃよ」
「なるほど」
ダンジョンのレベルと階層こそ一致するが、それが=年齢になるわけではない。
以前、鑑定で見た限りでは、97歳だったはず。
ギルド長に話を聞いても、ルイズリーの町自体がそれだけの歴史はないとか。
ダンジョンが出来てから栄えた町ってところか。
そのまま、今回の大量発生についての話をして、ギルドを出た。
「それにしても………この貰った物って」
「店の人たちなりのお礼…ってやつみたいですねー!」
ギルド長から聞いた話だと、ドワーフの村へと向かうまでに僕が手傷を負わせたオーガや、エリィとクスノが倒していった魔物には厄介なのが多く、空を飛んだり、皮膚などが一際硬くて倒しにくい魔物が多かったらしい。
特に僕がエアスライサーで片腕を使えなくしたオーガ2体は、万全の状態であったならば北門が破壊されて町に被害が出ていたかもしれないらしかった。
オーガは、その筋肉も然ることながら、強靭な筋肉を支えるだけの硬質な皮膚はとても硬く、傷を負わせることも難しい魔物らしい。
その場をエリィやクスノ、他の冒険者に押し付けることにはなったが、エアスライサーで片腕を使えなくしたことにより、その傷を狙うことで徐々にダメージを与えることができ、無事に倒すことができたんだとか。
他にも色々な魔物がいたらしいが、僕を追いかけてくる過程で、エリィの弓やクスノの短剣で、町に近いところから倒すことができたようだ。
ヘヴィフォレストは、サイのような見た目通りにその皮膚はとても硬い。
僕の場合は、通常より魔力を込めた魔法で仕留めたけど、エリィとクスノにはまだそこまでの攻撃力はない。普通に戦えば…だけど。
貫通していたり、急所に当たっていた矢からすると、風の魔力で貫通力を上げた矢を一点に集中させることで貫いたんだろう。
そういった活躍がギルドなり、北門にいた衛兵なりから話が広がった…ということなんだろう。
この色々な手土産は。
「おっぱい!!」
皆と話し込んでいると、道の真ん中で突然叫ぶ男がいた。
こんな真昼間から、いきなり何叫んでるですかねー。
そちらへと目を向けると、顔が整っていて柔らかそうな金髪で品のあるイケメン青年がいた。
「ふぅ。今日もおっぱいへの愛が溢れ出してしまいましたか…」
品がある雰囲気ではあるが、品のない発言をしている。残念なイケメンだな。
周りの女性たちから訝しむような視線を向けられている。
これが品もなく、イケメンでもなかったのなら物凄い侮蔑の目を向けられているに違いない。
やれやれと呆れるように首を振っている。いや、呆れられているのはあなたの方ですよ。
■名前:リーン・マクダウェル
種 族:人間
年 齢:19歳
性 別:♂
レベル:10
クラス:ミンストレル(吟遊詩人)
状 態:【呪い:定時に「おっぱい」と叫ぶ(初級)】
って、呪い持ちかよ!
しかも、また下らないタイプの!
初級の呪いってやっぱり嫌がらせレベルじゃないかっ!!
「おや?もしかして、あなたもおっぱいがお好きなんですか?」
鑑定で出た結果に呆然としている僕に、おっぱいの呪いの人が声をかけてきた。
やめて!巻き込まないでー!
心なし後ろから、エリィやクスノがムッとした気配がしたよ!
僕は、胸の大きさはコレじゃないとダメ、っていうわけではない。
小さくても大きくても良いと思う。それも個性の一つぐらいにしか思ってない。
年齢の比率で手を出す出さないを言っていた友人は、大きさによる好みとかあったかもしれないけど。
「えーっと…」
「まさか!あなたは男なのに、おっぱいが嫌いだとでも言うんですか!?」
「………」
やめて!なんか周りの視線を集めてるんですけどー!!
「さあ!どちらなんですか!?好きなんですか!?嫌いなんですか!?」
「………スキデス」
「でしょうね!」
殴りたい。その笑顔。
なんて面倒臭いんだ。
そして、後ろから発せられる殺気の量が上がった。
本当に…!なんて面倒臭いんだ……!
「分かりますよ。私も大好きですからね!日がな一日、おっぱいのことばかり考えていますからね!!」
分かってない。というか、分かってもらいたくない。
「あの、失礼ですけど…あなた、呪われていますよ」
「ほう。それはどのような?」
鑑定で見た呪いを説明する。
「ふぅ…。私はおっぱいが大好きです。ですが、大好きゆえに、その大好きな気持ちが溢れ出てしまっているのでしょう…!!」
「いや、だから呪い…」
「なるほど。この身に滾るおっぱいへの情熱が、呪いという鎖となって私に絡まっているのでしょう。………本望です!!」
あっそ。もう好きにして下さい…。
「おや?そこのレディー!素晴らしいおっぱいをお持ちだね!是非この後、私と…」
呪いのことも+に考えているのか。
いや、この人にとっては普段の思考と大差ないから呪いとは思っていないのか。
あ、顔にビンタ貰ってる。あれは痛い。
でも、めげてない。本望って言ってたもんな…。
本当に、なんて残念なイケメンだろうか。
「シュウ様。ちょっと話がある」
「シュウ様。すいませんが、私も話があります」
そして、この後ろから立ち上る殺気。絶対に振り返りたくないなー。
本当にどうしてくれようか。




